第37話 ギルドに行ってみよう
腹を満たしたあとは、リーゼとルキナに連れられて俺は寮を出る。そのまま騒がしい街並みを闊歩した。改めて見ると本当にデカい寮だな。ちなみにベルーガとか言う魔獣はセラさんにお願いした。
白い石が敷かれた西洋風な街並みだった。何とも騒がしい光景である。この寮のために作られた街だとは聞いたが、しっかりと賑わっていた。異世界らしく冒険者のような格好の人もいっぱいいる。危うくぶつかりそうになりながらも、俺は二人について行った。
街中を見物しながら着いたのは大きな飲食屋だった。木造建築の仕様で、ロッジのようなイメージがある。ちょうど入口も、数段しかない階段を上って、胸元にしかない簡易の木造扉を押して入るタイプだった。西部劇によく出て来る感じの店である。
「まだお腹は空いてないぞ?」
「ここがギルドよ」
「あぁ、なるほど」
丸い木造テーブルが店内ではいくつも並んでいた。そこで大勢の人間が、楽しく飲み食いを楽しんでいた。その横を通りぬけて、奥にあるカウンターまで進む。カウンターの横にあるのは、黒板のように大きな掲示板。そこにいくつもの用紙がマグネットで張り付けられていた。まさにイメージ通りのギルドの姿である。
「これが依頼書ってわけか」
「そ。ここで仕事を選んでお金を稼ぐことができるんだよ」
この辺はゲームでもよくある設定だ。俺にも馴染みあるもので理解しやすい。ここで依頼をこなせば報酬を手に入れられる寸法だ。
「けど、俺たち一応学生だろ? こんなバイトみたいなことしていいのか?」
「何言ってるの? 学費とか寮費とかもあるんだし、むしろ稼がないとダメでしょ」
「あ、あぁ。そうだよな」
ルキナに諭されてしまう。つい尋ねてしまったが、こっちの世界ではむしろ学業をしながらお金を稼ぐのは当たり前のことのようだ。リーゼとルキナがどう見ても中高生ぐらいにしか見えないので、元の世界の常識と照らしてしまった。慌ててルキナの言い分に合わせてみる。
「ここでいっぱい稼げばお小遣いにも出来るからね」
「生徒は皆利用してるのか?」
「そうね。利用してない人の方が少ないんじゃない?」
リーゼが周りを見渡すので俺も習って周囲を確認した。がやがやと騒がしい店内であるけど、よくよく見れば子供から大人まで幅広い年層が利用していた。店内の造りは酒場っぽい印象だけど、実のところレストラン感覚で利用している店かもしれない。
「あらあら? リーゼ嬢ちゃんとルキナちゃんじゃない」
「こんにちは。ゾルバさん」
「やほ〜」
二人に気付いて声を掛けてきたのは、カウンターの向こう側にいる男だ。襟のついた白シャツに黒いネクタイと、黒ズボンの制服をピシッと着こなす男。長く伸ばした黒髪を後ろ手に括り、きりっとした佇まいの男である。
「噂は聞いてるわよ。相変わらず問題ばかり起こしてるそうね」
「まぁ……」
「いいの。いいの。少しくらいお転婆でもいいじゃないの。私だって昔はやんちゃしたもんよ」
もう一度言おう。男だ。口調だけなら女性特有に思えるが、声質もしっかりと男らしい低音質である。制服を着こなし、見た目イケメンと言っても差し支えない風体のせいで、妙なマッチングな人だ。
「ところで、その子は? あんまり見ない顔だけど」
「あ、今日から同じアカデミーに通うことになったラルクだよ」
「……どうも」
ルキナに紹介されて頭を垂らす。オカマの人とか初めて見たので、どうしたもんか少し反応に困る。
「そうなの。私はゾルバ・フル・ミケランジェロ。ゾルバでいいわよ。この店のオーナーをやってるわ。うちの子はボスって呼んでるけど」
「あ、一番偉い方なのか」
つい思ったまま口にしてしまったが、ゾルバは気にしていないようだ。
「あら、やっぱり見えない? よく言われるのよね。どうしてかしら」
どうやら本人にとったは悩みの種のようで、腕を組んで真剣に考え込んでいた。まぁ一番偉い人がまさかオカマとは思わないような。偏見かもしれないけど。
リーゼとルキナも何だかんだ察しているようで、苦笑いを浮かべていた。
「まぁそれはいいんだけど、今日は何? この時間帯ってことはお仕事?」
「はい。このラルクが今一文無しみたいだから、ギルドの案内を兼ねて」
「そう。それじゃ、簡単なので探してみる?」
「報奨金が高いのがいいな」
カウンターから出てきたゾルバが依頼書を張り付けた掲示板を見ながら問いかける。それに対し、ルキナは見返りが大きいほうがいいと答えた。
「だったらSクラスでいってみる? 二人は今確かセカンドのはずでしょ?」
「そうですね。だったら……」
「はい。私これがいい」
そう言って、ルキナが勝手に掲示板から依頼書を手に取った。そこには、SSと大きく書かれている。つまりはダブルSということだろう。
「駄目よ。セカンドのルキナちゃんはまだ早いわよ」
ゾルバがNGを出してルキナから依頼書を取り返す。えぇと不服そうなルキナ。当然でしょとリーゼも諭している。が、俺にはギルドのシステムがさっぱり分からない。自分だけ分からないというのは面白くない。
「なぁ、これどういうシステムなんだ? さっきから全然ついていけてないんだが」
「あ、ごめんさい。じゃあ私が手取り足取り教えてあげるわ」
ぶるぶると身震いしながら即行で断った。
「いや普通で頼む」
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