五
「……そんなこと言ったって、ここは私の部屋でもあるんだから」
むっつりと言い返した少女に美波は見覚えがあった。洗濯物を取りにくる生徒だ。向こうも美波を見て、気づいたらしい。
「あなた、ここの部屋なの」
相手はうなずき、のそのそと入ってきて、反対側のベッドに腰かける。
ずんぐりした身体に青い制服。作業用の白いエプロンをかけており、その姿と、なにげない動作に、以前にも感じた奇妙な違和感を美波はふたたび覚えた。
(まさか……。でも)
訊くべきかどうか迷った。だが、以前よりはっきりと気づいておきながら訊かないのは、かえっておかしいだろう。
つい凝視していたようで、向こうはやや目を伏せ、手で腹のあたりを撫でる。
「あの……、あなた」
美波は意を決して口をひらいた。相手は頭を下げて、かすかに頷きをしめし、溜息をひとつ吐く。
「今、八カ月なの」
やっぱり――。美波は驚愕に息を飲んでいた。
彼女は妊娠しているのだ。
側で雪葉が鼻をすすり、低い声で告げるのが聞こえる。
「私は三ヶ月よ」
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