ルージュのルール
きーぱー
第1話 ルージュのルール
幼馴染のタケちゃんと2人で、パチンコで掏られた客を相手に金貸しをしていたが出資法違反等で捕まった俺達。資産家のタケちゃんの親父さんがすぐ出してくれたのだが実家に居ずらくなった為、渋々1人暮らしをはじめる。家賃3万円、6畳2間の木造平屋の一戸建て。駐車場もあり、古いながらも生活するには困らない物件だった。再び無職となってしまった俺はテレビでニュースを見ているとスマホの着信音が鳴る。
「ルルルルッ ルルルルッ」
(ん?
俺はスマホの着信アイコンをスライドさせて電話に出た。
「あっ
「うん 登録してあるからわかるよ どうしたの?こんな時間に」
「今、休憩時間なの 今日そっち行っていい? 夜ご飯作るよ」
「わかった 気をつけて」
先月から付き合いだした中学時代の同級生、
先々月、俺はタケちゃんと駅前の居酒屋で飯を食いに行った時ばったり中学の時の同級生、香久池望美と再会したのだ。中学時代は好きだった"お笑い芸人"の話でよく盛り上がったのを覚えてる。望美は、よく笑う女の子だった。
望美も1人で居酒屋に来ていたのではなく同僚の先輩と紹介された、俺達より2つ年上の女性と一緒だった。せっかくだし一緒に食おうと同席する。
俺は隣に座るタケちゃんの耳元で小さく囁いた。
「ねぇタケちゃん なんか 望美さ かわいくなったよね?」
3年会わないとこんなにも変わるものなのか、薄っすらとだが化粧し口元が妙に色っぽく見えた。そんな事を想像した俺とは逆にタケちゃんはあっけらかんと
「そうか? 俺、全然覚えてないよ うまっ! これうまっ!」
そう言って串焼きにかぶりついていた。そう。タケちゃんは興味が沸かないものにはとことん興味がなかった。望美とはこの日、何事もなくスマホの番号を交換して別れたのだったが、その別れ際、望美は駆け寄ってきて俺の耳元で呟いた。
「わたし、中学の時ちょっとだけ隠蔽ちゃん好きだったかも」
酒も入ったせいなのか、照れ臭そうに真っ赤な顔でそう言うと
「また連絡するね!」
と、手を振り先輩とカラオケBOXに行ってしまった。それからはお互い週2くらいで連絡を取り何度目かの食事の後に結ばれた。言葉で"付き合おう"とは、言わないものの俺と望美は共通認識だった。俺の彼女が『望美』であり、望美の『彼氏』が俺だと。
夕方6時過ぎた頃、家の脇にある駐車スペースに車が入る音がした。エンジン音が止まると暫らく車中でゴソゴソと物音がする、時間にすると2~3分だろうか。
バタンとドアが閉まる音がするとシャカシャカ コツコツコツと、買い物袋とヒールの音がし玄関の引き戸の音がする。同時に望美が呼びかける。
ガラガラガラ
「隠蔽ちゃーん 遅くなってごめんね スーパーが混んでて」
「ううん いいよ 昼飯遅めだったからまだ腹へってないよ」
望美はヒールを脱ぎ、家に上がると台所でさっき買った材料を冷蔵庫に入れてからテレビを見ている俺の横に座ると顔を覗き込んでくる。俺は望美の肩を引き寄せるとキスをした。なんとも言えない、ねっとりと柔らかい唇を確かめるように何度も何度もキスをした。左の手で望美の右頬や耳元に、愛おしく触れると望美は軽く息を漏らしはじめる。
しばらくキスを堪能した俺は望美の耳元で問い掛けた。
「今日はメロン?」
黙って頷いた望美に再びキスをすると、そのまま俺は彼女を抱いた。
付き合いだして間もない頃だった。キスをすると甘い味がしたので何だろうと聞いてみると味がする口紅を使ってみたと言うのだ。正確には、その時リップをつけていたのだが俺がどんな反応をするのか試してみたという。思いのほか俺の反応が面白かったらしく以来、味する場合はOKという変な"暗黙の了解"のようなものが今でも続いてる。逆に『今日は絶対ダメ』という日も設定され口紅をしていても味がしない日は"無し"の日とされたのだ。付き合いだしたばかりの俺達を、他人から見ればママごとみたいな恋愛に見えるかもしれないが割りと俺は気に入っている。その日の行為の有無が口紅に味があるかどうかで分かってしまう『ルージュのルール』であった。
それと、気になっていたと思うが
話を戻すが、こうして付き合いだした俺と望美は週末になると中学時代に盛り上がった"お笑い芸人"のDVDを見ながら肩をヒクヒクさせ大笑いするのだった。
余談になるが俺達が好きだった"お笑い芸人"は、その頃がピークだったらしく今ではお茶の間で見る事は無くなっていた。
ルージュのルール きーぱー @poteito
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