異世界、最後の3分間
水谷一志
第1話 異世界、最後の3分間
一
気づいたら、僕は異世界にいた。
それは、正真正銘の「異世界」だ。
そしてこの異世界から脱出する方法はただ1つ。それは…、
【45分間以内に、モンスターを15匹倒す】こと。
僕はこの異世界に来る前、ちょうど大好きなネットゲームをプレイしていた。そこで僕はたまたま眠りに落ち…、気づいたらこの異世界にいたというわけだ。
最初僕が眠りから覚めた時、僕は小さな部屋にいた。
『あれ?僕は自分の部屋でネットゲームをしてた…はずなんだけどな?』
しかしその部屋は僕の部屋ではない。
『これは…夢?』
そしてその部屋の中で僕はある掲示を見つける。
【ようこそ、この世界へ。
そしてあなたがこの世界から脱出する方法はたった1つです。
それは…、】
そして僕はこの異世界のルール、
【45分間以内に、モンスターを15匹倒す】ことを知る。
『…何だこれは?もしかして新しいゲームのキャンペーンかな?』
…の割にはこの世界はリアル過ぎる。そして僕は掲示を読み進める。
【この部屋のドアを開けるとまず最初のモンスターがいます。そしてモンスターを倒すと次のドアが現れ、これを15回繰り返します。
そして計15匹のモンスターを倒すとクリア!あなたは元の世界に戻れます。
あとここにこの世界での武器となる剣を置いておきます。
それでは、頑張ってください!】
『…やっぱりゲームか。いや、僕の夢の中、かな?
でも、何だか面白そうだな!』
僕はそんな軽い気持ちでそこにあったドアを開けた。
二
しかしそんな僕を待っていたのは『正真正銘』の異世界だった。
なぜなら…、そこにいるモンスターたちはゲームの中のものではなく、また夢といったものでもなく、どこまでも「リアル」だったからだ。
僕は最初のモンスターをネットゲームの要領で倒した。しかしそれはゲームでのそれとは違う。
なぜならそのモンスターの攻撃で僕が利き腕と反対の左腕に少し傷を負った時、僕の腕からは血が流れ、ものすごい痛みに襲われたからだ。
『い、痛い…。もしかしてこれは…、本当の異世界なのか…?』
そうと分かれば何とかこの世界から脱出するしかない。ということは、この時点で残り14匹のモンスターを倒さなければならないことになる。
それは正直キツい。一応僕は3分で何とか最初のモンスターを倒したが、この世界から脱出するにはこの「3分で1匹」のペースを守って敵を倒さないといけない。
『おそらく、この後のモンスターは最初に比べてレベルが上がるんだろうな…。』
しかしつべこべ言っても仕方がない。僕はその後急いでドアを開け、モンスターを倒し続け…、
何とか42分で14匹のモンスターを倒すことに成功し、後はラスボスを迎えるだけとなった。
この時点で、
【残り3分、最後の3分間で1匹のモンスター】である。
三
しかし、最後のモンスターは今までとは違った。
まずモンスターの大きさが違う。目視したところによると、約4mくらいであろうか。そしてそのラスボスは僕に気づくと、両手についたカギ爪で僕に襲いかかってくる。
そして僕はその爪で足を少し引っかかれてしまう。
「イターーーーッ!」
僕は思わず声に出してしまった。
『とりあえず、両手のカギ爪の攻撃を何とかしないと…。』
今までの14匹のモンスターは、基本的に1本の剣で対応可能な攻撃しかしてこなかった。そのため僕は最初に与えられた剣で対応し、何とか攻撃してその局面を乗り越えてきた。
しかし今回は「両手のカギ爪」だ。…ということは剣が2本あれば相手の攻撃をうまく防げる。
そしてそんな状況の僕に、「一筋の光」が見えた。
そう、そのラスボスの後ろにもう1本の剣が刺さっているのを僕は発見したのだ。
『やった!…でも、あの剣を取るには…、』
そう、その剣を取るにはモンスターの背後に回らないといけない。相手の攻撃をかわしながら背後に回るのは…至難の業だ。
僕は相手の攻撃を1本の剣で何とか防ぎ、しかしと言うかやはりと言うか、こちらからは攻撃はできずにその剣を取る方法を考えた。
すると…、
突如、モンスターの動きが止まった。
そして時計を確認すると、どうやら時間そのものが止まっているらしい。
『これは…、チャンスだ!』
どうやら時間は止まっているが僕だけは動ける、その状況を確認した僕は大きなモンスターの股をくぐって2本目の剣を取りにいった。
そして僕がそのままモンスターに切りかかろうとすると…。
時の流れが復活し、ラスボスがまた攻撃を仕掛けてくる。
しかし僕には2本の剣がある。僕は二刀流で相手のカギ爪を封じ、その腕を切り落とした。
するとモンスターはうめき声をあげて倒れ、そのまま動かなくなる。
『…やったー!』
そして僕はこの局面をクリアした。
すると、そこにドアが現れる。
…そのドアを開ける前、僕はこの異世界から脱出したらまずやりたいことを考えた。
『やっぱり、大好きなお菓子をいっぱい食べることかな?…いやでも、ネットゲームもプレイしたいし…。
…ってかこの状況をクリアした後でゲームとはいえ同じ状況に挑もうとするなんて、よっぽどゲームが好きだな…。』
僕はそんなことを考えながらドアを開ける。
すると…。
四
『な、何で…!?』
そこは現実世界ではなく、そこには1匹の大きなモンスターがいた。
また、そこには大きな掲示板が掲げられている。
【すみません、こちらの手違いで世界内部の時間が止まってしまいました。
そのためもう1匹を急遽追加します。
『アディショナルタイムは、3分』となります。
ではもう1匹倒して、現実世界へとお戻りください。】
『えっ、えーーーーーーーっ!?』 (終)
異世界、最後の3分間 水谷一志 @baker_km
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