黒い記事
大津 千代
第1話 黒い記者
とある会社のフロア。多数の人が動き、人によってはパソコンに向かって文字を打ち込んでいる。
「なぁ、このネタ、記事になりそうだよな」
男性が話しかける。
「あー…大丈夫っしょ。少しだけ話盛っとけ」
そう、悪い微笑みを浮かべて話すのは
「了解〜、これで記事作るわ」
そう言うと男性は自分のパソコンへと向かって行った。蓮也も自分のパソコンへと向かい記事を書き始めた。蓮也はカメラを取り出し、撮った写真を取り込んだ。写真には結婚している有名女優と一般男性による浮気疑惑写真。話を盛って記事を作る。
「これで……良しっと。面白い記事が出来た…」
また蓮也は悪い微笑みを浮かべる。そしてすぐに別の記事を作り始めた。そしてひたすらにありもしない話を盛り込んだ記事をその日は作り続けた。恥ずべき行為をしているという自覚は、持っていなかった。
自宅に帰っても、見ているのはネットニュース。家族サービスをしつつも、ひたすらに記事のネタを探し続けている。そして、時々極秘ルートからネタを提供してもらいそれを記事にしている。
それをやって、部数が増えていっているのは現実だ。
夜。蓮也は眠らない街を車を運転している。前から目をつけていた男性俳優の不倫疑惑を確証づけるために極秘ルートから情報を聞きその場所へと向かう。
そして、男性俳優がよく使っているというラブホテル付近に車を止めカメラを持ち、その人たちを待った。無音の空間が車内に広がる。
待ち始めて1時間。男性俳優と不倫相手が来た。蓮也はカメラを向けズームする。2人の顔、そして入っていく光景を全て写真に撮る。シャッター音だけが車内に広がる。
「……終わったな」
写真を撮り終えると、蓮也は車のエンジンをかけ車を発進させ、会社へと向かって行った。
エレベーターが登って行き、フロアへと着く。
「例の写真撮れました〜」
蓮也はそう言いながらその場にいる人たちに大声で言った。そして、歓声が湧く。
「マジかよ!爆弾ネタゲットしたな」
「良くやった!これでまた部数伸びるぞ!」
他から見たら、地獄絵図だ。だがここにいる人達にはご褒美みたいなようなものだ。恥ずべき行為をしているという自覚を持っていないのだから。
そうしてやっているうちに、異変が起きていった。
それを、本人が気づくのはもう少しかかるのであった。
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