2028 セントラル

 トイレから出たあと、ちょうど誰か部屋に入って来た。


「皆様、こんにちは、自分は…」


「ああ!昨日の怖い人だ!」


「怖い人…、昨日も言いましたな佐方様、自分はそんなに…怖い人なんでしょうか…」


 あ、しょんぼりした。


「こらさーちゃん!失礼なことをしちゃいけませんわ!」


「大丈夫です、佑芳様、では、今日は昨日の予定通り、皆様とご面会したい方の所へご案内させていただきます。」


「そう言えば昨日もいいましたね、えっと…」


「千月様、自分はセントラルと言います、今後お見知りおきを。」



 セントラル。


 黒人の男性だ、顔つきから推測すると、多分アメリカ人だろう、変な中国語で喋ってる。


 ハゲ、湧にいとまた違う意味で似合ってる。


 身長はヤバイ、200センチ以上だ、あとその精強な体格、バスケ選手か?


 一番変なのは、標準的なテールコートを着ている、つまり燕尾服だ、昼なのに?


 かなりの近眼らしい、度数が高い黒縁メガネをかけている。


 こいつもまた天上と違う種類の威圧感だ、丁寧な口調と非常に礼儀正しいなのに、多分身長と体格のせいだろう。



「ではセントラルさん、面会って、どなたでしょうか?」


「千月様、自分のことを呼び捨てで結構です、皆様とご面会したい方は、この嘉義と雲林の指導者兼総司令、大姫様という方です。」


 総司令!?いきなり大物が出てきた!


 姫?君主がいない完全民主制の国なのに、どこから姫が湧いてきたのか?しかも大姫?長女か、もしくは一番偉い意味か?


「指導者って…どうして私みたいな女の子を…?」


「天上様のご紹介です。」


「天上さんですか…それはまたどうして…?」


「自分もよくわかりませんが、あの方の眼鏡にかなう方はそうそういません。」


「そうですか…しかし…」


「もちろん、応じるかどうかは、千月様の裁量次第です。」


『千月、これはいいチャンスかもしれない、台湾の上位立場の人なら、いい情報も貰えるだろう。』


「……わかりました、案内をお願いします、しかし…」


「どうなさいましたか?千月様。」


「私はまだいいですが、この子達の格好では…」


「これは心配を及びません、大姫さまはかなり大まかな方でして、細かいことは気になりませんでしょう。」


 まあTシャツとワンピースだしな、偉い人と面会の場では確かに失礼だが、仕方ないか。



 #



「こちらになります。」


 あの超高級な部屋から出て、長い廊下を経たあと、長い螺旋階段を上がり、また長い廊下を経て、ある扉の前で止まった。


 妙だ、あの超高級な部屋以外、ここまでの構造は全部普通の石畳建造物だ、中世の城みたい、まさかここは何かの城塞か?通路全体の照明は壁にかけているたいまつのみ、まるで地下城だな、窓一つもないので、外の様子もみえない。


 その扉をあげると、こりゃまた高級そうな部屋だな、真ん中に低い円卓が置いている、その円卓は、円弧状のソファに囲んている、そして大きな円状のカーペットが敷いている。


「わーー!綺麗な寝台だ!」


 なぜか佐方が大興奮、入ったあとすぐソファの上に飛び込んた。


「もうさーちゃんったら、お行儀が悪いですわ。」


「こら!さーちゃん降りて、それは寝台ではなく、ソファっていう椅子なのよ、そんなに上でぴょんぴょんしたら壊れるわよ!」


「佐方様お元気ですね、では千月様、すみませんが、姫様の公務が終わるまでの間、ここでお待ちしてください、自分は外で待機します。」


「ありがとうございます、セントラル。」


 セントラルが出たあと、千月はソファに腰を下ろした。


 やっぱり綺麗な部屋だな、多分応接室だろう、中世の建造物なのに、家具と部品は全部現代のもの。


 それにしても応接室ですら窓口がないとは、一体なんの施設だろうか?

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