55話 来雷

 突風が吹いてから雲行きが怪しい。

 どこからか深い色をした雲がいくつかやってきて上空を漂っている。

 細々した雲たちは次第に集まり始め、辺りが薄暗くなる。


 雨が降る直前はこんな天候だっただろうか……などと考えていると、遠くの空の雲の中で何かが一瞬光った。


 やばい……これ、きっと雷だ。


 足早にシェルターに向かう。

 空が光る間隔はどんどん狭まっていき、ついには俺の真上でも雲が光りだした。

 そして遅れて聞こえてくる雷の音。

 地上に落ちてくる準備は万全のようだ。


 音を合図にあちこちで雲が光り始め、初めに光った空から一閃、雷が落ちた。

 音のズレからして距離は遠い。

 幸いにも雨は降っていないので感電の心配はないが、周囲には背丈が同じくらいの植物だらけ。

 いつ自分に落ちてきてもおかしくはない。


 以降、立て続けに降ってくる雷。

 光と音のズレはほとんどないことからして、落ちている箇所は目と鼻の先。

 落ちた箇所からは炎が燃え上がる。


 もう景色を眺めている余裕はない。

 回収した物を抱えながら一心不乱に走ると、ようやくシェルターが見えてきた。

 すぐさま駆け込もうと荷物を抱え直した直後、シェルターに雷が落ちた。


 音の衝撃で体が震える。

 心臓を直接殴られた気分だ。

 流石に金属性なだけあってシェルターは無事なようだが、中身も無事……だよな。


 急いで宇宙船を確認したが、予備電源も生きているし部屋の灯りも点くし特に問題はないようだった。


 集めてきた物を置こうとN2達のいる部屋に向かうと、異変に気付いた。

 ブリキの箱の中のN2のパーツがバチバチと帯電している。

 そしてゆっくりとだが、真空管パーツの中身が動き出している。


 雷によって動き出したのか?


 分からないけど、とにかくN2の心臓は動き出した。

 あとはなんだ、なにがあればもう一度N2が話せるレベルまで直るんだ?


 外にあった金属片を当てがう……ダメ。

 取ってきたばかりのコブコガネのコブを与える……ダメだ、くっ付く気配がない。


 そうこうしているうちに心臓はやがて止まり、雷の音は止んで薄暗い雲たちはどこかへ行ってしまった……。


 ちくしょう……。

 せっかく何かを掴めそうだったのに……。


 いや、これは大きな進歩だと考えよう。

 N2の心臓を動かすには雷のような強力な電力が必要なんだ。

 シェルターに落ちた雷は一発だったから、もっと多くの雷が落ちればあるいは……。

 あとで避雷針のようなものでも突き刺しておくか。



 二人がいなくなって3日目の成果――コブコガネの採取、それとN2の心臓は電気で動くことが分かった。

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