44話 スクラブ・スカラブ

「さて、検証を始めよう!」


 輝く虫たちの円舞をひとしきり楽しんで宇宙船に戻った後、N2が突然そう言った。

 この星に来てようやく穏やかな夜を過ごせると思ったが、どうやらそれは叶わなそうだ。


 小粋な泥棒よろしく探索時に風呂敷のように背負っていたハンカチの中身をN2が広げた。

 船外で何かを見付けては風呂敷に放り込んでいたので、へんてこ博覧会でも開催するのかと思っていたが見当違いだったらしい。

 中身は木の実や金属片といった見覚えのあるものや、いつ拾ったのか分からないものもある。


「この瓶みたいのなんてあったか? いつ拾ったんだこんなの」


「瓶は拾っていないよ。レーダーを直す時に不要だったパーツからガラスを採取して作ったのさ」


 職人かよ。

 爪の大きさくらいしかないぞ。

 律義にコルクのようなもので蓋まで作ってやがる。


「肝心なのはその中身さ。ウツボカズラの消化液、それがその中には入っている」


 覗き込みすぎて中に落ちてたが、これを採取してたのか。


「こっちの金属片は外にたくさん落ちてるやつだよな?」


「それはヨロイグサが纏っていた金属片の一部だよ。同じものだと思うけど念のためね」


 興味深いのはこっちの金属片さ、と言いN2は球状の金属片を手に取った。


「これはコブコガネのこぶ。解析したら内蔵との繋がりは無かったから切除してみた」


 発想がエグイ!

 芋の時も平気で引きちぎってきたからなこいつ。

 切り取った後もその他の個体と変わらずに生命活動を続けられたようなので、N2の見解ではコブコガネのこぶは無くても問題がないということだった。

 ラクダはこぶの中に脂肪を貯めてるけど、こいつらはまた違うのかな。



 N2はヨロイグサの金属片を左手に、コブコガネのこぶを右手に構える。


「今からこの二つに同じ力を加えてみるね」


 そう言って両手にぐっと力を込めたと思うと、左手のヨロイグサの金属片の方だけがボロボロと崩れた。


「見てわかる通り、ヨロイグサの金属片とコブコガネのこぶではこぶの方が頑丈なんだ。以前、外に落ちている金属は錆びているから宇宙船の修理には使えないと言ったけど正確には違ったみたい。外の金属片と宇宙船の金属を比較した時に分かったんだけど、外の金属片はどういうわけだか通常の金属よりも金属構造が崩れているんだよ」


 それ故に脆く耐久性に欠ける、とN2は言った。

 N2の体やICチップの強力な磁力補正がないと、力を加えた際にあっという間に崩れるらしい。


「けれどコブコガネに一度取り込まれた金属は、その金属構造が整えられて丈夫な金属に変化しているんだよ。それこそ宇宙船の部品の修理に使えるくらいにね」


「じゃあ、そのこぶをたくさん集めれば……!」


「そう! 黒い生命体から採取しなくても宇宙船の修理が出来る!」


 おぉ!!!

 ついに希望の光が!!!

 コブコガネ様様だぜ!

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