第23章

 はるか空の彼方、ガブリエルの銀色に輝く両目に地上から無数の・・・


大小様々な光が集まり、吸い込まれていく。


同時にガブリエルの全身が眩いほどの光輪に包まれていく。




「塵より生まれし下等な人間どもの魂よ。我の下に集まり、


 神の御許へゆけることを光栄に思え」




彼の表情が恍惚に歪む。




「それは神が望んだことか?」




 ガブリエルの背後から、彼を問う声が聞こえる。


ガブリエルは極くゆっくりとその声の主を振り返る。


「覚醒したか、アザゼル」




そこには6枚の漆黒の翼を広げたアザゼルの姿があった。




「神が望んだことかだと?この私が望むことは神のご意思だ」




「傲慢な天使様だ。確かに、神は我々の上に人間を置いた。


 その意思には私も同意できない・・・だが、その苦汁をあえて飲んだのだ。


 お前はなぜそれを認めない?」




「笑わせるな。我々とお前たちと同じにするとはな。


 お前たちは人間から悪魔と呼ばれ、蔑まれ、


 そして忌み嫌われているのを忘れたか?


 なぜ、そんな人間たちの味方をする?塵から生まれた人間が、


 炎より生まれた我々の力になるのは当然。


 人間がお前たちのように、暗黒に染まる前に・・・輝きがあるうちに


 我が手に握ることに何のおかしな道理がある?」




アザゼルの口元に微笑が浮かぶ。




「我々は人間の味方になるなど笑止だ。暗黒になるか、光輝くか・・・・・・


 それは人間一人一人が決めることだ。望まれない限り、


 干渉はしてはいけない。我々に彼らの行く末を決める権利は無い」




ガブリエルは高らかにあざ笑った。




「人間は塵だ。自らの光を曇らせる権利など無い」




「ガブリエル、炎が燃え尽きた後には塵が生まれるのだぞ」




アザゼルの紅蓮の左目が、ガブリエルを見据える。




「もういい。かかって来るがいい。この私の強大な光の前に、


 悪魔の闇など無力だということを思い知るがいい!」




ガブリエルの全身からほとばしる光がさらに輝き、天を貫いた。

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