第2話 朝の登校風景
俺と宗一が並んで緩やかな上り坂を登っていると後ろから声が聞こえてくる。
「ゆ~~~~う~~~~!」
そうして背中に何かがぶつかった。
正確にはぶつけられた、か。
「うぉ!?」
後ろを振り返ると女子生徒が手提げ鞄を両手で振り抜いた形で持っている。
「へっへーん。今日も大成功~!」
と言いつつニシシと笑うコイツは
赤毛をポニーテールにしているコイツも幼馴染だ。
昔は引っ込み思案で隅の方影の方で縮こまっている様なやつだったのに今ではすっかり垢抜けて元気溌剌快活リア充少女になった。俺はこんな風に育てた覚えは無いんだが。
しかし、こんなのでも俺より魔導師としての位階は上のC+ランク。さっきも言った様に平均はD+~Cランクだから平均よりは上の成績を残している。
まぁ俺より下のランクなんて無いんだが。
「あのなぁ......毎日毎日飽きねえのか?」
「飽きないよーだ!毎日その反応を見るのが楽しみなんだから!」
「あぁそうかよ。」
「そうだよ!」
「あはは、千夏は今日も元気だね。」
「うっひよー、宗一君は今日もイケメンだねぇ。どっかの誰かさんとは違って!」
「うっせえな、んな事端っからわかってるだろ?」
「わかってて言ってるのです。」
「てめぇ...」
湧き上がる殺意、今すぐこの目の前の女を殺して東京湾に沈めたい...ッ
「まぁまぁ2人とも、仲良く仲良く、ね?」
「宗一君がそう言うなら私は大人になります~。どっかのガキとは違ってね!」
「はぁ? どっちがガキかって話だよな。そんな態度じゃオ、ト、ナにはなれないぜ?」
「私別にアンタにガキって言ってないんだけど~? もしかして自分の事だと思っちゃった? 自覚あるんじゃん?」
「なにをぉ!?」
「.....2人とも、周りの目ってのも考えてね?」
ふと周りを見渡すと通学していく生徒たちがこちらをチラチラ見ている。
そりゃ当然だ。こんなのが道端で繰り広げられてたら見ないわけがないわな。
「......やめようか。」
「......そうだな。」
がっちり握手を交わして仲直りだ。これいつものテンプレ
「そういえば今日うちの学校に編入生が来るんでしょう?しかも飛びっきり凄い人!」
「そうらしいね。 シャルロットさん......だったっけ? Sランクなんてホント凄いよ。」
「だよねだよね~! 学生でSランクの人って世界でも3人しか居ないんでしょう?」
「3人だけなのか。って事は世界の学生の中で3番以内の実力って事か。どんな化け物なんだか。」
「なんでも基本属性の内火 水 風 雷 の4つを扱えるらしいね。 」
「4属使い......ねぇ」
属性... 魔術の行使において、全ての魔術には属性と呼ばれる概念が存在している。
炎を扱う火、水を扱う水、風や空気を扱う風、雷を司る雷、土を扱う土の全5つの基本属性と呼ばれるものが存在する。
ちなみにそのどれにも該当しない無属性というのも存在する。が、この魔術はほとんどの人が特性を持っているため、基本にすら換算されていない。
「4つ!? 4/5を扱えるって凄いねぇ。まぁでも属性と言えば悠の方が使える属性多いけどね!」
「あはは、そうだね。」
「まぁEランクだけどな。」
そう。かくいう俺は全属性を使うことが出来る。いや、正確に言えば出来ていたのだ。
現在は制限を食らっているが。
「いずれ悠も認められる日がくるさ。」
「そんな日来るのかねぇ。」
「そう言えば話を戻すけど彼女、それだけじゃないらしいんだ。」
「え?どういう事?」
「彼女、光属性も使うらしい。それも高度に。」
「えぇ!?光属性魔術!?レア属性じゃない!しかも高度ってどのくらい?」
「聞くところによると絶級までらしいよ。」
「ぜ、絶級!? それはSランクにもなるよねぇ。」
「そうだな。光も使うのか...。」
先程の無属性を除く火 水 風 雷 土 の5つは基本属性と呼ばれるものだ。
それ以外にもレア属性と呼ばれる属性がいくつか存在している。 代表例は今例に出た光、それと対をなす闇、他にも木や氷なんてのもレア属性だ。
更に魔術自体にもランクが設定されている。
小さい順に、初級 中級 上級 超級 絶級 天級 神級の7つに分類される。
絶級は確かにその上の天級や神級と比べると威力などが低いが、その天級、神級は儀式魔術といって大人数で無ければ発動することが出来ない物ばかり。
したがって絶級は個人で運用できる魔術の中で最高ランクの魔術なのだ。
その絶級ですら普通は大人数で儀式魔術として運用しなければ発動出来ないのに彼女は一人でそれを行使すると言う。どれだけ規格外かわかるってものだろう。
「レア属性を絶級......マジもんの化物だな。」
「化物も化物だよ。流石Sランクだよね。」
「寧ろそのくらいじゃないとSランクなんて付かないよねぇ。」
「そうだよなぁ......」
そうこう話しているうちに校門に辿り着いた。
国立東京魔術学院大学附属高等学校は小高い丘の上にあるマンモス校だ。
高等部の1学年はA~Iの9クラス編成。そして一クラス50人前後だから1学年450人ちょい。3学年合わせて1350人以上の生徒がいる事になる。
加えて中等部、小学部も併設されているため敷地内には3000人を遥かに超える生徒がいる事になる。
流石に大学に当たる国立東京魔術学院大学は同じ敷地内には無く、また別の所にある。
そして名前から想像がつくようにエスカレーター式で大体の人が上がってくるため、今日の入学式も1年は見知った顔と今まで通りの変わらない会話をする事になるのだろう。
だから今回のシャルルロト?だったか? の様に途中で編入して来たり、外部からの入学というのは珍しいのだ。
まぁSランクだか絶級魔導師だかなんだか知らないが俺の生活には全くと言っていいほど関係ない。
そんな他愛のない話をしながら俺達は学校へ向かった。
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