第12話 「いらっしゃい。」

 〇ガク


「いらっしゃい。」


「よっ。」


「こ…こんにちは…お邪魔します…」


 英会話、特訓六日目。

 今日は日曜日。

 誰か家に居るかなーって思ったけど…


「誰もいねーの?」


「みんな仕事や用事があってね。」


「大ばあちゃんも?」


「貴司さんと観劇に。」


「90過ぎてんのに…元気だな。」


 今日は、桐生院家にお邪魔した。

 母さんの実家。


 ばあちゃんは、母さんの実の母親じゃないけど。

 とにかく…変わってて、俺は好きだ。

 変わってるだけじゃない。

 頭のいい俺が自信持って言える。

 俺よりもずっと、頭がいい。



「こいつ、電話で話した早乙女千世子。」


 チョコを横に立たせて言うと。


「は…初めまして!!早乙女千世子です!!」


 チョコは大げさに緊張した声で、深々とお辞儀した。


「知花と陸さんと同じバンドの、早乙女さんの娘さんね?」


「はっはいっ…‼︎」


「ふふっ。そんなに緊張しないで?まずは、お茶でも飲みましょ?」


 ばあちゃんはそう言って俺達をソファーに座らせると。


「これこれ。こないだ千里さんが買って来てくれた紅茶。すごく美味しいのよ?」


 なんて言いながら、パッケージを見せてくれた。


「…ガッくん…なんで…ここに?」


 俺は毎日チョコに何も言わない。

 いきなり、連れて行く。

 初日は幼稚園。

 二日目は俺が家教してたアメリカ人の家に一日いさせた。

 三日目と四日目は、イギリス人が経営してる外人が多く住んでる住宅街のバーガーショップでバイトさせて。

 昨日の夜は、客の大半が外人のクラブに一緒に行った。



「ばあちゃん、すげー裁縫上手いんだぜ?」


「えっ?そうなの?」


 チョコの目が、キラキラした。


「おまけに、英語もペラペラ。」


「えっ…ほ…ほんと?」


「ああ。だから、専門用語とか習えよ。」


「……」


 チョコは振り返って、ばあちゃんを見て。


「…おばあさん…って…まだ若いよね…?」


 俺に言った。


「見た目より年食ってるぜ?」


「誰が年食ってる?」


 コソコソと話してると、ばあちゃんが紅茶とクッキーを持って来た。


「地獄耳め…チョコ、気をつけろよ。ばあちゃん、年寄りのクセに耳はやたらいいから。」


「年寄りって失礼ねー。まだまだ気分は学と同じぐらいよ?」


「気色悪い事言うなよ…」


「ふふっ。」


「それに引き換え…チョコんちのばーさんって、気品あるよなー。いつも着物だし。」


 俺がチョコに話を振ると。


「え?見たことある?」


「いつだっけな。テレビでみたぜ?」


「うん…いつも着物。」


「…おばあさまって、早乙女…涼さん?」


 ばあちゃんが、話に反応した。


「え?あ、はい…そうです。」


「そう…涼さんのお孫さん…」


「何。ばあちゃん、チョコのばーさん知ってんの?」


「お会いした事はないんだけど…誰から…かな。話を聞いた事があるのよ。涼さんが、息子さんを産んだって。」


 ばあちゃんは、空を見つめながら…何か記憶をたどってるみたいだった。


「おばあちゃまは、うちの父と叔父しか産んでないので…どちらかの事ですね。」


「そう…誰から聞いたのかな………ま、それはいいとして。」


 ばあちゃんは背筋を伸ばすと。


「今日は一日、楽しく過ごしましょう。」


 ほんと…いくつだよ。って思ってしまうような、可愛い笑顔を見せた。




 桐生院家にチョコを置き去りにして。

 俺はいつものように、自動車学校に行った。

 このペースだと、来週には本免の学科を受けて終了。


 今日も調子良く乗れた。

 学校を出て、自転車に乗る。

 ここ数日世話になった外人達に礼を言って回って…夕方、チョコを迎えに行こうとすると。


 #####


 ポケットで携帯が震えた。


「もしもし。」


『あっ、ガッくん?あたし、チョコ』


 高校卒業と共に買ってもらったチョコの携帯には。

 家族と、俺の番号しか入ってないらしい。


「ああ。今迎えに…」


『それがね、今、出かけてるの』


「え?どこへ。」


『内緒♡』


「内緒って…」


『とにかく、あたしもう少しおばあさまと一緒にいるから、ガッくん先に帰って』


「…うん…まあ、いいけど。」


『あと、この事って秘密にしてくれる?』


「秘密?」


『うん。あたしと、おばあさまが会った事。秘密ね?』


「…ちょっと、ばあちゃんに代わってくれよ。」


 俺は頭をかきながら、チョコがばあちゃんと代わるのを待った。


『もしもし?』


「あ、ばあちゃん?なんだよ、どこにいんだよ。」


