第95話とりあえず、物々交換をします
前世、RPG【黄昏の解放】を遊んでいる時には、そんな話しなんて無かったんだけど………。
ここがゲームに似た世界っていうだけで、そのままじゃ無いって、理性ではわかっていても感性はいまひとつ受け入れられないわね。
食料や水筒はありがたくいただくけど、おじさんの用意する剣も防具もいらないわね。
どうやって断ろうかしら?
もらっても、売り払うのも面倒だし………困ったわ。
防具は、天使シリーズを着てるし………。
武器は、死薔薇の鞭を持ってるから………。
でも、好意をいりませんなんても言えないしねぇ………。
う~ん、そこまで、レアじゃない装備って………。
あっそうだ…私が最初にRPG【黄昏の解放】で身に着けた、素早さと物理防御が上がるホーンラットシリーズを身に着けているって言えば良いね。
どうせ、認識阻害されているから、見極めるなんて出来ないだろうし………。
武器は、当たれば一時的に魔物を麻痺させるグリーンビーの鞭を持ってるって言えば良いかしらね。
ゲームでもここでも、SSS級、SS級、S級、AAA級、AA級、A級、BBB級、BB級、B級、C級、D級、E級、F級、G級、H級、I級、J級、K級、L級、M級って感じだったわね。
きりの良い20階級になっていたわ。
ホーンラットシリーズとグリーンビーの鞭は、I級で手に入れたから無難よね。
意識阻害のレベルを、コウちゃんに今よりもちょっと上げてもらって、私がホーンラットシリーズを身に付けているって、思い込ませれば良いわね。
あとは、ただ食料とかを貰うだけじゃ、私の良心が痛いから、地駆鳥のお肉と交換とかって言えば良いわね。
色々と思考していた私の前に、荷物を大量載せたワゴンを押しておじさんがやって来た。
私は慌てて小声でコウちゃんにお願いすると、コウちゃんはコクンと頷いてくれた。
その瞬間に、認識阻害のレベルが少し上昇する。
とはいっても、私にはその差はわからなかったけど………。
おじさんは、荷車を引いてきていた。
その上に並んでいるモノを指差して言う。
「防具とマント、それに剣だ。こっちは食料と水筒、敷物と毛布だ。これをやるから、村から出て行ってくれ」
「あの私は、冒険者登録をしていないだけで、魔物は倒していましたし、防具はホーンラットシリーズを身に付けています。それに、武器はグリーンビーの鞭とサンダーニードルラットの剣を持っています」
「ほぉ~I級かH級の実力があるのかい。だったら、インベントリも持っているね」
「ええ、インベントリは、父が買ってくれましたので、かなりの容量があります。地駆鳥を採ってますから、それと交換で………」
「だったら、野菜や果物、乳やバター、生クリームやヨーグルト、パンや焼き菓子なんかもどうだい? もちろん、最初に言ったチーズや木の実、干し肉や干した果物の保存食もあるぞ」
その声から、不運持ちはゴメンだが、冒険者が来ないので、獲物は欲しいという本音が透けていました。
私も、冒険者登録できないので、ここにはもう用はないので、ありがたく物々交換に頷く。
だって、普通の食料なんてひとつも無かったから………。
ドレスに入れていた保存食は綺麗さっぱりと食べちゃったしね。
それにぃ~………ミルクにチーズ…生クリームもあるのね。
ああ、チーズホンデュが食べたいわぁ~………。
生クリームたっぷりのイチゴショートとか………ああ、早く交換したいわ。
幸い、インベントリ持ちって言ってあるから、交換できるだけ交換したいわ。
「嬉しいです。じぁ交換しましょう」
嬉々として答える私に、おじさんはハッとした表情になって言う。
「ちょっと待ってくれ。みんなに声をかけるよ。蜂蜜や色々なジャムも……」
おじさんが村の人に声を掛けてくれたので、私の前に小さな市場が出来ていた。
きっと、自分だけが私(外から来た冒険者)と、物々交換して、良い思いしたと言われたくなくてでしょう。
私は、地駆鳥の肉やホーンラットの肉、色々なキノコ、一般的な薬草や香草をインベントリから取り出して、用意されていた台の上に並べた。
おじさん達は、私の前で、お肉を切り分けては、対価としての野菜や果物、チーズやバター、ワインやビールなどを置いていった。
お金で支払う人は居なかったが、冒険者が来ないのでは現金を手に入れられないと思ったので何も言わなかった。
いや、おじさんが取り仕切ってくれていて、ある意味幸いです。
お金はありませんし、こちらでのレートが全然判らないのですから………。
そうだわ、お金のレート………冒険者としての知識が足りない。
ここは………前世の日本人としては、忌避したいけど………奴隷を買うしかないわね。
だって、ここは、水と安全はタダの日本じゃない、安全はお金で買うしかないんだモノ。
隷属の契約で縛られた者なら、裏切られる心配も無いから安全よね………たぶん。
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