最後の三分間 青
エリー.ファー
最後の三分間 青
最後の三分間というと、僕にとってはすべてが新鮮だった。
同じような感覚に陥る人もいるだろう。
何せ、どんなに最後というものを味わってきたとして、その三分間、つまりは、三分前の状態で、今、三分前だ、と認識することは間違いなく少ないからだ。終わった後に、確か、あの瞬間が三分前くらいだったのではないか、と思うにとどまると思う。
大切なのは、だ。
その三分後には終わりとなる、ということを認識したうえで残りの三分かをどう使うか、ということに他ならない。
何せ、そこから先の三分間の中で組み立てられる予定というものは確かに大切であるし、それこそ、結果を大きく変える場合もあるのだ。
最後が目に見えているからこそ、そこで、それが本当の意味での終わりにするのか。
それとも。
何かの始まりに変えるのか。
それはその今が三分と気づいた後から始まる。
一瞬一瞬の積み重ねの中で形作られる、一つの人生の破片そのものなのだ。
僕の手元に猫がいる。
可愛い猫だ。
最後の三分間をこの猫と共に過ごすということに、いささか疑問もなければ、何の反論も出てこない。
僕は猫を見つめる。
というお便りだったんだけどね。
うんうん、はい、なんていうか、すっごく詩的で、このあとの話がどうなるのか気になる感じなんだけども。どうやら、この先はなし、ということで、みっちゃん、すっごく残念です。明日、またこのお便りの続きを送ってくれるのかな、待ってまーす。
という分けでですね。さて、なんともこの楽しいみんなと作ったラジオ何と後三分でお別れということでね。
今日は、あのお天気の方がね、地球が滅亡してしまったということで、火星と金星のみのお伝えになったことでね、また尺が余っちゃったんだけども。
なんてね、はーい、冗談でーす。実はねぇ、わざと余らせてまーす。はいはい、ごめんなさいね、そうだよね、地球人のスポンサーさんもいらっしゃるし、このノレコフ音声を聞いてるリスナーの皆のなかにもねぇ、地球人の人はたくさんいるもんねぇ、本当にあの、外からマネージャーのかなり、怒っている声が飛んでくるんですけど。ねぇ、もう、方々からツッコミがきそうだね、みっちゃんコラッ、なんてね。えぇ。まぁね、そういうわけですよ。はい。
で、ね。
実はみっちゃんさん。
あの、このラジオを最後に入院することになりました。
本当に、あのね。こういうところでお伝えするということで、あの、悪いなぁ、とは思っていたんですが、申し訳ないね。本当に、あの、ごめんなさいね。このラジオ番組ノレコフ音声の最初でね、言っちゃうとどうしてもさ、番組が湿っぽくなっちゃうじゃない。それは、その、なんていうのかな。みっちゃんにとってもさ、その、あんまり望むところじゃないっていうかね。それは違うっていうか。うん。
で、病名については伏せておきたいと思います。うん、その皆に心配とか賭けたくないしねぇ、是非、また元気に戻って来るみっちゃんに、乞うご期待という感じでね、じゃあ、その終わりましょうか。
はい、あのブースの外でプロデューサーが泣いてるねぇ。あぁ、ヤバいなみっちゃんも泣きそうなんだけど、あ。まずいまずい、これはあれだ。きついなぁ。
本当にヤバいなぁ。
うん。
終わろう。
ね。
終わりましょう。
じゃあ、ラジオライフ、これからも是非、楽しんでください。
そして、この割と古株ラジオ番組であるノレコフ音声をこれかも愛してください。
じゃあ。
またね、バイバーイ。
二千百八十三年と十八ヵ月百三十二日間、今までありがとうございました。
最後の三分間 青 エリー.ファー @eri-far-
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます