第8話 逃避行という名の進軍(上)


「で、朝と今の状況について弁解はある?」



 アギラ領に向かう馬車の中、私はノーラに正座させられていた。


 原因は、今、私に抱き着いて離れないダークエルフの娘だ。


 彼女は昨夜私達を襲った一味の一人で、妖怪の血と性魔術で昂った私に捕えられ、一晩で雌に堕とされた。一切の抵抗を無とする一方的な性の発露により、心も身体も性の欲にどっぷり浸かっている。


 人型ではない、不定形での性交は久々だった。


 取り込んだ雌の肉体を余すことなく堪能できるあの方法は、支配欲と加虐心の満足からくる心的快楽が凄まじい。彼女の上、下、後の処女を同時に開通し、破瓜の血が垂れ、注ぎ込んだ体液が逆流するのも構わず何十回と注ぎ続けた。


 時折意識を奪って落とし、正気を失わないようにするのは苦労する。


 まだ失敗したことはないが、繰り返される気絶と覚醒、その間ずっと続く快楽のオーケストラは刺激が強い。成功すれば強烈な被虐心を植え付け、自分に性的に依存させる事ができる。逆に失敗すれば、虚ろな目で喘ぎを漏らすだけの廃人娘の出来上がり。


 チラリと、寄り添い続ける彼女を見る。


 更なる快楽を期待する、欲情した瞳が視線を通わせ微笑みを魅せる。呑み込んだ時に溶かしてしまった隠密服の代わりの羽衣をそっとはだけ、腰帯まで緩めて下の魅惑を半ばまで晒し覗かせる。


 渡した下着は着けもせずに捨てられてしまったから、上半身も下半身も一枚剥げば殆ど全裸。


 身体改変で大きくしたJカップの雌乳が、私の腕を挟み隠して逃がさない。程よく肉付きの良い両足も、私の胴をがっちりホールドしている。サラッとした銀色の長髪は血色のリボンで纏められ、端の端まで私の全身に巻き付いて求め続けていた。


 なかなか良い感じに仕込めたようだ。


 今度、同じく褐色銀髪のヴィラと並べて楽しむと――――ん? まだ性魔術が効いているのか? さっきからそっち系の思考しかできないな?



「狩り蛇の目を使って襲撃者一味を殲滅し、シムナに後処理をさせつつ彼女の身体を一晩中貪りました。シムナの話だと、彼女の仲間が一人逃げて、こっちも名乗りを上げたって事だから、勇者ガイズとトラブルになる前に早めに街を出ました」


「ふんふん? では、眠りの香で朝になっても起きなかった私を襲わなかった理由は?」


「彼女のセックスアピールとアプローチに我慢できなかった。反省はしている」


「黙れ、甲斐性なし! せっかくしなずちにしか開けられない錠魔術をドアにかけてシムナと二人で待ってたのに、こっちに夜這い仕掛けてくるならまだしも、襲撃してきた隠密を捕まえて楽しんで今日から毎日孕ませ三昧とかふっざけんなもおおおおおおおおっ!!!!」



 水魔術で滝のような涙を演出するノーラに、ダークエルフの娘は勝ち誇った笑みを浮かべた。


 ぐりぐりと胸の先端が私に押しつけられ、首筋でも柔らかい舌の感触を楽しむ。熱い吐息が肌にかかり、彼女の発情がかなり進んでいることを感じ取る。


 もう、ノーラの前だけど襲って良いか?


 人型でもこの肢体を貪りたくなってきた。


 褐色と桃色の割れ目から白濁が溢れ出る様は、正直言ってたまらなく好きだ。本来なら本人の意思確認が必要だが、無理矢理巫女にして側仕えにするのも良い。シムナという前例もあるし、もうこの際そうするか。そうしよう。


 私は彼女の頭を自分に寄せ、強引に無理やり唇を奪った。


 唐突な事に彼女は驚くが、少し歯茎と舌の下を刺激するとすぐ目をとろんと蕩けさせる。舌の動きも貪るように通い通わせ、私の舌に吸い付いて離さない。


 『同意』とみなし、じっくりと気分を高め合った後で、舌先から凝縮した血液を彼女の喉に流し込む。


 私の唾液だと思っているのだろう、彼女は嬉しそうに飲み下した。


 しばらくすると、彼女の身体がビクンッと跳ねる。


 身体が熱を帯び、瞳から光が失われる。先ほどまでの熱情的な舌遣いがなくなり、全身から力が抜けてだらんととなった。変に倒れて怪我をしないよう、私は彼女の身体を抱き留めて優しく愛おしく抱きしめる。



「え? な、何してんの!?」



 私達の行為に、ノーラが戸惑いの声を上げた。


 初めて見せるから無理もない。


 今、彼女に流し込んだ血液を介して肉体改造を行っている。その反動で異常な痙攣が繰り返され、傍目から見れば変な薬でも飲ませたのかと勘違いされるだろう。


 だが、私達の旅程を考えるとじっくりやってる暇はない。


 負担は大きいが、急ピッチで進めていく。


 内臓の強化、血管の強化、筋繊維の強化、細胞・テロメアの改変、神経系の高性能化と脳細胞の変質、全身の細胞配置の効率化。


 本来はじっくり一日かけて行うことを、十分程度で完了する。


 意識はまだ戻っていない。いや、自然に戻る事はない。そのくらいこの変化は激しかった。


 私はもう一度彼女と唇を重ね、肉体改変で失われたエネルギーの補給の為に大量の血液を流し込む。


 喉が圧迫される苦しみに、彼女の瞳に光が戻る。足に、背筋に、腕に力が戻り、彼女は私から逃れるように体と唇を押し退けた。



「ゲホッ、ゲホッゲホッ!」


「落ち着いて。息を整えて」



 彼女の身体を抱き寄せ、焦らせないように優しく囁く。


 少し気管に入ったか? 必要十分な量を一気に流したから、もしかしたら無理があったかもしれない。


 まあ、成功したし良いか。


 これで、彼女も私の巫女だ。



「ゲホッ、ゲホッ――――ここは? 隊長はどこ?」



 あ、今まで正気が飛んでたのか。やっぱりヤリすぎていたようだ。


 ノーラもそれに気づいたらしく、怒りに満ちた視線がこちらに注がれる。私はわざと気付いていないフリをして、御者をしているシムナを呼んだ。


 知り合いがいた方が、きっと説明も楽だろうから。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る