39話 レジスト・ロンリネス
船に戻り、机の上に皆で集めたパーツを置いた。
使えそうな部品、なんだかよく分からない部品と様々だが、N2の見解によるとレーダー規模の装置なら二つほど直せるらしい。
一番始めにレーダーを直したのは、黒い生命体のような敵の接近にいち早く気付くためだ。
本来のレーダーの目的は、宇宙空間の飛行中に他船や隕石との衝突を防ぐためだが、N2の改良によってピノやN2サイズ(手のひら程)までなら感知出来るようになった。
実際のところこの星から脱出したいのは山々なのだが、宇宙船のどの機能が壊れていて、どこを直せば安全に飛べるようになるのかを理解していない。
というのも、離陸時に目的地を決定して、後は音声ナビに従ってボタンをポチポチしていただけ、という背景があるからだ。
仮にエンジンを直して離陸できたとしても、N2が直したレーダーがなければ隕石に衝突して宇宙の塵と化していただろう。
つまり下手に近道をしようとすると宇宙空間での危険が伴うことになる。
レーダーに関しては既にアップグレードされてしまっているが、スペースナビを使って帰る以上、宇宙船の装置を全てこの星に来る前の状態にして脱出する必要がある。
N2によると現在修理が必要な装置はあと6つ。
それぞれが何の機能を担っているのかは分からないが、それらは回路が焼ききれている等の内部的な損傷が原因で正常に稼働していないらしい。
回収した部品だけだと到底足りないので、どうにかして部品を集めていく必要がある。
ちなみに何故レーダーか分かったのかというと、船外から伸びているアンテナと装置が太いコードで繋がっていたからだ。
どうやって直したのかN2が教えてくれたけど、感覚で直しているらしく詳細は不明だった。
「えー、またお留守番?」
船内で装置の修理を命じられたN2が駄々をこねている。
装置を直すことが出来るのはN2しかいない。
故に脱出を早めるためには、N2がいかに早く修理を終えられるかが重要になってくる。
虫の出現によって好奇心をくすぐられまくったN2は、今にも船外へ飛び出していきそうだ。
「レイたちばっかりずるい。私もお散歩したい」
「N2が虫を見付けたら、きっとまた追いかけてきますよ! レイ様、慎重なご判断を!」
「もうしないよ! 8本足はもうしない!」
「ほらレイ様! 足がもっとたくさんある生き物を見付けたら追いかけると公言しましたよ!」
探索に出かけたいN2と、虫をもって追いかけられることを恐れるピノ。
よくわからん言い争いは止してくれ。
喧嘩するほど仲がいいというが、ロボット同士の場合はどうなんだろう。
それにしてもN2もそうだが、ピノは人間味が増したというか、ロボットぽくない部分が目立つようになってきたな。
何故そんな機能を付与したのかは分からないが、少なくとも今俺は困っているぞ、製作者よ。
実際問題、俺とピノだけで探索をした場合危険なのは目に見えている。
まぁN2がいても危険なものは危険なのだが、またいつ黒い生命体が襲ってくるかもわからないし、全員で一緒にいる方が安全だと思う。
けど、装置の修理も必要。
N2が2人いたらなぁと一瞬思ったが、一人でもこの煩わしさなんだ、二人に増えたらツッコミが追いつかない、絶対。
「ではこうしよう!」
N2が立ち上がり、集めた部品を選別し始めた。
「時間がかかるのは、修理する時の溶接の工程なんだ。私が修理箇所を特定した後、その箇所を溶接するロボットを新しく作ろう!」
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