第5話
「うーん、ここで殺されたんだっけ」
カフェを出て和人が刺された場所へと向かった。
そこは人通りの少ない通りで見つけるのが遅くなってもおかしくはなかった。
和人の住んでるアパートに向かうにはこの道を通る必要があったし、いつもこの道を通っていた。
「昨日彼はバイトがあったんだよねー。
バイト帰りに殺されたって考えが妥当かな」
「……そうだね」
本当にこの人はなんでこんなにも知っているのか。
どうやって調べたのか知らないけど、やっぱり気味が悪い。
「ねぇ、誰か協力してくれそうな人とかいない?
例えば彼の親友的存在の人とか」
「親友?」
「彼女にも話せないことはあるだろうし。
友達が知ってることもあるかもしれない。
ほら、同じ大学にいる御堂遥人君とかさ」
「……そこもリサーチ済みってこと?」
「まあね」
御堂遥人は和人の幼馴染であり親友とも言える人だ。
御堂大学病院の跡取りとして期待されているエリート。
そのことで偉そうにすることなく、とても優しく気さくな人であることは私もよく知っている。
「どうせ神崎ちゃんも御堂君の連絡先もってるでしょ?」
「もってるけど……」
「今から呼び出そうよ」
「は!?
御堂君は忙しい人ってことわかってるでしょ!?」
跡取りである御堂君が暇なわけがない。
医療の知識はもちろん、経営する側にもなるのだから時間があるわけがなかった。
「いいから早く連絡してよー」
「だから……」
「いいから連絡しろって言ってんのがわからないかな?」
声が低くなり、冷たい目で私を見下ろす桐谷漸に恐怖を感じてしまった。
私の肩が大きく跳ね上がったのが自分でもわかった。
「あ……。
ごめんね、怖がらせる気はなかったんだ」
またいつもの声のトーンで話し始めた。
それでもさっきの低い声と冷たい目が私の脳裏に焼き付いていた。
咄嗟に目を逸らしてしまったことに後悔しながらも改めて目を合わせる気にもならなかった。
「……また後で御堂君には連絡しとくから。
それでいい?」
「……いや、今じゃなきゃダメだ。
彼、明日はパーティー的なものに出席するから」
「……わかった、今するよ」
どうしてそんなことまで知っているのか聞きたくもなったが、言葉を飲み込む。
今日じゃなければならない理由があるのかわからないけど、桐谷漸の言う通り電話をかけた。
そして、4回ぐらいコールした後
『もしもし』
という声が聞こえた。
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