魔術師は高所恐怖症
あんきも
第1話 序曲
「...めろ......」
「...めろよ......」
「...前、邪魔なんだよ......」
「何時も...達の邪魔ばっか......」
「うぅ......くぅ......ッ」
「お前なんてこうしてやる......!」
「う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「ッ!」
寝ていた状態から飛び起きる。 吹き出た冷たい汗を寝巻が吸って湿っている。
「......またあの夢か」
何年経っても一向に消える気配のない嫌な記憶。
いや、寧ろそういう記憶ほど消えないものなんだろうな
消えろ消えろと願えば願うほど消えなくなる......不思議なもんだよな。
「今、何時だ?」
枕元に置いてある置き時計を見ると時刻は4:30だった。
アラームの設定時間は6:30なので2時間も早く起きてしまった事になる。
しかし、嫌な夢を見て出た嫌な汗のせいで全身が気持ち悪く、寝直す気分にはとてもじゃないがなれなかった。
まぁ、よくある事なのだが。
二段ベッドの下からそっと這い出ると上の段に寝ている友人がスヤスヤと気持ち良さそうな寝息を立てて寝ている。
この瞬間だけこの友人の事を恨めしいと感じてしまう。
シャワーを浴びにシャワールームに向かう。
寝間着を脱いで洗濯機に放り込み、扉を開き、蛇口をひねり湯を浴びる。
浴び終わったら肌着を着て部屋に戻り、制服に着替える。
そうしてリビングに行き電気を付け、ポットで湯を沸かし、インスタントコーヒーを啜る。
毎日のルーティンだ。
俺の名前は
ちなみにその学校は名前の通り、魔術を教える学校で、全世界に優秀な
話を戻すが俺は全S~Eからなる魔導師としてのランクの最低のEランク魔導師で、つまり最弱の1人という事だ。
誇って言える事ではないが。
今は学院の男子寮の共用部屋、102号室。
テレビを付けて朝のニュース番組や通販番組を見る。
これも日課。朝にやっている通販番組のジャパネットたかだを見ているとたまに欲しい商品も存在しており、なかなか興味深いと思う。
そのうち6時台に入り、ZAPかめざめろテレビのどちらを見るかを悩んでいると寝室の方がガタゴトと音がした。
しばらくすると扉がガチャリと開いた。
「おはよう。悠。」
「おはようさん。」
コイツは
茶髪のイケメンで俺の幼馴染。
魔術師としてのランクはB+ランク。 学生の平均がD+~Cランクだから超優秀って事だ。
しかも次の位階試験を受ければAランクに昇級間違いなしとまで言われている。こんな優等生と俺みたいな劣等生を同じ部屋に押し込むなんて学校側の作為を感じるよ。
眉目秀麗 成績優秀 んでもって性格も良いときた。三種の神器を持ってるに等しいから当然モテる。だが本人は誰からの告白も受けようとしない。 殺したくなるね。
「今週の炊事当番って僕だったよね。 何が良い?」
「今日はご飯の気分じゃないな。パンで」
「了解。」
俺がソファに座ってテレビを見ている後ろで宗一が料理をしている音が聞こえる。
俺たちは週替わりで炊事当番と掃除洗濯当番をやっている。 ちなみにコイツはどっちも完璧。
しばらくすると声が聞こえる
「悠、出来たよ。」
「はいよ。」
ダイニングの椅子に座って朝飯を食べる。
今日はトーストとハムエッグ、そしてサラダ。
食べながらニュースを見ていると気になるニュースがあった。
『昨夜未明、学生にして貴族の当主であり、Sランク魔導師のシャルロット・アルトリウム様が、魔術の総本山イギリス王国からここ日本に留学なされるため来日なされました。 日本では東京都の国立東京魔術学院大学附属高等学校に編入なさるそうです...』
「おいこれウチじゃないか?」
「そうだよ。 知らなかったの?」
「あぁ。 何も知らなかった。 もしかしてなんか言ってたか?」
「1年の最後にね。 新学期からこの学校にSランクの編入生が来る、って先生が言ってたよ。」
「あー新学期の最後か......。多分寝てたな。いつも俺には関係のない話ばかりだから寝ちゃうんだよな。」
「きちんと話は聞いたほうがいいよ?」
「そうだな。」
しかしSランクとはな......
「まぁでも凄え話だ。 俺からしたらお前でさえ遥か遠くなのにSランクなんざ天上世界の話に聞こえるよ。」
そう茶化したように言うと宗一の手が止まった。
「そんなこと、言うなよ......」
少し震えた声で、そして小さく言う。
こりゃ地雷踏んじまったか?
「悪かったよ。こんな事は言わねえ。」
「なら良かった。」
爽やかにニコッと笑うとまた食べる手を進め始める。
宗一は何故か俺が自分の事を下げる発言をすると今のように不機嫌になったり怒ったりする。
宗一はいつまでも俺の事を#昔と同じ様に__・__#評価している。
今はそんなんじゃないってのにな。
飯を食べ、諸々の用意を済ませると玄関へ向かう。
「忘れ物はないかい?」
「ねえよ、多分。」
「そう言ってよく忘れ物してるじゃないか」
「つってもな...今日あるのって入学式だけだろ?」
「まぁね。」
「なら忘れ物はない、筈だ。」
「じゃあ行こうか。」
俺たちは靴を履き、バッグを背負って玄関の扉を後にした。
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