第98話樹の精霊ドリュアスさん達が出現しました


 『だから、ママ、たっくさんソルス・エル・ピーシェの熟れた果実を食べて、あの子達を起こしてあげてね』


 コウちゃんの言葉に、私はにっこりと笑って頷く


 「うん、そうするわ。食べることを許されている限り、ソルス・エル・ピーシェを食べられるだけ食べて、魔力や体力をマックスまであげるわ……」


 消える実がもったいないと思っている私の気持ちを配慮して、ガッちゃんがにこにこしながら言う。


 『主さま、あの子を起こした時に、実が残っていたら僕も食べますから、気にしないでください』

 

 『そうだよ、ママ。今日食べ損ねたら、あっちのダンジョンに行って帰って来た時に、また食べれば良いんだから………』


 本当は採取を許されるのは、冒険者それに類する者達だけだし………。

 数だって、1人3個が限界なんだけどねえ………。

 今はほとんど誰も食べれないし採取できないんだから、インベントリに保管できるならするべきよね。

 そう思った私は、コクッと頷いて言う。


 「そうね…だったら、熟したソレス・エル・ピーシェは、とにかく全部収穫しようね。かなりの量があるし、この村の周囲をぐるりと回るから、かなり大変そうだけど………採取してみて、消えないようなら、インベントリに保管するし、食べられるだけ食べるわ」


 私の宣言に、コウちゃんがくすくすと笑いながら言う。


 『だったらママ、樹木の精霊、ドリュアス達に収穫を依頼すれば良いんだよぉ~………』


 「えっ? そんなコトを頼んでも良いの? って言うか、ココに居るの?」


 『はい、主さまをジッと見ていますから………』


 『うん、この村に近寄った時から、ジッと見ていたから大丈夫だよ。ママのお願いを聞きたくて、ジタバタしているから………』


 『確かに、誰が主さまの前に出るかで、小さな喧嘩しているぐらいですから………』


 「えっ? どうして?」


 『ドリュアス達も、ママの歌を聞きたいし、ママの目にとまりたいからだよぉ~………』


 「えっとぉ~…歌なら、さっき聞いていたでしょう? ってか、私の目にとまる?」


 小首を傾げた私に、コウちゃんが諭すように言う。


 『さっきは、シルフィード達の為に歌っていたでしょ。ドリュアスも、自分達の為に歌って欲しいって思っているんだよ』


 『主さまの目にとまって、できれば名前をもらって、ついて歩きたいっていうのが本音でしょうね』


 えっとぉ……名前をもらってついてあるく? って…そんなコトして良いの?

 いや、確かに、精霊を使役している者がいるのは知っていますけどねぇ………。

 というか、なんで私についてきたいの?


 意味がいまいち理解できない私は、うにうにと首を傾げながら、たわわに果実を実らせているソレス・エル・ピーシェの大樹へと視線を向ける。


 あっ…確かに、そこここのソレス・エル・ピーシェの大樹に居るわね。

 アレが、樹の精霊ドリュアスなのね。

 透き通る翠の髪に褐色の肌が多いわねぇ………。

 いや、遠目だから、詳細にまでは見えないけど………瞳はどんな色なのかな?


 じゃなくて、コウちゃんやガッちゃんの言動から考えて、樹の精霊ドリュアスは私に好意的みたいだから………。

 このさい、ちょっとのズルは良いよね。

 ソレス・エル・ピーシェの大樹の果実を採ることを、樹の精霊ドリュアスさん達にお願いしちゃいましょう。


 「えぇ~とぉ~…そこここにいる、樹の精霊ドリュアスさん達、良かったら採って欲しいんだけど、お願いできるかしら?」


 そう言った私の前に、一瞬でたくさんの 樹の精霊ドリュアスさん達が現われ、その手にたくさんの果実を持っていた。


 えっとぉ~……もしかして、もう熟れたの採取していてくれたのかな?

 嬉しいからお礼を言いましょう。


 「ありがとう、樹の精霊ドリュアスさん達」


 私の言葉に、 樹の精霊ドリュアスさん達はモジモジする。

 その中の1人が代表して一歩前に出て言う。


 『私達にも、歌を歌ってください。そして、誰でも良いです。1人だけでも、お供に連れて行って下さい』


 えっとぉ~………コウちゃん、ガッちゃん、どうしたら良いの?


 思わず、そんなことを考えて、私は2人へと視線を流した。









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