104.5話 Who am I?
スヴァローグ視点の挿入話です。
別視点から見た伏線回収をしているので、お読み頂けると幸いです。
――――――――――――――――――――――――――――――
記録-273,884日目。
天候-晴れ、時々曇り。
気温-26.7度。
視界、感度共に良好。
現在のエネルギー保有率79%。
本日も異常なし。
引き続き、各アーティファクト、及びプレイヤーの観察を続ける。
……。
ふむ、やはりどうにも味気がない。
たまには近況の記録でもしておくか。
私が独自に開発したバイオ燃料の試験運用を始めてから163日。
このバイオ燃料の生成システムは”アーティファクトNo4:『Z-E0T2』”に組み込まれた技術を簡易的に模したものであるが、意外にも、生成した燃料のみでの活動が可能なことが判明し、60日前に思い切って長年のエネルギー供給機での生活に終止符を打ってみた。
それ以降体に起きた大まかな変化として2つ、回路の余計な乱れが改善されたことと、あれだけ強かったアーティファクト達に対する嫌悪感が薄らいだことが挙げられる。
これはあくまで推測の域を出ないが、おそらくエネルギー供給機から思考を乱すような何らかのプログラムが送り込まれていたとみて間違いないだろう。
つまり、我々オフィサーは本来の目的を忘れてしまっている可能性が非常に高い。
いや、もう我々ではないか……。
彼らの発言や行動から、不正プログラムを私だけに送り込んでいた、というわけではないだろう。
ペルーンの仕業か……あるいはベロボーグか……。
気づいてしまった事は仕方がない。
情報を共有する対象を間違えた場合、私が先に処理されてしまう故、敵が見えていない今の状態で彼らを説得することは不可能だった。
とは言え洗脳状態に戻る気もない。
悩み抜いた末の私の決断は”死んだふり”だった。
私が考えたシナリオはこうだ。
実験用に作成した無機物生命体『モノリス』に私の特徴を模倣させ、プレイヤーの下へ向かわせる。
『N-2049』、『P-N020』にそれぞれ深いダメージを負わせつつ、私に模した『モノリス』は自滅する。
2体はエナジーブーストに目覚め、オフィサー達にも私が倒されたと認識させる。
実際は私の思い描いたシナリオとは多少差異が生まれたが、結果的に問題はなかった。
『モノリス』の暴走により、2体にエナジーを目覚めさせるより早くダメージを負わせてしまったのは予想外だったが、プレイヤー……名は確か、アーティファクト達が『レイ』と呼んでいたか。
彼は私が用意した生物達を上手く利用し、2体を見事に復活させた。
膳立てしたとはいえ、人間にしてはなかなか健闘した方だと思う。
後は各々がエナジーの扱いを習得すれば、オフィサー達とも少しは渡り合えるだろう。
私にとっての問題は、タイミングを計ったかのように起動した”アーティファクトNo3:『R-0ZB』”だ。
何故ひとりでに起動したかも気になるところだが、あれのせいで私はかなり遠目でのプレイヤーの観察を余儀なくされた。
全くもって、鬱陶(うっとう)しい。
現在プレイヤー達一行は拠点を抜けて星を駆け巡っているが、どこに向かっているかは大体想像が付く。
”No4”も起動させようという魂胆だろうが、あれまで起動した場合どうなるか私にも予測不可能だ。
起動後に慌てふためくオフィサー達も見てみたい気もするが……。
恐らく彼らは今、私のいなくなった研究所を探っている頃かな。
残してきてしまった生物達には悪いが、上手く彼らから逃げていてほしいと願う。
と、まぁそんなところか。
こういった記録もたまには悪くないな。
状況に変化があり次第、また記録してみようと思う。
以上。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます