イブ・メモワールー隔離された台湾ー

アニキ

0001 初めての戦争

 生命は道を探し出す、いい言葉だ。


 いのちの意味は繁殖伝承、それも間違いないと思う。


 なぜなら、それは私達がいま直面した問題、つまり生命の存続だ。


 私達のいのちはどこから来て、どんな形だったとしても、私達は確かに生きている。


 例え私達のいのちはもう風前の灯火になっても、私達はそれでも精一杯生き延びたいと思ってる。



 #



 うちはいま、超機嫌が悪い。


 呆れ半分、怒り半分と、僅かな自暴自棄。


 なぜって?それは、うちの“宿主”は、また勝手に暴走したからだ。



「状況は?」


「芳しくないな、千月さん。」


 朝6時。


 千月は、つまりうちの“宿主”は今、ここの城主と戦況確認をしている。


 黒くて艷やかな、腰までのストレートロング、日本人と台湾人のハーフらしい。


 OLの仕事着みたいな、淡い青のコートと同じ色のミニスカート、そして白いシャツ。


 背は低い、155センチくらい、女性としても小柄。


 美人ではないが、ざっと見れば結構可愛らしい、しかし、そのバストのせいで全部台無しになった。


 宿主っといったけど、うちは寄生虫じゃないぞ?


「千月、後は君の手腕次第だ、必要だったら、我も使え。」


 この人は、天上っという、変な名前の日本人、口数は少ない、超渋い中年の男性、この戦争を強引にうちらに巻き込んた張本人。


 普通の太刀より長い日本刀を持ち、とんでもない強さを持っているらしいが、まだよくわからない。


「天上さん、ありがとう、さーちゃんとゆうちゃん、準備は?」


「いつでも行けるぜ!」


「準備完了ですわ、千月お姉様。」


 この子達は、佐方と佑芳という、双子の台湾人の子供、千月に妙に親しい、しかも千月の言うことは何でも聞く。


「よし!じゃあ城主さん、いまから全軍、私の指揮に従ってもらうね!」


 そして、戦いは始まった。



 うちらは今、台湾雲林の西螺城に居る。


 ここに居る理由は、思い出す度に腹が立つ。


 千月のやつ、勝手に依頼を引き受けたせいで、また危険な場所に飛び込んだ。


 このままだと、千月の“任務”と、うちの“目的”も、いつ達成できるのか、わからなくなった。



「わー、向こうは一体何人いるの?」


「情報によると、向こうの先鋒部隊は3万人くらい、さっきの接戦でどれくらい減ったかわからないが。」


「こっちは?」


「残っているのは3千くらいかと…」


 こりゃまた…うちらが来なかったら、籠城しても数日が持たないだろうな。


 道理で天上はうちらに救援を申し込た。


「例の人は?」


「ここ数日の戦いを見て、多分1人しかない、その人は指揮官も兼任してるらしい。」


「敵の配置は?」


「今は小休止してる所だ、敵は本陣周辺に散開し、止まってる、こっちは廃墟の中で防御工作と部隊の再編を行っている最中だ。」


 敵本陣は廃墟北の川にいるようだ、ここより約2kmくらいの距離がある、この監視塔の頂上だと僅かに見える。


「…では、まずは数を減らそうか。」


 千月は監視塔の塀の上に飛び込み、部隊の配置を一望する。


 『てめえ!死ぬ気か!?危ねえじゃねーか!』


 結構厚い塀だ、足場としては十分だが、ここは50階層くらいの高さがあるぞ!?


「いーちゃん、もうその可愛い女の子の声で乱暴な言葉を私の頭の中に響くのはやめでよね、緊張感なくなっちゃう。」


 いーちゃんいーちゃんって、うちのことを変な渾名を付きおって…。


 それに乱暴なのはおまえだ!!


「城主さん、まず全軍を引き上げ、私の指定位置に待機してね。」


「…はあ?なんで?」


「いいから命令を。」


「…わかった。」



 1時間後、雲林守備軍の全軍約3千は、3部隊に分け、それぞれ敵本陣から距離を取り、定位置に待機した。


 適当な編成だ、千月のやつ何考えてるんだ?


「よし、さーちゃん、仕事の時間よ。」


「しかしねえちゃん、そんなことしたら、僕もゆうちゃんみたいに寝ちゃうよ?」


「一発でいいわ、後は私に任せてね。」


「わかった、やってやる!ゆうちゃん行くぜ!」


「了解ですわ!」


 そして、佐方は飛んだ。


 超高速で飛ぶ佐方は、あっという間に敵の本陣に到着、そして…。



 それは、一瞬の出来事だった。


 敵本陣の真上、約200メートルの上空から突如に、小さな隕石が現した。



『なんだあれは!?』


「いーちゃん、ツッコミは後にして。」


 とんでもない事をしやがる!


 隕石と言ったが、ただの石ごろだろう、しかしその大きさは約1kmの直径があり、バカにならない質量になるぞ。


 落下した巨大な石ごろは、敵本陣の真ん中に激突、大きな地震と共に、激しい砂塵も起こった。


「な、なにが起こった…?」


 城主さんビックリ、うちもビックリ。


「どうやら、我の出る幕はないようだ。」


 天上は…なんか微妙に笑ってる?無表情だけど。


「ゆうちゃん今よ!」


「はいですわ!」


 時間切れか、失神か、とにかく佐方は墜落し始めた。


 しかしその瞬間、佐方の下にいる空間は、小さな穴を空き、佐方はその穴の中に落ちた瞬間、まるでその穴に飲み込まれたように消え、佑芳の目の前に落ちて、そのまま寝込んた。


 そして、巨大な石ごろは消え、砂塵もどんどん薄く、そこには、小さなグレーターが出来た。


 高度が低くてよかった、もっと高い所から落ちたら、グレーターだけでは済まないだろう。



 たったの数分で、敵本陣は壊滅した。


 一体、何千人が死んたか…。


 千月のやつ、また普段と真逆な、凶暴で残虐な性格に切り替わった。


「千月さん!何が起こるかわからないが、今は好機!全軍突撃を…」


「城主さん待って、これはただの脅し、本陣の数千人だけ減らしても、何の解決にもならないわ。」


「…まさか、まさかこれ程の事をやって、ただ向こうの…正体不明の指揮官を引っ張り出すためだけに…?」


 そうか!こっちの不利を一気に覆す方法、それは…


「そうよ、まずこちらの実力を見せてやる、それを見たら、こっちには普通の能力者と普通の兵隊さんじゃ太刀打ちできない超能力者が居るってことは、向こうもわかったでしょう?だったら敵に残された道は二つしかないわ。」


「一つは…撤退…」


「そう、もう一つは…フフ…」


 それは、一騎打ちだ!



 “また”とんでもない戦術をしやがった。


 実際、敵は数の暴力で殴り込んて来たら、一巻の終わりだ、3万人も相手をするなんてできるはずがない。


 しかしこんなとんでもないものを見たら、高い恫喝効果が出るはず、だったら敵はまず動けないだろう、つまり大軍を足止めができ、向こうの超能力者のみを誘い出し、一騎打ちの状況を作り出す。


「フフフ…はーーはっはっは!さあ!出て於いて!」



「台湾の超能力者達よ!!」



 そう、原理はわからないが、今の台湾には、大量の超能力者が発生した。


 そしてうちらは、とある理由で台湾に来き、望まない戦争に巻き込まれた。

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