インパクト X インプレッション
沢木 大和
第1話
「なんだか最近縮こまっている感があるなぁ?」
通学途中の電車の中で、ふとっ、アキラの頭をよぎった。
なんとも言えない窮屈感、閉塞感。
「結構、感じ知ってるじゃんと自分を褒めてやりたいと思いつつも、この感覚がたまらなくイヤだ。」
特に、この満員電車の中ではピークに達する。この感情のカンフル剤になっているのが、たまに遅い電車に乗ったときに見かける同じ学年のアヤだ。
空気濃くなりが、空間が圧縮されていく感がある頭の周り360度が、少しずつ少しずつ、ふわぁ~、ふわぁ~と空気濃度が薄れて、空間が膨張していき、気が流れていくフィーリングになる。
アヤとは中学時代から知っているわりと仲なので、まれにLINEが来ることがあるんだけど、最近、その頻度が増してるように感じるのは、オレの大きな勘違いだろうか?でも、本当のところ、ものすごく、ものすごく、嬉しいのでLINEが続くように続くように、なんとなくあたり障りのない返事を返してしまう自分が情けなくも感じてしまう。ほんの時たまだけど、人込み越しに遠くにつり革を握っているアヤをチラ見することが、ほんの稀にあるけど、そんな時はいつも彼女はクールビューティーモードだ。こっちは、LINE来ないかなっとスマホを気にしつつ、一応、別のことをしている素振りしようと予備校のサイトを見たり、スポーツニュースのサイトを見たりして時間と気を紛らしていることがほとんど。
小さい頃から自分の感情をあらわにしたり、思ったことをきちんと言葉にしたり、そもそも3人以上集まったところで話しをしたりするのが、超ダメダメ人間だったアキラにとって、今のこの状況をどう対処していいものか、???、無理難題、人生どうしますか?くらいの大きな出来事だった。
「で、この状況って何?ただ、知ってる女の子からLINEが来てるだけでしょ。でも、だって、手順ってものがあるでしょ。ステップ・バイ・ステップで常識っているルールに乗っ取って距離を縮めていくやつ。」
と頭の中で客観的な自分が呟いた。
そんな時、そんな時、なんとなくアヤがこっちの方を見て、不安げな表情をしている気配を感じた。スマホのLINEをのぞき込むとアヤからのメッセージが。
「はい、単刀直入に書きます。私のこと、どう思う?」
と書かれていた。
えっ、こんな満員電車の中で、それもこんなに突然?やばいよ、それはやばいよ。
「ちょっと待て、落ち着け。」
とアヤのおかげでほんの僅かながら気の通り道ができている数センチの方を向いて頭の中で呟いた。
こんな時、モテキに突入したリョウならどうするだろうか?LINEでリョウに聞いてみようか?ちょっと勉強が得意なアキラには、いろんな解法の候補が頭の中をめくるめくる。
「なんか、どれも普通なんだよなぁ、それよりオレっぽくないんだよなぁ?どうしてなんだ?解放の手順や電車の中でのルールにとらわれ過ぎてる?でも、どうすりゃ?」
アキラは突然、スマホの画面を消した。
そして、次の瞬間、気の道筋に沿ってアヤの方を向き、大勢の見知らぬ人たちの中で
「好っきやでぇ~~~~~!」
と声を張り上げた。
アヤのその時の表情を大学生となった今でも忘れることはなかった。
インパクト X インプレッション 沢木 大和 @yamato_sawaki_with-AI
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