mobと美少女 side-城南 千秋

もえすとろ

彼と私ともう一人のヒロイン

私の名前は城南じょうなん 千秋ちあき

クラスで一番の美少女という設定

名前持ちネームドのヒロインで設定上は四季島しきしま 太一たいちくんに思いをよせる女子の一人

四季島くんの事は別に嫌いじゃないよ、でもね

他に私には気になってる人がいるの

設定上はただのクラスメイト

名前持ちでもない彼は男子生徒Aって呼ばれてる


私たち名前持ちの関係は名前持ち同士で完結してる

だから名前のない彼とは関わってはいけないとされているの

関わった所で両者にとって良い事なんてないって知ってるから……

それが名前持ちの禁忌目録ルール

・名前のない彼らmobと不用意に接触してはならない

・mobと我々は違う存在なのだ

・mobは所詮消耗品


名前持ちにとってmobは背景であり触れてはならない存在

だけど、私はずっと彼と……男子生徒Aくんと話してみたかった

彼はmobにも関わらず人生が楽しいとその表情が物語ってる

名前持ちの私はこんなにも退屈してるのに……

四季島くんはモテる

でも、それは名前持ちだからってだけ

特に魅力的ってわけでもない四季島くんがそれを気づいてないのは、なんていうかバカバカしい

四季島くんは自分がモテる事を不思議にすら思わない


そんな四季島くんを私は疑問に思った

なんで、四季島くんはモテるの?

何がそんなに良いの?

実際私の好みではないと思う

じゃあどんな人が理想なのって話なんだけど……分かんない

今まで私は名前持ちの中だけで生活してたから

他にどんな人がいるのか知らない

名前持ちの人たちは楽しいのが当たり前、そう思ってる

実際名前持ちは世界から優遇されてて、最終的に楽しい人生になるって約束されてる

だから大して悲観もしないし、不安もない


でも……名前なしmobの人たちは?

気づいてるの?自身が消耗品だと思われてる事を?

そんな希望のない人生ってあんまりだって思った

だから観察してみた

そしたら、殆どの名前なしの人はまるで機械のように同じ日常を繰り返してるだけだった

彼らにとっては何もない事が日常なんだ

私たち名前持ちと違ってイベントもハプニングも起きない平坦な生活

それが普通なんだって、少しだけがっかりした

でも一人だけ、少し変わった人がいた

そう、男子生徒Aと呼ばれるクラスメイト

彼ったら友達のBやDと話してる時、楽しそうな雰囲気だった

授業も普通にこなして、運動も普通にこなして

何もかも普通の範疇に入る、まさにmobの中のmob

なのに彼は人生を楽しそうに過ごしてる

羨ましかった

彼の見ている世界はどんな色をしてるのか気になった

だから、同じ名前持ちのヒロインの春香はるかに聞いてみた


私「男子生徒Aってなんか他と違くない?」


春香「そう?何が違うの?」


私「なんか楽しそうっていうか」


春香「楽しそう?」


私「うん!mobなのに!」


春香「mobの彼にだって楽しい時くらいあるんじゃない?」


私「違うの!なんかずっと楽しそうなの!」


春香「ずっと?見てたの?」


私「うん」


春香「今すぐ止めなさい」


私「なんで!」


春香「彼はmobよ。私たちが関わっていい相手じゃないわ」


私「でも、気になるの!」


春香「なら、私も少し観察してみるから。絶対に話しかけたりしちゃダメよ?」


私「……うん。わかった」


春香は私と違って頭がいいから、きっと何か分かる!

それまで、少し我慢


それから数日後

春香が何か分かったみたい!

さすが春香!

私「春香!何か分かったんでしょ?教えて!」


春香「しー!あんまり他人に聞かれたくないからこんな所に来たんだから!」


私「あ、そっか。ごめん」


春香「いい、落ち着いて聞きなさい?彼は何の変哲のないmobよ。これは揺るがない事実。いい?」


私「う、うん」


春香「でも……何か隠された魅力、みたいなモノを持ってるわ」


私「やっぱり!」


春香「しー!」


私「それで?隠された魅力って何?」


春香「それは……分からなかったわ」


私「春香にも分からない事あるんだ⁉」


春香「当然でしょ?」


私「そっか。でも、私気になる!」


春香「私もよ。私も彼の魅力が何なのか気になるの」


私「なら、確かめないとね!」


春香「何言ってるの⁉相手はmobなのよ?」


私「じゃあ、mobじゃなくせばいいもん!」


春香「それ、どういう意味?」


私「私の彼氏になってもらうの!美少女南城千秋の彼氏、それが彼の新しい肩書きになるの!それならmobじゃなくなるでしょ?」


春香「自分で美少女って……でも、断られたらどうするの?」


私「え?断られる?」


春香「あのね、彼にだって選択の自由はあるの!あなたの事を好きになるかは分からないでしょ!」


私「え?え~っと……なら、春香も一緒に告白しよ?そうすれば確率は2倍!」


春香「もし!もしもよ?私が選ばれたらアナタどうするのよ」


私「う~ん?春香が良いならそれでいいかな」


春香「アナタって人は……いいわ。私も覚悟を決めたわ。一緒にしましょ」


私「やった!じゃあ勝負ね!」


春香「勝負?」


私「昔やったやつ!どっちが選ばれるか勝負しよ!」


春香「まさか小学生の頃の?」


私「そう!ルールは簡単!私と春香、二人で告白してどっちかが選ばれるまで」


春香「アプローチし続ける」


私「抜け駆けは無し!」


春香「いいわ。なんだか久しぶりにワクワクしてきたわ」


私「そうだね!じゃ、告白に行こ!!」


春香「ええ!負けないわよ」


私「私だって!」




放課後の教室に彼は一人読書していた


私「いい?いくよ?」


春香「え、ええ」


私「ちょっと、いいかな?」


彼「…………な、なんの用でしょうか?」

わーーー!

なんか緊張する!なんでだろ⁉

私「えっと……」


春香「その、ね……」

あ、春香も緊張してるのかな?


チラッと春香を見ると目が合った

やっぱり緊張してるみたい

でも一緒だから、大丈夫!ね!


彼は何が起きてるのか分からないみたいで目を見開いてる


私と春香「……私と付き合ってください!」

言えた!


春香「……こんなガサツ阿呆女じゃなくて私と!」

ヒドイ!!


私「こんな冷血女と付き合うよりも私と!」


俺「えぇー……」


あ、なんかすっごく困ってる?

嬉しくない、のかな?

迷惑だったのかな?

どーしよ……


私「いきなりごめんね」


春香「返事はまだ大丈夫だから、ゆっくり考えて」


俺「え……?」

彼から逃げるよう教室から出る



春香「ね、千秋」


私「なに?」


春香「作戦を思い付いたのだけど」


私「作戦?」


春香「そ、これから職員室に行きましょ」


私「職員室で何するの?」


春香「彼の住所を聞くの」


私「なんで?」


春香「これから彼の家に行くの。それで、もっとお話しするの」


私「できる、かな」

さっきもすっごく緊張しちゃったし……


春香「千秋が行かないなら私一人で行くわ」


私「え!ダメ!私も行く!」


春香「なら早く行くわよ」


私「うん」


職員室で担任の先生から彼の住所を聞きだして、そのまますぐに彼の家に向かう




ピンポーン

「はーい?」

ガチャっとドアを開けて出てきたのは年下の女の子だった

そして何も言わずに玄関を開けたまま中へ戻っていっちゃった

私「あれ?」


微かに聞こえる会話は

「あら、誰か来たの?」

「知らないおねーちゃん」

「知らない人が来たら出ちゃダメでしょ!もう!」

「すっごくきれいなおねーちゃんだったよ」

って感じ?


「あら、ほんと随分と別嬪さんじゃない?ウチに何か用かしら?」


私「あ、えっと、私たち」


春香「彼のクラスメイトの堀北春香です」


私「南城千秋です!」


彼母「あらぁ、息子のクラスメイトにこんな美人さんがいるなんて知らなかったわ~」


春香「美人だなんてそんな……」


彼母「息子に何かようですか?」


私「ちょっと、お話ししたくて」


春香「待たせてもらってもいいですか?」


彼母「ふふ、いいわよ~。ささ、上がって」


私「お邪魔しまーす」


春香「お邪魔します」


彼母「息子の部屋でいいかしら?」


春香「いいんですか?」


彼母「いいわよ~、階段上がって右の部屋だから。ジュース持って行くから中入って待っててね~」


春香「お構いなく」


私「ありがとうございます」


そして、彼の部屋へ入ると

そこには漫画と小説とゲームが綺麗にしまってあった


どんな漫画読んでるんだろ?

一冊だけ見てみよっかな……

すっと、本棚からテキトーに一冊抜くてパラパラめくる


そこには、女の子の裸が描かれてた!!

こ、これって……エッチな漫画⁉

慌てて本棚に戻す


春香「アンタ何してるのよ?」


私「べ、別に⁉」


春香「もしかして、勝手に人の本棚漁ってないでしょうね?」


私「シテナイヨー」


春香「バレバレよ」


だってだって!気になっちゃったんだもん!!


少しすると

彼「ただいまー」

彼が帰ってきた


部屋に彼が入ってくると私たちと目が合って、固まっちゃった

しばらくして動き出した彼は


彼「えっと、なんでここに?」


できるだけ自然に

私「お願いがあってね!」


春香「お邪魔してます」


えっと、えーっと……

私「明日から、一緒に登校しましょ!」

うん!ナイスアイディア!


春香「もちろん私もご一緒します」


彼「いや、なんで俺の部屋に……?」

あ、そっち


私「住所は先生が教えてくれましたよ?」


春香「お母様が案内してくれました」


私「ね、いいでしょ?」


彼「あ、いや……その……」


何か困ってる?


彼「申し訳ないけど……俺は一人で」


春香「お嫌、でしたか?」


彼「嫌ってわけじゃ」


春香「なら、いいじゃありませんか」


彼「いや、でも」


私「なんか困ってる?私が力になるよ!なんでも相談して!」


あれ?彼がすっごく困った顔してる

この後、春香がいきなり帰るとか言い出して私も一緒に帰る事になっちゃった

まぁ抜け駆け禁止のルールだし、しょうがないかな

明日会う約束はしたし、いっか!

帰りぎわ彼母に春香がいつもの登校時間を聞いてて

さすが抜け目ないなぁって感心して

彼の家を出る


春香「明日の朝、また来ましょ?」


私「朝?」


春香「そう、一緒に迎えに行くわよ」


私「うん!」

明日の朝楽しみだな!

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mobと美少女 side-城南 千秋 もえすとろ @moestro

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