最後の三分間 虹

エリー.ファー

最後の三分間 虹

 最後の三分間というと、僕にとってはすべてが新鮮だった。

 同じような感覚に陥る人もいるだろう。

 何せ、どんなに最後というものを味わってきたとして、その三分間、つまりは、三分前の状態で、今、三分前だ、と認識することは間違いなく少ないからだ。終わった後に、確か、あの瞬間が三分前くらいだったのではないか、と思うにとどまると思う。

 大切なのは、だ。

 その三分後には終わりとなる、ということを認識したうえで残りの三分かをどう使うか、ということに他ならない。

 何せ、そこから先の三分間の中で組み立てられる予定というものは確かに大切であるし、それこそ、結果を大きく変える場合もあるのだ。

 最後が目に見えているからこそ、そこで、それが本当の意味での終わりにするのか。

 それとも。

 何かの始まりに変えるのか。

 それはその今が三分と気づいた後から始まる。

 一瞬一瞬の積み重ねの中で形作られる、一つの人生の破片そのものなのだ。

 僕の手元に猫がいる。

 可愛い猫だ。

 最後の三分間をこの猫と共に過ごすということに、いささか疑問もなければ、何の反論も出てこない。

 僕は猫を見つめる。


 てなわけで、ございましてぇ、ですねぇ。

 えぇ。

 虹ってのはみなさんご存知でございますか。

 あれはねぇ、橋みたいな形になってるでございましょう。

 実はね。そうじゃないんですよ、わっかみたいな虹もあるそうなんです。

 えぇ。

 でね。

 まぁ、そんな虹みたいに綺麗な話もあるんですけれども。これがまたここに人間やらなんやら俗な生き物がおりますと、その虹の下の世界はそらぁ、汚いもんで。

 猫を大事にしなかった若者が、結局その猫たちに囚われちまって、デスゲームなんつうものに無理矢理参加させられる。そんで水責めにあってると、その同じ部屋にそんな猫たちに反旗を翻してた雄猫も入れられてたもんだから、二人とも死んじまった。

 けれど、その悔しさから猫は化け猫に、人間は幽霊になって、結果的には、まぁ、町の平和を守るために悪いあやかしを倒そうと奮闘しておるわけですなぁ。

 そこでそんな二人に助けてもらった少年が大人になり、作った絵本には男と猫が出てくる。どうやら、内容は働くこと、働かないこと、ということらしい。

 これを読んだとあるラジオパーソナリティが仕事をここで一旦辞めてみようと思い立って、病気がどうだとてきとうなことを抜かして、やめちまいやがった。

 そうしたら、今度はそのラジオパーソナリティの試験に次から次へと人が殺到。席が一個空いたもんだからだだだっと、若者が群がって来る。こうしちゃおれんと、sの試験する側も少しずつ難しくしていったんだけれど、それでも受験者の数は減らない。結果としてどうなったか、これは簡単。金は集まる、支持はある、やりたい放題で滅茶苦茶な試験を平気な面でやるようになっちまったから大問題。警察は買収、司法は動けない、政治家すら腰を低くして手もみをする。

 このままじゃいけねぇとその試験を運営するやつら、並びにその協力者どもを相手取ってテロを起こすと、やっぱり過激なことはしちゃいけねぇな。適当な民間人に嘘を吹き込んで突撃させて陽動作戦をしたわけだ。結果として、そのおかげで制圧に成功。自由になった、平和になったと、右へ左へ上へ下への大騒ぎ。

 こんなことのせいで、電車が止まっちまって。それでとある駅で動けなくなった小学生くらいの子供が、駅のホームでおんなじくらいの女の子と恋仲になって将来結婚する。

 そんでもって、その間に生まれた子供が。

 用水路に落ちそうになったところを猫に救ってもらうんだけども。

 これを物心ついた頃におっかさんから教えてもらう。

 でも、まぁ、その猫を大事にしないんだ、これがまた。不義理な野郎でね。

 と、まぁ、こんなもんで。

 よろしいんじゃございませんでしょうかねぇ。

 えぇ。

 さて、と。えぇ。

 虹とかけまして、猫と説きます。

 その心は。

 どちらも、二文字です。

 えぇ、上手くないって。

 そりゃ、そうでしょう。

 おいら、落語家じゃなくて、作家だよ。

 勘違いしちゃあいけない。

 それに、作家っていう生き物はこういうのが下手糞だって誰にも言わないよう、秘密にしておいちゃあくれないかい。

 何せ、作家だけに。

 隠し事(書く仕事)は大事にしておきたいもんで。

 ててんてんてんてん。

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