第23話『水島クンのアドベンチャー・2』
トモコパラドクス・23
『水島クンのアドベンチャー・2』
海王星近くで、あいつぐ小爆発! 太陽系辺縁に異変……?
そんなニュースが世界を駆けめぐった。ただし……扱いは、ほんのコラムだったけど。
今の二十一世紀初頭の科学技術では、海王星の近所まで行って確認することが出来ない。ハッブル宇宙望遠鏡をもってしても、小惑星か隕石の衝突ぐらいにしか見えず、実際、そこから出てくるデータを解析しても、そういう答えしか出てこなかった。
ただ、天体観測のデータでは、海王星の近くに、こんな大量の小惑星や、隕石などが確認されていなかったので、世界中の天文学者が騒いだのである。
むろん、このニュースは紀香も友子も知っていた。友子は未来の義体ではあるが未来の出来事に関するデータは入っていないので、他の人類と同じ程度の知識と興味しかない。
紀香のCPUには、この情報はあった。
『2020年、海王星付近の未確認連続小爆発』
これに該当するものだと思った。ならばなんの問題もない。
たった一週間ほどで、この現象は途絶え、むろん地球にはなんの影響もないのだから……。
先週の日曜は、父であり弟である一郎が、新製品のルージュ開発のツメのため休日出勤。義母の春奈と家中の片づけをやり、そのガラクタの中から出てきた友子の昔の写真で、友子が一郎の姉であり義体であることも春奈にバレてしまったが、春奈は、やはり娘として友子を扱ってくれている。一郎にはナイショである。
一週間後の今日は、一郎も春奈も、新製品のルージュの発表会に、それぞれ開発者、営業担当として休日出勤。従って、今日の友子はホームアロ-ンである。
今日はアキバにでも行って、紀香とAKBのメンバーにでも化けて遊んでみようかと思った。お気に入りのチュニックを取りだしたところで、緊急のメールが直接CPUに飛び込んできた。圧縮してあるが、広辞苑二冊分ぐらいの内容があった。そして最後の署名。
――SOS 乃木坂の宇宙人――
了解。そうメールを打つと、友子はテレポートした。アクティブかパッシブかは分からなかったが、かなり強引なテレポートであった。
気がつくと、そこは宇宙船の中だった。
地球上のものなら、初めての船の中でも、その全体を掌握し、自在にコントロールすることもできる。しかし、この宇宙船は、そういう点でセキュリティーがきついようで、見えている範囲のことしか分からず、見えていることも、その構造もスペックも分からなかった。
「ごめん、急に呼び出して」
宇宙人が友子と友子の背後に声を掛けた。ふりかえると、紀香があさっての方角を向いていたが、驚いて、こちらを見た。ここでは義体同士の相互認識力も人間並みに落ちている。
「あ、ごめん。セキュリティーをかけたままだったわね。一秒間だけ解除する。船に関する情報をインストールして」
頭が一瞬グラリとした。ハンパな情報量ではなかった。
「大丈夫紀香?」
「大丈夫、こんな情報量だとは思わなかったんで」
友子は、倒れている紀香に手を貸した。
「じゃ、ブリッジにいきましょう」
「あなた、マネって言うのね」
「あんまり好きな名前じゃないけど、一応、そう呼んで」
「あたしたち、この船コントロールできるようになっちゃったけど、いいの?」
「その必要があるから、そうしたの。さ、ここが……」
ブリッジには、もう一人のマネがいた。
「二人とも、そのマネから離れて、偽者だから!」
もう一人のマネの声に、友子も紀香もテレポートして離れ、ブリッジの両端に移動した。そして両目のスペシウム光線で、もう一人のマネのCPUを攻撃した。
「どうして、分かったの、完ぺきな義体だったのに……」
偽マネは、苦しい息の中で聞いた。二人は、それに答えず、トドメを刺した。
「ありがとう、助かったわ」
「この子のCPUには、パンケーキのレシピが欠けていたから」
「そうでなきゃ、偽者とは分からなかった」
「さっき、セキュリティーを解除したときに進入したのね」
「一秒で……?」
「船体に張り付いていたら、一秒あれば十分。右舷の装甲が破れて、シールドが効かなかったからでしょうね」
「処分するね……」
友子は、偽者の義体を船外十キロの位置まで、テレポさせると、舷側のパルスレーザー砲で破壊した。
原爆並のショックが襲ってきた。
「こっちの弾が当たる前に爆発した……自爆装置が付いていたのね」
紀香が、生体組織から冷や汗を流していた。
「やっぱり、あなたたちに来てもらって正解だったわ」
マネも、声を震わせて言った。その時左舷後方から一隻の宇宙戦艦が漂流してきた。
「宇宙戦艦ヤマト……!?」
「いいえ、あれは宇宙戦艦キイ。ヤマトの拡大発展系……昭二クンが乗っている」
ここが、もし海なら、キイは沈没寸前の姿であった……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます