たった3分で世界を救え
けろよん
第1話
「起きなさい、ああああ。今日は王様に挨拶に行く日よ」
「ん、そうか。もうそんな日か」
俺は母さんに起こされて自分の部屋のベッドで目覚めた。俺は勇者の子孫だ。
16歳になった日、王様に挨拶しに城へ行く約束をしていた。俺は母さんと一緒に城に行って王様と謁見した。
王様は白い髭を撫でながら、厳かに言った。
「よくぞ、我が城を訪れた勇者ああああよ! お前が16になった日、ついに魔王を倒しに旅立つ時がやってきた」
「ついにこの時が来たのね」
「ついにこの時が来たのか」
16になったら勇者の子孫は旅に行くことになる。そう予言されていたことを俺は話に聞いて知っていた。
だが、次のことまでは知らなかった。王様は苦悩に眉を歪めてそのことを言った。
「だが、予想外のことが一つあった。世界が滅びるまで後3分しかない。3分で魔王を倒さなければ世界は滅びる」
「まあ、大変」
「すぐに仲間を集めなければ。仲間は確かルイー何とかの酒場に行けばいるんでしたよね」
「もうそんな時間は無いわ。そこの兵士でいいから連れていきなさい。母さんも行くわ」
「ええー、拙者には城を守護する任務が」
「つべこべ言わずに仲間におなり」
「ぐえっ」
兵士は母さんに殴られて仲間になった。
「後はそこらへんの犬でも連れて行きましょう」
「カップメン作ってまっておるぞー」
お湯を注いだ王様を後にして、俺達は旅に出ることにした。
城下町からダッシュで外に出た時点でもう後二分ぐらいしかない。空が闇に染まり始めている。
「もう時間が無い。魔王の城はどこにあるの?」
「世界の果てよ。もう間に合わない。あの王様死ねばいいのに」
「では、このキメラのつばさで飛んでいきましょう」
「おっけー」
そして、俺達は兵士がたまたま持っていたキメラのつばさで、ばひゅーんばひゅーん、飛んでいった。
世界の果ての闇の大地、そこに魔王の城がある。俺達は辿り着いた。だが、そこには結界があって俺達の行く手を阻んだ。
「もう時間が無いのに!」
「あっと一分しかないぞ!」
「どうすれば……」
そこに現れたのが妖精さん達だ。
「勇者よ、結界はわたし達が打ち砕くわ!」
ズガガーーーン! 結界は壊れた。
「魔王を倒せるのは聖剣を持った勇者だけ! 魔王の場所までの道は開いておいたわ! 頑張って!」
「ありがとう!」
光輝く魔法陣。それは魔王の元まで繋がっている。
だが、困ったことがあった。今の話が本当なら俺は聖剣を持っていない。
「へへっ、お困りのようだな」
そこに現れたのが柄の悪い盗賊だ。彼は剣を突き出してくる。俺達は身構えるのだが……
「ほら、聖剣だ。持っていけ!」
「いいのか?」
「世界が滅んじまったら盗品を売りさばくことも出来んからな。だが、必ず勝ってこいよ!」
「おっけー、任しておけ!」
そして、俺達は盗賊から剣を受け取り、妖精の用意してくれた魔法陣で魔王の間へとワープした。魔王はすでに目覚めていた。後10秒ぐらいあるのに。
「よく来たな。勇者よ!」
「うわ、もう目覚めてる。まだ時間あるのに」
「これから世界を滅ぼすつもりなのよ!」
「あと8秒!」
「わんわん!」
俺と母さんと兵士と犬は魔王に立ち向かおうとする。だが、魔王は笑った。
「ここまで来たことは褒めてやる。だが、レベル1で勝てると思うか!」
「うわっ、レベル1!」
その時、不思議なことが起こった。犬が光輝いたのだ。
「わしを犬だと思ったか? だが、本当は神だったのじゃ!」
「え!? 神!?」
「チート能力を授けよう!」
「わーい、チート能力。ずしゃああああ!」
「ギャアアアア!」
魔王は滅んだ。残り一秒の出来事だった。
「世界を救ったか、勇者よ」
青い空の下、城のバルコニーでカップメンを啜りながら王様は世界の平和を実感していた。
たった3分で世界を救え けろよん @keroyon
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