PRAY FOR

あき @COS部/カレー☆らぼらとり

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もしも、もしもだよ?

この世界が今日終わってしまうのだとしたら、きみはいったいなにがしたい?



ほら、なんでもいってごらん。

これは、もしもの話なんだから。

本当はできる限り、きみの願いを叶えてあげたかったんだけれどね。

訊くだけきいてみたい、いいだろ?




ははは。

急にそんなこと言われても、って顔してるね。

まあ、たしかに、そうだよね。

ぼくがおんなじこときかれても困ってしまうかもしれないな。




じゃあ、たとえばさあ。

ほしがってったブランドバッグを買いにいくとか、

おいしいケーキを食べにいくとか、

会いたい人に会いにいくとか、

あるいは、綺麗な景色を見にいくとか。


どんな些細なことでもいいんだ。

なにかおもいつくこと、ないかな?







ああ、そうか。

たしかにもうぜんぶ叶えてしまったのかもしれないね。







それにしても。

沈む夕陽が綺麗だね。

このなんともいえない空の色がさあ、またいいんだよね。

きみと一緒に見れてほんとにうれしいよ。




見ててごらん。

あっちの空からもうすぐ月が出てくるよ。


それがたぶん、最後のお月様。

ニュースや天気予報でもそういってたし。

ここでいったら、日没から3分後、

世界が終わっちゃうらしいからね。





そういえば、世界史の先生が言ってたっけ。

古代ギリシャ人は、夜は太陽が死んでしまい、朝は太陽が生き返る、っておもっていたらしいって。


「夜になると、ああもうダメだーってなる。」

「朝になると、東から太陽がモアモアモア、わーい! 生き返ったーってなる。」

「不意をついて、パルティアンショット。」

「あ。グザ。ドス。」

「置いといて。」



ふふふ、先生のマネ。

なんか、しょうもないことまで思い出しちゃったな。

ほんと、たのしかったな。

高校時代。


なーんて、昔のことはもうどうでもいっか。











今日いちにちはどうだった?

たのしかった?

ぼくはきみをしあわせにしてあげられたかな?

もう、やり残したことはないかな?







うん。

満足そうな顔で、よかった。








え?

ぼくは世界の終わりになにがしたいかだって?




うーん、そうだなあ。

ぼくも大抵のことはやってきた気がするし、もうやり残したことなんてないのかも。








強いて言うなら。

「祈る」かな。


うん。

祈りたい。






世界の終わりが来ませんように。

明日も今日が続きますように、って。




たとえそれが変えられない運命だとしても、ぼくは最後の最後まで奇跡を信じたいかな。






あ。

ほら、ちょうど流星群が見えてきたよ。






きみも一緒に祈ろうよ。

どうか、神さま。

世界を終わらせないでください、って。








うん。

でも、やっぱり終わっちゃうみたいだよ。








学者も政治家もNASAも大統領も、みんながんばってたけれど。

結局ダメだったみたい。





大丈夫。

ぼくがそばにいるからね。





それにしても、こんなに澄んだ空見たの、久しぶりだな。

たぶん、みんなおんなじ気持ちで、空を見上げてるのかな。






本当に終わってしまうんだね。

手、握っててもいいかな?







ああ。

もう声も聞こえないんだね。

世界の終わりまであとすこし。




こんなにも轟音が、

鳴り響くなんて。













ねえ。

きこえてる?












ぼくはきみが。

















遠のく意識の中で、

ぼくはきみ


おもっ














宇宙天気予報で予測されていた通り、世界のどこかで巨大隕石が衝突したらしい。

眩しい光に包まれて、どうやらぼくらは星になってしまったようだ。





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