二人の結末

 一年三か月後の春――――――

 昼時、優華はある駅の改札口前にいた。

 これから二人で行こうとしている場所があり、待ち合わせをしていたのだ。


 この場所に立つまで、様々な出来事があった。


 あの日の一週間後、母親の百合や叔母、父親の実兄などに康太との結婚を前提にした付き合いをしたいと言ったら、少し複雑そうな顔をされたが、反対されなかった。どうやら親戚一同も康太の事件について聞いていたようだった。

 康太もその翌週に親戚一同に挨拶回りをして、晴れて優華の婚約者として認められた。その際、叔母に頭を踏みつけられそうな勢いで詰られていたが、優華にはその理由が理解できず、彼に尋ねたところ、『気にしない方がいい』と言われてしまい、理由を教えてくれなかった。

 そのあとの二か月間は何事もなく付き合っていたが、二月の末、少し状況が変化した。学生なら次の年度が始まる直前の遊べる時。社会人なら、転勤や人事異動であたふたしているとき。

  康太は研究生として最後の一年間がもう始まっており、多忙を極めていた。優華も銀行の業務に追われる日々が続き、すれ違う日々が続いていた。

 すれ違いの生活を送っているうちに、康太の研究室に巻き込まれ、ひと騒動が起こってしまった。


 そう、十五年前の悲劇を繰り返すところだったくらいには、酷いものだった。しかし、今回はあの時とは違った。偶然も重なって無事解決した。

 だから、二人は離れることなく今、これからの生活を送っていこうとしている。


 この後、二人は一緒に役所に行く予定だった。

 階段を駆け上って来た彼の姿を見つけると、優華は微笑んだ。康太も優華に微笑み、彼女に駆け寄ってきた。ホームに降り、電車を待っている客は二人だけだった。待っている間、二人は無言だった。


 やがて電車の到着を告げるアナウンスが流れた。

 どちらからともなく立ち上がる。


 電車が到着し、扉が開く。

「じゃあ、行こうか」

「うん」

 誰もいない車両に二人は乗り込んだ。手をつなぐ二人の指には月を象った飾りがついている指輪が嵌められていた。

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