第10話 凄い顔してるけど
そうなんだ、引っ越しするんだ。
…うん。だからもう少しで一緒には遊べなくなっちゃうの。
寂しくなるね。
…うん。
そうだ。これ、あげるよ。
え?これって二人がいつも持ってる大切な物だって…。
いいんだよ、友達の証だ。
そうだ、再会の約束もしよう!
また三人で一緒に遊べるようにっていう約束だ!
それは…うん、いいね。すごくいい。
忘れないでね。これからもずっと……。
***
「…」
また夢を見ていた。
今のはいつの夢だっただろう。
確か、そう。昔優姫と最後に遊んだ日で、それで…。
…ダメだ。思い出せない。
「…なんだっけな」
***
「そういや二人とも。休み明けのテストは平気?」
GW前のある日の昼休み、僕は二人に何気なくそんな話題を口にした。
「…あ」「え?」
「あそっか、優姫は知らないんだっけ。この学校休み明けにテストあるんだよ」
「へーそうなんだ…。ってどうしたの理久。もの凄い顔してる」
「あはは…。そのテストで赤点取るとすっごいめんどくさいんだよ。主に補習なり課題なりが、ね。ていうか理久。言ってて思い出したけど僕また手伝うの嫌だよ?」
「わ、わーってるよ。兄貴に面倒はかけねー…。大丈夫大丈夫。俺ならやれる俺ならやれる…」
「快人快人、理久が壊れた」
「一応僕が勉強見てるんだけどなぁ…どうも要領が悪いというかなんというか…
」
「ていうか!おめーはどうなんだ!なんか嘲笑ってるけどよ!」
「私?普通だけど?」
「何にも伝わらない情報ありがとよ!」
***
「ねぇ快人。理久大丈夫?この前以上に凄い顔してるけど」
テスト当日。
一応勉強はそれなりに見てあげたから大丈夫だと思いたいんだけどなぁ…。
「大丈夫大丈夫、俺ならやれる俺ならやれる…」
ぶつぶつと呪文のように唱えながら理久は手元にある《それ》を
握っていた。
「あれ?理久それ…?」
「あぁこれか?昔から何かしら神頼みするときはこれに祈ってるんだよ。意外と効くんだこれが」
「………」
「優姫?」
その言葉を聞いた優姫の表情が何かに怯えるような表情に変わった。
「わ、私、席戻るね…」
「?うん…」
そう言い残して優姫は自分の席に戻ってノートを広げた。
「あん?あいつどうした?急に自信なくなったのか?」
「…さぁ?」
結局優姫のその表情の真意はわからぬまま、テストは終わりを迎えた。
ちなみに後日、結果を見て理久が大喜びしたのはまた別の話である。
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