第28話 ジジイのなげき、島津・毛利氏のなげき

 やあ、おいらです。


 ポストから「ポトン」という音が聞こえた。おいらはいそいそと取りに行く。佐々木裕美さんからのラブレターかな? そんなことは絶対にない。残念でした。手紙は緑区役所から。収入申告書を書いて送れっていう、三ヶ月に一度のお決まりだ。おいらには収入ないから、住所氏名を書いて、ハンコをついて、収入欄に0って記入するだけ。ご親切に返信封筒に貼る、送り先のテンプレまである。だけど、封筒も切手も入っていない。あのさ、援助されている身だからあんまり言いたくはないけど、なぜおいらは保護されているのか? 働けなくてお金がないからだ。それなのにちょっと不親切じゃありませんか? といつも思う。 確か以前、北海道でさ、生活苦の親娘がいて、役所から「生活保護を受けませんか?」という親切な手紙がきたけれど、やっぱり返信封筒と切手がなくて、親娘は結局、餓死した状態で見つかったということがありました。行政サービス、いいですか、サービスなんだからホスピタリティの気持ちを持って欲しいのです。我々に寄り添ってください。怒られるかもしれないけど、言っちゃおう。我々は社会的弱者なの。


 では、おいらの好きな、日本史妄想に付き合ってください。苦手な方はさようなら。

 戦国後期、九州はほぼ、薩摩国(鹿児島県)から北上してきた島津氏によって、統一寸前までいくのです。有名な島津四兄弟。義久、義弘、歳久、家久は全員が優秀で特に長兄義久の智謀が抜きんでていて総大将としてふさわしかったようです。で、ここで疑問。なんで次男の義弘だけ、島津氏のほとんどが名前につける「久」がついてないんでしょうか? これはおいらの私見であって、歴史学会からは無視されると思うのですが義久と義弘って実は双子だったんじゃないのかな? 昔って双子は忌み嫌われてどっちか一人は殺されたり養子に出されたでしょ? 義弘ってある時期まで、いないことになってたとかね? まあいいや。

 島津兄弟の野望は豊臣秀吉の九州討伐で潰えます。歳久、家久は死に、義久は剃髪して隠居。義弘が薩摩、大隅の太守になることで手打ち。表舞台から消えた義久は陰で義弘を支えるというか、たぶん操っていたんじゃないかな? フィクサーだ。

 さて、九州征伐には毛利氏も参加しています。ところで、毛利氏は秀吉から格別な高待遇を受けます。一般的には本能寺の変の時に逃げる秀吉軍を追わなかったからだと言われていますが、思うに密約が交わされたのに決まってますよね。褒美もないのに恨み骨髄に徹する信長の家来なんて、捕まえてぶち殺すでしょう。それをしなかったのはおそらく、小早川隆景の謀略でしょうね。毛利元就の正妻の息子、三人。隆元、元春、隆景の結束はいわゆる「三本の矢」の教えによって強固になりました。元就はこの三人以外の側室の子は犬扱いで全然大切にしなかった。正妻の目が怖かったからだとも言われています。のちに、元春は吉川家に、隆景は小早川家に養子で入りますが、これが元就の謀略なのは言うまでもありません。陰で相当な血が流れている。養子になっても、大事なのは毛利本家というのが「三本の矢」の教えのポイントです。ところが肝心の長男隆元が若くして病死(本当は敵による毒殺)してしまいます。さすがの元就も一番の愛息を失い一時は大ショックで立ち直れないかと思われたそうです。立ち直っちゃったけど。で、隆元の息子、輝元が当主になるのですが、これがお人好しの無能。隆景あたりはかなりスパルタ教育をしたそうです。でもねえ……

 秀吉の天下になると、いわゆる五大老に輝元と、隆景。毛利系が二人も任じられます。元春は秀吉とソリが合わず、ストレスが原因で死んでしまっています。とにかく、秀吉は毛利への恩義を忘れていなかったのです。でも、最も優秀で頼りになる隆景が人気途中で死んでしまいます。後任は宇喜多秀家。微妙なんですけど毛利派ではないと思います。これが毛利の悲劇の始まりです。

 秀吉の死後、関ヶ原の戦いが、起きるのですが、輝元は石田三成にたぶらかされて西軍の総大将に祭り上げられます。完全なお飾りです。結局、輝元は大坂城から一歩も動かないまま、戦いが終わっててしまいます。すごすごと大阪城を退去。実は戦さの前後、毛利一族内は親徳川と反徳川がヒッチャカメッチャカだったのです。「宰相殿の空弁当」なんて逸話が生まれたのもそのせいです。

 家康は戦ってもいない輝元の領土を没収しようとします。ただ親徳川の吉川広家が「私の領土をなくしても輝元に領土を」と家康に言ったため、周防、長門のみ安堵されます。


 辛酸を舐めた両家の志士が幕末に徳川家を打倒するんですから、因果ってありますよね。

 では。

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