57話 精練

 二人がいなくなってから四日目の朝が来た。

 夜中の内に以前聞いたカチカチという音がN2達のいる部屋から聞こえていた。

 朝になって確認してみると、ピノの鉢植えに肥料になる木の実や木の葉が増えていた。

 多分サイバイアリモドキの仕業で間違いないだろう。


 ピノ自体の変化としては焦げ付いた体の表面が所々ひび割れていて、中から鮮やかな薄緑の金属が覗いている。

 溶け落ちた両手足も少し伸びているような気がするし、やはり彼らはピノの目覚めの手助けをしてくれているように思える。

 必要か分からないが、雨水を皿に少し注ぎ鉢植えの近くに置いておいた。

 これで必要な時に彼らが使ってくれるだろう。


 金属を与えていたコブコガネにも変化があった。

 水を垂らした金属を与えていたコブコガネは、水なしの金属を与えていた方よりもこぶの成長が早い。

 こぶが取れてしまった個体は、こぶの大きさは元の大きさに戻っている程だ。

 この発見は大きい。

 これで金属を集める速度が格段に速くなる。


 次に回収したコブコガネのこぶの加工を行う。

 こぶに付いた錆程度なら適当なもので磨けば取れるだろうと思っていたが、錆び方が特殊なものらしく磨いたくらいでは取ることが出来なかった。

 それで仕方なくこのこぶを熱処理してドロドロに溶かし、不純物を取り除こうと思い立った。


 洗練された金属にどうにかして『マナ』を混ぜることが出来れば、あいつらの体に使われている金属に近いものが作れるんじゃないだろうか。

 次回の落雷のタイミングに合わせて作った金属をN2に与えてみよう。

 

 まずはこのこぶを溶かすのに必要な温度を把握することから始めようと思う。

 生物由来の金属故に、こぶの融点はそこまで高くないはず。

 もし仮にこの星の金属で作ったケースよりも融点が高い場合、先に熱したケースやかまどの金属の方が溶け出してしまう。

 そうならないようにうまく温度調整をしないと。


 始めは様子見程度にN2が作りかけていたビーカーのようなガラスの容器にこぶを入れ、かまどの火にかけて熱してみる。

 変化はなし、ただ燃えている炭の温度では融点には達しないらしい。

 となると、更に火力を上げるかまどを用意しなくてはならない。


 かまどの組み方、空気の送り入れ、炭の配置などで熱効率は格段に変わってくる。

 シェルター内の地面にレ型に穴を掘り、奥から金属の板を敷き詰めていく。

 本来なら耐熱性に優れる土壁が好ましいが、この星に来てから粘土質の土はまだ発見できていない。

 まぁあるのかすらも分からないが。

 手前の地面は滑らかな斜面にして、空気や炭の入り口を残し金属板で覆う。

 かまどの頭頂部はこぶを入れるケースと同じ大きさの穴を残して全て金属で覆う。

 後はケースの蓋になる板と、空気を送り込むパイプのような金属を外から拾ってくれば完成だ。


 早速かまどに口で息を吹き込むと、炭が勢いよく燃え出した。

 あまり火力が強すぎると、かまどに使った金属板が溶けかねない。


 頭頂部の穴にこぶを入れたケースを置き、空気と炭をかまどに加えながら様子を見ていく。

 先に反応があったのはやはりこぶの金属の方だった。

 色が赤くなりだし、形が崩れていく。

 溶け出してから3分程でこぶは完全な液状になった。


 思っていたよりも融点は高くないらしい。

 けれど口で空気を吹き込み続けるには命が足りない。

 大量生産する場合は何か手を考えないとな。


 熱して溶けた金属を入れておくものを忘れていた。

 保存しておく入れ物も用意しておこう。

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