「……そんなこと言ったって、ここは私の部屋でもあるんだから」

 むっつりと言い返した少女に美波は見覚えがあった。洗濯物を取りにくる生徒だ。向こうも美波を見て、気づいたらしい。

「あなた、ここの部屋なの」

 相手はうなずき、のそのそと入ってきて、反対側のベッドに腰かける。

 ずんぐりした身体に青い制服。作業用の白いエプロンをかけており、その姿と、なにげない動作に、以前にも感じた奇妙な違和感を美波はふたたび覚えた。

(まさか……。でも)

 訊くべきかどうか迷った。だが、以前よりはっきりと気づいておきながら訊かないのは、かえっておかしいだろう。

 つい凝視していたようで、向こうはやや目を伏せ、手で腹のあたりを撫でる。

「あの……、あなた」

 美波は意を決して口をひらいた。相手は頭を下げて、かすかに頷きをしめし、溜息をひとつ吐く。

「今、八カ月なの」

 やっぱり――。美波は驚愕に息を飲んでいた。

 彼女は妊娠しているのだ。

 側で雪葉が鼻をすすり、低い声で告げるのが聞こえる。

「私は三ヶ月よ」

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