1017 廃墟

 この1週間、結構楽しかった。


 それから、佐方と佑芳は、毎日も遊んで来た、もちろん湧にいも一緒だ。


 他愛のない世間話か、あの子達の超能力を見せてくれるのか、食事も結構豪華だ…キビナゴ以外にな、あと湧にいとの脱走計画の相談など、色々あった。


 一番重要なのは、何故かあの子達、出会った翌日、いきなり千月と一緒にいくと決めた、早すぎるだろう、訳がわからん。


 そして今日は、入院後初めて、この病室から出ることができた。


「足はまだ痛い?」


「大丈夫ですよ先生、痛みはもう感じません。」


「そうか、その回復力では、リハビリもいらないでしょう、今日はちょっとこの辺で歩いてみようか。」


「はい。」


 やっとこの扉から出た、この病室は…長い廊下の突き当りか、道理で不自然に静かだな。


「こっちが広間よ。」


「……わー……」


 この建物の広間だな、かなり広い…っていうかこれ、デパートメントストアじゃないか?百貨店の中に、病院!?


「お店がいっぱいいますね!」


「ええ、この建物はね、20年前では廃ビルなの、元々は百貨店の予定だが、何かの権利問題で、完成したあとそのまま放置された、結局この辺りの高層ビルでは、ここだけがほぼ被害がなかった、今はこの辺りの村全てのオフィスと各種類の店も、ここに詰まってるのよ、病院は1階の半分だけね。」


 なるほどな、つまり、集会場みたいな所だ。


 それにしても、すごく異質な空間だ、現代の綺麗な建物、ここにいる人の服装も現代のもの、だが照明は全部たいまつと高級そうなキャンドルスタンド、現代と中世の混ざり合いだ。


 今は昼間だから人が多いので問題ないが、深夜だったら、幽霊屋敷か悪魔城みたいな空間になるだろうな。


「服の店もあるの?」


「もちろんあるよ、しかしあなた、お金はないでしょう?」


「あ、ありますよ…あっ、鞄忘れた、病室に置いていった。」


「ねえ、もしかしてリュックの中に置いた、新台湾ドル?」


「え、ええ…やはり、調べられたのですね。」


「ごめんなさいね、必要な処置なの、しかしあれ、使えないわよ?」


「え?なんで?」


「もう使われていない通貨だからね、隔離後は酷い通貨膨張が起きたの、近年ようやく新しい通貨形態が作り上げたのよ。」


 インフレーションか、言われてみれば当たり前のことだな。


「そうですか、つまり私は本当に、無一文…」


「大丈夫よ、服は買えないけど、他に必要なものは湧にいが何とかしてあげるでしょう。」


「はい…しかし変ですね、ここのみんなは先生の話より、穏やかに生活しているらしいですが、何故か…暗い顔をしてる人が多いですね。」


「……そうね、じゃあ、いい場所に連れてってあげるよ、丁度いいリハビリにもなるわよ。」



 ……この医者さん、わざとやってるんじゃないだろうな?


「せ、先生…私、もう…だめですぅー。」


「やはりまだ完治してないようね、頑張って、あと1階だけよ。」


 あと1階…つまり、屋上は23階か、電気がない世界の不便さを思い知ったわい。


 この医者さん、一気に23階の階段を登っても汗一つない、ただものじゃないぞ?


 うちはもう、駄目だ。


「着いたわよ。」


 医者さんは屋上のドアを開いた瞬間、強烈な光が差した。


「わー、高い!」


 なるほど、午後4時か、屋上の出入口は西に向いているから、この時間は丁度陽射しが正面から来るんだ。


「へえー、あれがあなた達の村ですね。」


「ええ、まだ小さいけど、この白沙では、ここはもう一番発展した村よ。」


 ああ、確かにいい村だ、木製建物が多いからか、のどかな雰囲気だ、中国の清朝時期の街道と彷彿するな、点在しているコンクリートの建物がイレギュラーだけど。


 立地的にも結構いいな、このビルが起点として、森を中央から切り開き、北西方向の海岸まで伸びた、森と海に囲まれ、まるで大自然と一緒に生きているのように。


「しかし千月さん、あなたに見せてもらいたいのは、こっちじゃないわよ。」


 医者さんは千月の手を引いて、反対側へ行った。


 そこで見たのは、言葉も失う程の、衝撃的な光景だ。



「……っ!」


 そこにいるのは、広大な廃墟だった。


 廃墟全体は蔓に絡まれて、緑溢れるように見えるが、生気は一切感じなかった。


 話は結構聞いたが、実際に目の当たりに見ると、感触は全然違う。


 高い建物はほぼ倒壊し、廃墟全体は至る所まで穴だらけ、あのビーム、一体どうやってここまでの事をできるんだ?


 うちと関係のない事なのに、何故か、とてつもない切なさと、痛みを感じた。


「ここはね、昔は通樑っという所よ、私達の村の名前も、ここから引き継いたものよ。」


「…………」


「ここはまだいいのよ、もっと発展している都は、一体どんな光景なのか、澎湖から出たことない私には想像もできない。」


「…………」


「千月さん、これで、わかったかしら?私達の生活は確かに一定の水準に戻ったわ、ならどうしてみんなは、まだあんなに苦しんた顔をしているのか。」


「…………」


「もちろん戦争と略奪の危機、あと文明生活に慣れた人々は、いきなり原始生活に戻ったのも理由の一つだけど…」


「…………」


「あの地獄のような光景、世界の終わりのような惨事は、もしかして明日はもう一度起きるかもしれない恐怖こそが、一番の理由よ。」


 ……なんてことだ、一体どうして、どうして氷人は、うちの同胞は、こんな酷い事をするのか?


「……先生、一体、どれくらいの人が…死んたの?」


「さあ?こんな辺境では参考にはならないかもしれないけど、私は20年前、まだ馬公に住んている時聞いた話では、あのビームの後、約三分の一の人が死んたわ。」


 ……三分の一、ここでも三分の一の死者が出たのか、だったらもっと人口密度が高い都市では、死者がもっと多いはずだ。


「思いの外死者が少ないっていったよね、三分の一以上も死んたよ、どうしてそんなことを言えるの?」


「……千月さん、あなたは記憶喪失って言ったわね、実は私も半信半疑だけど、この廃墟を見せた後のあなたの反応は、もう信じざるを得ないわね、いえ、忘れたって言うより、寧ろ、最初から知らないって感じがするわ。」


 ……この医者さん、結構鋭いな。


「あのビームはね、実は曲がれるのよ、直線だけではなく、全方向から撃ってこれるのよ、さらに一発一発ではなく、いっぱいのビームが同時に撃ってくるの、想像してみようか、あのビームは、まるで雨のように、無数の光の筋は、天から降り注ぐ光景を。」


 なん…だと…?


「……魔法……」


 こんなの、ありえるのか?こんなの、本当に科学の産物なのか?


 もううちですらも、これはなんの魔法か!って、叫びたくなるんだぞ、非現実的にも程があるだろうが!


「あんなの実際に見たら、例え死者は9割まで行っても少ないくらいよ、全滅でもおかしくないのよ。」


 文明だけが破壊し、生き物を生かせる、こんな面倒なことをして一体どうするつもりだ?安住の地を作るつもりなら、最初から台湾の地球人を殺し尽くせばいいものを…全然わからん。

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