第168話 生まれて初めて110番した

日本で生まれて初めて110番してしまいました。

日本滞在中、私たちは浅草の町屋風の家を借りて滞在してたのだけど、3人一緒に行動しないことも多かったの。たいていは夜、夫だけが漫画家とのオフ会に行き、私と娘が買い物に行く感じ。

そして娘が


「友達と遊びに横浜に行く」


と言い出したの。別に出会い系アプリで知り合った人とかではなく、アメリカの日本語補習校の子たちと、ときいて、独り歩きデビューとしてはいいかと思い、私は「ふーん。気を付けて行ってらっしゃい」と送り出し。1回目の外出のときは3時には帰ってたので理由を訊くと「一人が食事後気分悪くなって、解散した」とのこと。


そして問題は、その二回目に起ったのです。

その日は事前に言ってた時間より帰りが遅く、iPhoneにメッセージを送ると、


「友達とご飯を食べて帰る」


とメッセージ。私自身は当初そんなに気にしてなかったの。

誰と一緒かきいてたし、その友達のディスコード垢もきいていた。

最近の子は電話じゃなくディスコードやインスタのメッセで連絡とるのよね。

ところが、夫が娘のiメッセージを見て、


「いつもは日本語じゃなく英語でしか返事しないのに、日本語で返してる!このメッセは別人が書いてるんじゃないのか!」


と言い出し、慌ててコールするも携帯の電源は切られているらしくつながらない。

夫がディスコードで友達に連絡を取る。


ここで衝撃の事実が判明。

その友達、今日は一緒に出掛ける予定はない。前回も予定が合わなくて会っていないって。…そんな馬鹿な!


ここで私、パニックになって娘のPCからいろいろなアカウントを探り、Find my iPhoneで位置をトラッキングするも電源が落ちているのでみつからない。

補習校の友達も知っている限りの友達に訊いてみてくれるといい、それでも誰も娘と約束していない。

いろいろやった時点で9時。

「110番して」という夫の言葉に、もう警察に電話するしかないと、震える手で110番したのです。


「事件ですか、事故ですか?」

「あの、すみません、娘が返ってこないんです」


てんぱってうまく説明できず、でも旅行で来ていること、宿泊先の住所を告げ、そして……




娘が帰ってきましたがな。






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る