第14話014★子虎もどきちゃんに名前が付きました
私が口にした名前を聞いた子虎ちゃんは、最後の
「ふにぁぁ~ん」
『
名前が決まったセイなのか、子虎もどきちゃん改め、
その声は、とても透き通った少年の声で、ちょっとうっとり聞いてしてしまいました。
「そう、それじゃ今日から
貴方のことは、普段は
コウちゃんって呼ぶわね
【真名】扱いで
内緒のお名前よ
世間には悪い人が
いっぱいいるから
コウちゃんみたいな
可愛い子は狙われちゃうの
だから本当のお名前は
隠すのよ、良い判った?」
『うん、わかった…
内緒の名前な……
えへへぇぇぇ~……
俺の新しい名前…
コウかぁ…嬉しいっ…』
私の言葉に、
いやぁぁ~ん…コウちゃんて可愛いわぁ~
……ハッ…じゃなくて………
本当に、まるで虎の子供のような姿なのに、中身は子猫という最高に可愛いコウちゃんにクラクラしつつも、ハッとする。
「でね、コウちゃん
ここから安全に脱出する
方法ってあるかな?
さっきも言ったように
ここには私の意志で
来た訳じゃないから
見ての通り武器も防具も
何も持っていないのよ
あるのは、テーブルの上に
ある非常食だけなの………」
私の言葉を聞いていたコウちゃんは、ハッとしてテーブルを振り返る。
その姿に、私はあることに気付いてコウちゃんに聞く。
「もしかして
お腹が空いているの?
もし、その非常食が
食べれるなら
食べて良いわよ……
っていうか
一緒に食べようか……
私も、またお腹が
空いてきちゃったし……」
本当に、シルビアーナの身体ってすっごく効率が悪いわぁ……はぁ~………
こう一日に何回も空腹になって食べなければならないなんて大変よぉ………
前世の女性暗殺者なんてどう記憶をさぐっても
容姿は確かに平凡だったけど体型は綺麗な姿をしていたわよねぇ……
いや、その代わりにとんでもなく過酷な
ろくでもない生活をしていたのもたしかな事実だけど………
前世の記憶を思い出した私は、ちょっと現在の自分の自重を知らない胃袋と体型に内心で溜め息を吐きながらも、どうやらお腹が空いているらしいコウちゃんをテーブルの上にチョコンッと乗せて上げる。
「コウちゃん、この中に
とりあえず、貴方が
食べれそうなモノは
あるかしら?」
テーブルに置かれたコウちゃんは、並べられた非常食の群れを見て、干し肉を手でチョイッと引っ張り、カプッと噛り付いた。
その姿は、まさに子猫そのモノで、その可愛らしさに、私はきゅんきゅんしてしまった。
あぁ~…コウちゃん…なんて可愛いのぉ~まるで子猫のようで……
あうぅぅ~…興奮しすぎて、鼻血が出てしまいそうですわ
スカートの中にいっぱい非常食を持って来て良かったわぁぁ~……
テーブルの上で、子猫のように微かに唸りながら、干し肉をせっせと食べるコウちゃんの姿に、私は小首を傾げる。
勿論、私も再び干した果物を口に入れ、ゆっくりと咀嚼する。
こんなに、お腹が空いているってことは
コウちゃんもここに閉じ込められて居たってことかしら?
それとも、どこかに抜け道があって
コウちゃんは、この部屋に別のところから逃げて来たのかしら?
どう見ても幼い固体よねぇ………
たぶん魔物の類だとは思うけど………
いや、ちょっと待って…コウちゃんが魔物っていうのは早計かも知れないわよ
ここは、創造主の女神の最初の神子が封じられた場所でしょ………
だとしたら同時期に巻き込まれで封印されちゃった子って可能性もあるわよね
って、いやそうなると怖い答えに進んでしまうわ
でも、でもよ、思考の逃避は不味いわよね
もし、本当にそうだとしたら狂った神子の封印が弱っていることにならない?
正気を失い、狂気の中にいる神子が施された封印を破って出てくる前に
コウちゃんを抱っこしてどうにかここから脱出しないと……
そんなことを考えつつ、私は空腹感を満たす為に、干した果物を咀嚼し続ける。
テーブルに乗せられたコウちゃんも、可愛らしい声でグルグルと唸りながら、次々と干し肉を食べていく。
水分が無いことがちょっとつらいわねぇ~…
なんてことを考えながら、干した果物を咀嚼し終えて飲み込むと同時に、スゥーと意識が再び暗闇へと引き摺られるのを感じた。
その時には、再び意識を失い、寝落ちしていたらしい。
と、いうのは再び寝落ちから目覚めた時に感じた感想だった。
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