第10話010★前世の記憶の3人目は男性?


 記憶をたどると、確かに男性ね。

 この前世も、日本という国に生まれ人のようね。

 でもって、市役所の職員でありながら、自衛隊員もしていた?


 ………これは、陸自の予備役かしらね?

 そう、たぶん陸上自衛隊の予備役で事務方に所属していた………。

 年齢は大晦日もまじかな、見た目は良いのに限りなく残念なオタク系の男性だったようね。


 そこに思考がたどり着いた瞬間に、私は自分が胸を撃たれた時の記憶を思い出したのだった。


 胸に受けた重い衝撃と、灼熱の熱さと激痛に襲われ、息の苦しさが鮮明に思い浮かぶ中で、どうしてそうなったかを思い起こす。


 ある日、私が勤める市役所に現地派遣の召集の連絡が入ったことが始まりだったわね。

 色々な言語を習得し、日常会話の細かいことまで喋れる私は、陸自の事務方の予備役に入っていた為に、招集がかかったのよねぇ………。


 私は現地との調整役として、戦地からかなり離れた安全地帯ということもあり、派遣要請を受け入れたわ。

 そうよ、男性だった私は、市役所の職員でありながら、予備役の自衛隊員の1人でもあったから………。


 苗字の方は綺麗に忘れてしまったけど、名前は『アキラ』という名前だったはずよ、たぶん間違いないわね。

 ごたぶんに漏れずのオタクだったし………。

 武器オタでゲームオタ、そして遺跡オタだったのよねぇ………。


 好奇心がとても強くて、有給の多い市役所職員をしながら、自衛隊の予備役(こちらも、所属しているとある程度のお給料がもらえた為)にも入っていたわ。

 (※注 自衛隊や市役所の業務形態の実際とは関係ありません。そういう設定を作っただけですので、お間違えのないようにお願いします。作者より)


 確か、素直に予備役の現地派遣に応じたのって、戦闘区域からかなり外れた場所での現地人との交渉だったからよねぇ………。

 そう、戦闘に巻き込まれる心配がない場所ということで………。

 そして、なにより、危険が少ないということで、現地での自由時間がきちんと約束されていたことが、召集に応じた理由として大きかったわね。


 そう、だってあそこには、一般人の旅行者には絶対に入れない、貴重な古代で未研究の遺跡があったから………。

 当時は、まだあそこにある古代遺跡は、それほど破壊されていなかったのよねぇ………。


 自由時間に、古代遺跡を訪れて………。

 その内観には見たコトもない、幻獣らしい壁画がたくさんあったわねぇ………。


 そうそう、今思い出したんだけど、遺跡の中でソフトボールぐらいのオーパーツらしきモノを拾ったのよねぇ………。


 まるでスノーボールのようなモノで、中身がキラキラしていて、陽に翳したら中の幻獣らしいモノが蠢くように見えて………。

 そう…アレは……タテガミと複数の翼を持つ虎のような幻獣だったわねぇ………。


 綺麗だっ…と思って、そのまま遺跡から持ち出したけど………。

 当時は、遺跡の中で宗教的な意味や、歴史的意味で価値のありそうなモノを見付けて、とても興奮していて判らなかったけど………。


 今考えると、あの場所って、遺跡の中の祭壇だったのかも…なんてね……あれ?

 えっとぉぉ~…あのスノーボールもどきって、もしかして、御神体だったのかな?

 持ち出したから、呪われて撃たれちゃったとか………。


 いや、それはないない………呪いなんて………。


 撃たれたのも偶然で、私の運が悪がっただけだから………。


 ああ…でも…あの時のウイングタイガーもどきが入っているように見えた、スノーボールのような水晶珠は、私が撃たれた時に割れてしまったのかしら?

 その時の明確な記憶がないことが悔やまれるわ。


 アレは、とても神秘的で綺麗なモノだったから………。

 でも、あの古代遺跡の御神体だったら、あそこから持ち出して悪かったかもしれないわねぇ………。


 あのまま、遺跡の祭壇?に安置されていた方が、あのスノーボールのような水晶球には良かったのかしら?


 陽に翳すと、まるで翼が羽ばたくように見えた、シルバーウンイグタイガーの幻影を思い出して、私はしばしの至福感に浸る。


 「もし、ああいう存在が実在したら

  ………テイムしたいな………


  そして、その子を連れて

  この異世界のファンタジーな世界を

  色々と旅行したいな


  そう、冒険者ギルドに所属して

  色々なダンジョンを攻略して

  みたりするのも面白いかも………」


 勿論、その呟きの間にも、口に果物の干したモノは入れていた。

 そして、腹が満ちれば自然と瞼が重くなり、睡魔に意識がぱっくんちょされて、さわり心地が最高のソファーに撃沈してしまったのだった。

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