暗殺者が持つ絶対のルール
風見☆渚
自分で決めた絶対のルールに従って
俺は甲賀の里で育った生まれながらの殺人請負人。
幼い頃から忍術を駆使した暗殺術をたたき込まれ、人を殺す以外のコトを知らずに育った。
そんな俺も、もう20才になり社会に出て立派な暗殺者として街で働くことになった。
里を出る時に少しだけ不安もあったが、人間社会において神隠しや行方不明など知らずの内に人がいなくなることは珍しくない。だから仕事には困らなかった。そんな暗殺家業を続けてもう10年になるが、忙しい毎日を送っている。
里を出て10年、孤独に生きている俺だが夢はある。それは、村に貢献するコトだ。少子高齢化の波が甲賀の里にもやってきたせいで、村の財政を厳しくしている。暗殺者を育てるにも金がかかる。それに、村は人里離れた場所にあるために森林伐採など人の手が入ってくることもあり、土地の権利を守るにも金がいる。
俺は一人前の暗殺者として働きながら村に仕送りをしている。だからではないが、自分の住む場所などには金をかけない。最近家賃の安いシェアハウスなる場所に住むようになったが、どうせ家に帰っても寝るだけの場所だから気にしない。
そして俺は今日も仕事に出かける。
街で暗殺を続けている俺だが、絶対のルールを自分なりに決めてそれを遵守している。そのルールとは、一般人に被害を出さないことだ。忍術を用いるプロの暗殺者なら、人を殺す所は絶対に見られたり知られてはならない。当たり前だが、もし誰かに見られた場合、申し訳ないと思っているが即刻その見た奴も殺さなくてはならない。場合によっては、暗殺対象の近くにいる周囲の人間全てを殺さなくてはならない。
どうしようもないコトとはいえ一般人を殺すコトになった時、自分に重い罰を科せている。その重い罰とは・・・
仕事終わりにプリン食べないコトだ。
仕事終わりに食べるプリンは俺の唯一感じる至福の瞬間。だからこそ、プリンと仕事を天秤にかける。これが俺が決めた絶対のルールであり、ポリシーだ。
そんなある日、大事件が起こった。
それは、俺が楽しみにとっておいたプリンをシェアハウスの誰かが食べたコトだ。
シェアハウスの住人は同じ冷蔵庫を共有し、必ず自分の食べ物に名前を書くことがルールで決まっている。しかし、そのルールを無視し、さらに俺の大事なプリンを食べた奴は絶対に許せない。俺のプリンを食べた奴は絶対に許さない。俺が用いるありとあらゆる暗殺術でこの世から骨も残さず消し去ってやる。
まずは、現場検証だ。
現場はロビーに置いてある大型冷蔵庫。見た目は業務用クラスの大型で、シェアハウスに住む10人の食料がここで一同に保管されている。今日の冷蔵庫をチェックするとしよう。
もちろん俺のプリンは入っている。他には、二つ隣の部屋に住んでいる佐藤のプリンがあるが、これにはしっかりと蓋にデカデカと名前が書いてある。間違いない、コレは紛れもなく佐藤のプリンだ。
他には・・・こ、、これは!!期間限定の超高級抹茶プリンじゃないか!俺でも手が出せない代物だ。誰がこんな高級品を・・・蓋には名前がない。もしや俺のプリンを食べた奴がこっそり罪の意識に苛まれ俺のために買っておいてくれたのか?いやはや、しょうがない奴だな。これで許されると思うな・・・?
よく見ると、黒い容器に青色のペンで木村と小さく書いてある。木村と言えば、最近引っ越して来たばかりの大学生とか言っていたな。いかんいかん。危うく俺も同じ罪を犯してしまうところだった。こんなトラップを仕込んでおくとは、木村め抜け目のない奴だ。もしや、俺のプリンを食べた木村がトラップを仕込んで、さらに俺をはめるつもりだったのだろうか・・・そうなると木村は侮れん奴だ。今後注意しておかなくてはならないな。
他にめぼしいモノは入っていないようだ。犯人は現場に戻ってくるとよくドラマとやらで言っていたが、もしかすると俺のプリンを食べた奴が更に犯行を重ねる可能性も考えられる。ここはひっそりと天井に張り付き見張ることにしよう。
かれこれ4時間たったが、誰もリビングに現れない。よく考えてみたら、今の時刻が午前5時。こんな時間にやってくる奴は俺くらいなのかも知れない。しかし、皆が寝静まった頃に誰かのプリンを食べる奴がくるかもしれない。もう少し監視を続けてみよう。
全く現れる気配が・・・誰か来る!
このままひっそりと天井に張り付いていれば、俺のプリンを食った犯人が現れる可能性が高い!誰がやってくるのか、その面を拝んでやる。
ガチャッ
「あ、甲賀さんおはようございます。そんなところで何やってるんすか?」
「いや、日々のトレーニングを少々だな・・・普段から鍛えるのが趣味だからこうして天井に何時間張り付いていられるかを習慣でやっているんだ。そころで坂井君、君はどうしてこんな朝早くに?」
「俺はコンビニの夜勤が終わったんで朝飯でも食べようかと思って。食べたらすぐ寝ますけどね。」
「そうか、ご苦労だったな。働くコトは良いことだ。」
「あ、そういえば甲賀さん。この前プリンが・・・」
「貴様か!!貴様が食ったのか!?」
「いやいやいや、近いですって。人の顔までの距離数mmまで近づくのやめてくださいよ。」
「で、プリンを食ったのはおまえなのか?」
「いやね、こないだハウスクリーニングのおばちゃんが冷蔵庫もキレにしてくれたんすけど、甲賀さんのプリンですか?あれ、賞味期限1ヶ月前に切れてたんで捨てておきましたって言ってました。ダメっすよ。早めに食べないと。さすがに1ヶ月放置はお腹壊しますって。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・あ、そうか・・・・・・・」
「っじゃ、俺飯食ったら寝ますから。おやすみなさ~い。」
手を振って坂井は去って行った。
なんてこった!!
俺としたことが、プリンを1ヶ月も放置してしまったとは。
畜生ーーーーーー!!
俺のプリンが・・・俺のプリンが!!!!
こうなったら木村を殺してプリンを奪うか?!
それとも佐藤のプリンを食べて後で買い直すか?!
どっちにしろルールを無視した俺にはプリンを食べる資格がなくなってしまう。
どうしたら良いんだ俺のプリーーーーーーん!
プリンのコトを考えていたら、無性にプリンが食べたくなったな。よし、コンビニにプリンでも買いに行くか。
ブルルルル、ブルルルル・・・・
携帯が鳴っている・・・こんな時に仕事の連絡が!!
俺のプリンが!!!!俺の口が今すぐプリンを食べたいと言っているのに!
こうなったら超速攻で今すぐ仕事を済ませてやる!
待っててね、俺のプリーーーーーーーん!!
暗殺者が持つ絶対のルール 風見☆渚 @kazami_nagisa
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます