想いを伝える最後から3分前

とべないうーいー

第1話 想いを伝えよう!



……えっ?


驚いたような、嬉しそうな、なんだか困ったような、そうじゃないような


そんな顔をしている先輩を私はただじっと見つめていました。

見つめていたって表現はおかしいかな


下唇を噛み締め、右肩に下げたスクールバッグの持ち手をぎゅっと握りしめ、眉間に力を入れて先輩の表情を見ている私はきっと先輩には睨んでいるように見えるでしょうね。


‥‥先輩、睨みつけてる訳じゃないですよ?

ただこうしてないと泣きそうになるんです。


私がこう思ってることは先輩にはきっと伝わってないですよね


でもきちんと伝えました、この想いを


だから答えて下さい、きちんと答えが知りたいんです——



——————————————————


3分前


街灯もまばらな八月の夜を歩く2人


先輩は歩くのが早い。

私は歩くのが遅い。


でも今は先輩が私に合わしてゆっくり歩いてくれているのが歩幅から伝わってくる。


優しいですね、と足音で伝えてみたけど

横で大きなあくびをしている先輩は気にもしてないですよね。




2分前


相変わらず眠そうですね、でもそれも仕方ないです。

だって会話をしようにも出来ないんです。

伝えたい気持ちはあるのに

気持ちから喉を伝わって言葉にしようとすると、どうしても違う言葉が出てくるんですよ。


「今日暑かったですよね」

「今日は生徒会活動大変でしたね」

「あ、そういえば今日は遅くまで付き合わしてしまってごめんなさい」


つまらない会話ですよね、自分でも分かってます。

でもあと少しの勇気で伝えられそうなんです。

八月の夜だっていうのに緊張して汗をかいてる私の事は、どうか見ないでください。



1分前


もうすぐ着いちゃいますね。

この坂を登れば私の家です。


「相変わらず急な坂だよな」

「毎日登ってるので慣れちゃいました」


もし、返事が良くなかったら明日からどんな顔で会えばいいんですか?

今みたいに、普通に会話をしてくれますか?

もしかしたらもう二度と一緒に帰り道を歩けないかもしれないですか?


沢山の不安があるんです。

それでも伝えたいって思ったんです。

一緒に帰り道を歩ける関係以上に、なりたいんです。

先輩のポケットに突っ込んでる右手と、私の左手を重ねて歩ける関係になりたいんです。


緊張して声が震えちゃうかもしれません。

上手く言葉にできるかも分かりません。

伝えたあと、答えを知るのが怖くなって

もしかしたらこの坂道を全力で走り出しちゃうかもしれません。

今にも泣きだしそうなんです。

でも伝えるって決めたんです。

どうか、私の想いを、きちんと聞いてほしいです。




ラスト5秒前


先輩


3…2…1…


好きです

































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