104話 あの一番光ってる星にしよう!
焚火を消した後の夜空は想像を軽く超えた荘厳さに満ちていた。
N2の言う『星が降って来てる』、とはよく言ったもので、見つめていると吸い込まれていくような感覚に陥る程の、星空一色の景色が上空に広がっている。
以前見た星空よりも、心の余裕からなのか実際にそうなのかは分からないが迫力が数段増している気がした。
さて、俺もテントに入ってこの景色を
「すごーい……。こんなにたくさんあるなんて、全然気が付かなかったよ」
「これもこの星ならではだと思うぜ。人が住んでる星だと明る過ぎて、ここまでの星の量はまず見えないだろうからな」
「人が住んでると、明るいの?」
「まぁ、大体な」
「ふぅんーーー」
N2のそっけない反応を皮切りに、暫く無言の時間が続く。
ラズは一人旅をしていた時にもこの景色を見ているはずだけど、空気を読んで眺めてくれてるのだろうか。
無造作にテントに収まりながらも、珍しく黙ったままだ。
風の音も、虫の音も聞こえない。
たまに聞こえるのはテントに使った葉っぱが擦れ合う音だけ。
そんな静寂を破ったのは、やっぱりN2だった。
「あの薄緑色の星はピノ座だね」
「星と星を繋げないと星座にはなりませんよ、N2」
「じゃああっちの明るいのと、こっちの青いのと……あとあの星でいいや、完成!」
「よくないです! それだと首がものすごく変な方向に曲がってしまいます!」
N2達は横になって夜空を眺めながら、空に絵を描き始めたみたいだ。
「あの赤いのはラズ座。うわっ、言いにくい」
「アタシのは作んなくていいよ」
「こっちのとこっちのを繋げて……ちょっと躍動感を出してみた」
「なんだよその無駄な気遣い」
「N2座は白い星がたくさんあるから迷ってしまうなぁ。……よし、あの一番光ってる星にしよう!」
N2が目を付けたのは、焚火を消す前から良く輝いていた星だ。
でもその位置は……。
「ここと、ここを繋げて……たくさんあるから欲張っちゃおうかな。こっちとあっちと、最後にここを繋げる、はい完成!」
「アタシの星座思いっきり踏んでるじゃねえか!」
ほらやっぱり。
ふふ、まあ、楽しそうで何よりだ。
「レイのは自分で作っていいよ」
「飽きてんじゃねえよ、俺のも作れよ!」
「だって関節が多いんだもん、大変だよ」
「星座ってそんな凝ってたっけ?」
そんなやり取りを幾度か繰り返し、目を閉じているのか開けているのか分からないような
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