第15話 言ってみただけだ
どれくらいの間、二人と話していないだろう。
夕陽を一人で見るようになったのはいつからだろう。
夕陽を見ながら話している二人の間に入りたい。
また三人で夕陽を見ながらはしゃぎたい。
…最近ふと考えてしまうことがある。
私たち三人は空白の期間はあれど常に一緒だと思っていた。
でも本当は、初めから二人と一人だったんじゃないかって。
そんなことを考えながら、私は一人昼食をとっていた。
ぼーっとしていたからか、スマホの着信を知らせる音にも少し気づくのが遅れた。
また通販サイトのメルマガか何かかと思いながら画面を見た私は、そこにあった名前に少し固まってしまうのだった。
「…快人?」
***
幸か不幸か、今日は一週間に一度ある少し早めに学校が終わる日。
いつもなら夕陽を見るためだけに待つのはめんどくさいということで直帰するのだが今日は事情が違う。
僕はいつもの公園で一人、呼び出した人物が来るのを待っていた。
「はぁ…」
本当に上手くいくのだろうか。
もしかしたら、僕の考えなんててんで的外れかもしれない。
ただ恥をかいて終わりかもしれない。
でも、大事な人が困っているなら助けてあげたい。
それが自分のせいならなおさらだ。
待ち人はまだ来ない。
僕は頭の中で理久と考えた答えと作戦について考えていた。
***
「あん?兄貴のミサンガ…。そういや…いや待て。確かあの時に…」
「理久?」
「あぁちょっと待て。…思い出した。兄貴あんときにあいつに渡したんだよ。お守り代わりだとかなんとか言って」
「あの時って?」
「優姫だよ優姫。引っ越す前の日くらいにすっげー悲しそうな顔してたのを見かねて、兄貴が渡したんだ」
「…あぁっ、そうだ。思い出した!」
そう、そうだ。
どうして今まで忘れていたんだろう。
あの時、優姫が引っ越しするって話を聞いた時、優姫はすごい悲しそうな顔をしていた。
元気づけるためにあの時の僕は友情の証だのなんだの言って理久とお揃いのミサンガを優姫に手渡した。
この写真はその後に撮ったものだ。
写真の中の優姫は涙を流してはいるけれど笑顔で、その両隣に僕たちがいる。
そして優姫は大事そうにそのミサンガを持っている。
この写真はそういうことなんだ。
そして、写真とセットでアルバムに入っている《これ》はあの時に優姫から貰ったものだ。
「なーるほどな。俺も思い出したわ。…で、これを見て兄貴はなんかわかったか?」
「うん…。多分だけどこれ、優姫にとってすっごく大切なんじゃないかな」
「だろうな」
「だからきっと……。多分……なんじゃないかな」
僕は今思っていることを理久に一通り話した。
「大体わかった。だったら作戦を立てよう。どうやってあいつを救い出してやるかのさ」
「救い出すって…。そんな大げさな物じゃない。僕はただ優姫のことが心配で」
「本当にそれだけか?」
「え?」
「…いや、わからないなら今はいい。その答えも合わせて見つけて来い。麗しの姫君を助けるのは王子様の役目だろ?」
「あはは…。なんだよそれ?」
「言ってみただけだ」
そう言って僕たちは笑いあった。
今はここにいないもう一人のために作戦を考えながら。
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