最後の3分
別所高木
第1話 皆既日食
今日はいよいよ皆既日食だ。
何十年も待っていた皆既日食が、あと5時間後に!
この太陽が完全に月に隠される。
皆既時間は第2接触(太陽が月に完全に隠れる瞬間)から第3接触(月の陰から太陽が出てくる瞬間)までの3分、何をやるか絞り込んで、準備しておかなくっちゃ。
まず、写真で撮りたいもの。
・ユラユラ揺らぐコロナ
・もしかして、プロミネンスの紅い焔とか見えちゃったりして。
・皆既中は星も見えるとか聞いたことあるから、もしかして水星とかも見えたりして。。。
・彩層なんて見る事ができるかな?撮れたら撮ろう。
・最後にダイヤモンドリングの写真を撮って終了
そんでもって、写真以外に、皆既中のコロナは双眼鏡で見たいな。
ん!絶対に見たい!
3分で出来ることってこんなもんかな?
皆既になるまでの、太陽がどんどん細くなっていくところも写真に撮りたいけど、
皆既になった時にNDフィルタ取り外す時間がもったえない。。。
やっぱり、カメラ1台しかないから皆既重視!諦めよう。
あと、コロナを双眼鏡で見てて第3接触になって、太陽を直接見てしまったら大変だ!
眼球がリアル目玉焼きになってしまう。。。。
携帯のアプリで日食のカウントダウンしてくれるアプリを用意しておけば大丈夫!
もう完璧だ!
天気予報では今日は100パーセント晴れ!
てるてる坊主も10個作って持ってきた。
昨日やった、明日天気になーれの靴飛ばしでも、晴れだった。
これでやり残した事が何があろうか?いやない!
自身満々で観測地点到着した。
もう先客がいそいそと準備をしている。
みんな準備に余念がない。
盛り上がってきますね。
三脚をセットし、カメラも準備完了。
双眼鏡も手の届くところにないと、薄暗い中探すとタイムロスだ。
首からかけておこう。
すると、携帯からカウントダウン聞こえた。
第1接触まであと10分・・・
第1接触とは、太陽が月に隠れ始める瞬間だ。
日食メガネで太陽を見てもなんの変化もわからない。
でも、いよいよ始まったのだ!
太陽の見た目の普通さとは、関係なく気分はどんどん高まっていた。
食分20パーセント(太陽が月に隠れた面積) 日食メガネでかけている事がわかる。
食分40パーセント、これが部分日食だったら盛り上がってるところだ。
食分60パーセント、太陽が三日月っぽい形になってきた。
長い・・・ちょっと、退屈になってきた。
持ってきたノートを1ページ破って、ボールペンで穴をあけてみた。
ピンホールカメラみたいにならないかな?
地面に影を映してみた。
穴を通った光が、三日月形に映った。
にやり
思った通りだ。
紙に「日食」と書いて、文字の上に穴をあけていった。
同じように地面に影を」映してみると、三日月がつながって日食と読める!
そんな事をして遊んでいると、携帯のカウントダウンが
第二接触まであと10分と告げた。
おっと!こんなことをやっている暇はない。
再びカメラの脇にスタンバイした。
第二接触まであと5分
空には雲一つない。
風もない。
もうこれから雲がやってくることはないだろう。
第二接触まであと1分
いよいよだ!
二日食眼鏡で太陽を見ると糸のようだ。
空の色もうっすら暗い。
第二接触30秒前
第二接触10秒前
9
8
7
6
5
その時急に空中に雲が広がった。
きゃーーーーー!
観測地のあちこちで悲鳴があがっている。
なぜだ!?もしかして、太陽光が失われて、急に気温が下がって
空気中の水蒸気が凝結して雲になった?
何が起こっているかわからないが、曇ってしまって太陽が見えないのは事実だ。
4
3
2
1
第二接触しました。
第三接触まであと3分。
周り中いたるところで落胆の声があがっている。
あぁ、せっかく準備していたのに。。。。
雲晴れないかな?
何も見えないや。
天気の事だから仕方がないか。。。。
ふと、地平線のほうを見ると、夕焼けになっている。
しかも、まわりぐるり360度夕焼けだ。
すごい!
月の影だから360度の夕焼けになるんだ!
夕焼けの事は考えていなかったからビックリした。
雲が沸き立ったってことは気温が下がったのだ。
確かにひんやり感じる。
せっかくだから、上着を脱いでみた。
おーーーーぉ、肌寒い!
ここまできたら、第3接触まで寒さを体感しよう。
周りにはまだ、晴れろ!とか大騒ぎしているが、もう関係ない。
今、起きていることを見なくては!
第三接触まであと1分
周りの夕焼けが神秘的だ!
上着を脱いで半袖で、肌寒いがこれが日食の空気だ。
第3接触まであと10秒。
あぁ最後まで天気は回復しなかった。
ダイヤモンドリング見たかったな。。。
残念。。。。。。
5
4
3
2
1
第3接触しました。
その瞬間、周りの夕焼けが、東に飛ぶ様に移動していった。
これには驚いた。
夕焼けがヒュンって飛んだよ。。。。
第三接触した十数秒後に上空の雲が消えて、太陽が出てきた。
細い糸の様な太陽だが、コロナもなにも消え去った後だった。。。。
周りを見渡すと落胆している人も多かったが、
東の方を指差して興奮して喋っている人もいた。
同じ3分でも、人によって見えるものが違うんだな。。。。
次のチャンスがあったら、もっと、色んなものが見えるように頑張ろっと。
でも、コロナユラユラ見たかった。。。。
おしまい
最後の3分 別所高木 @centaur
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