『それは秘密ー』


「…で、今日俺がチョコをばあちゃんに会わせたのも、秘密って事か?」


『そうしておいてくれると嬉しいな』


「なんで?理由ぐらい聞いても…」


『だって、日曜日なのに一人でいたのよ?誰とどこに行ったのかって聞かれて、秘密って答えるぐらいのささやかな反抗があってもいいでしょ?』


「そ…そんなガキみたいな事か?」


『何でもいいの。じゃ、あたしはもう少しチョコちゃんと遊ぶから。あ、英語の方も心配しないで。じゃあねー』


 プチッ。


「……」



 まあ…

 いいけど…


 …確かに。

 何で一人だったんだろ。


 今日、本当は…別のプランだった。

 でも、それがNGになって。

 急遽、ばあちゃんの事を思い出した。

 英語がペラペラで、裁縫もできる。

 なんだ。

 こんなに身近に、いい先生がいたじゃないか。って。


 電話したら、ばあちゃんは家に居た。

 あんなに大きな家に、日曜日に一人…

 桐生院家は大家族だけど、だからこそ…一人になると寂しいと思う。


 じいちゃん…なんで三人で観劇しなかったんだろ。

 ばあちゃんも連れてってやれよ。



 そして翌日。

 最終日。

 俺は、チョコを再び、初日と同じ幼稚園に連れて行った。


 そこでチョコは…見違えるほど、英語を話して。

 子供達の大人気になって。

 帰る時には、ハグして泣き合っていた。



「…急成長だな。」


 迎えに行った俺が言うと。


「何事も自信。」


 チョコは…まるで生まれ変わったかのように。

 目を輝かせてそう言った。



 * * *


「……お願い、父さん、母さん。」


 なぜか…

 俺は、早乙女家にて。

 チョコの留学についての話し合いの席に…同席させられている。


「あたし、日常会話なら何とかなるから。」


「そうは言っても、専門用語だってあるだろ?」


「それも大丈夫。もちろん、今よりもっと勉強するし…ついていけるよう頑張るから。」


 チョコの自信満々な言葉に戸惑っているのは…ハッキリ言って、俺を含む…家族全員だった。


「チョコ…体の事、考えてるか?」


 詩生くんがそう声をかけると。


「考えてる。健康診断も受けたし、異常もなかった。」


 チョコは、詩生くんの目を真っ直ぐに見て言った。

 …その目の強さに、詩生くんが引くほどの…強さだ。


「でも、ちょっとそこまでって距離じゃないんだぞ?」


 園ちゃんも…反対なのか?


「園ちゃんだって、パリと日本を行ったり来たりしてるじゃない。」


「そ…それは…」


「…どうしてみんな、あたしの夢を反対するの?」


 ついに…チョコは、唇を尖らせて眉間にしわを寄せて…

 泣くのかと思いきや…


「あたしが、頼りないから心配なの?でも、あたし…みんなが思ってるより大人だよ?」


 キッと顔を上げて、大きな声で言った。

 そんなチョコに…相変わらず家族全員が、面食らっている。

 …俺も。



「詩生ちゃんの夢も、園ちゃんの夢も応援できるのに…あたしのはダメなの?」


 チョコは、両親に詰め寄る。

 お父さんは…ちょいちょい言葉を発するものの…

 お母さんは…ずっと無言…


「心配なのもあるけど…ただ単に、見える場所に居て欲しいってだけなんだよ。」


 ふいに、お父さんが静かな声で言った。


「…そうだな…せっかく夢を持ってるのに…それを摘むような事ばかり言ったかもしれない。」


「親父。」


「詩生、おまえだって…夢を叶えられたのは、みんなが応援してサポートしてくれたおかげだろ?」


「…そうだけど…」



 …チョコは…

 愛されてるんだな。

 すごく…


 そう感じた。

 すると…

 なんて言うか…

 すごく、チョコの事が羨ましくなった。


 まあ…

 俺だって、家族から愛されてるとは思うけど…

 なんて言うか…

 うちは、少し特殊な気がする。


 ここ、早乙女家のように…

 家族が本音を語り合うような…

 そんな機会もないし…



「…あの。」


 気が付くと。

 俺は、口走ってた。


「…俺も、チョコと一緒に…向こうに行きます。」


「……え?」


 隣に居るチョコは、俺を見て…パチパチ、と瞬きをした。


「それなら、心配も半減じゃないですか?」


「え…えっと…それはー…どういう…?」


 チョコのお母さんが、初めて口を開いた。


「俺、チョコの作る物を…プロデュースしたいなって思ってて…とにかく、チョコの応援をしたいんです。」


「…そ…そんな理由で、一緒に留学なんて…」


「俺が陸に叱られる。」


「いや、関係ないです。俺の…決めた事です。」


「ガッくん…」


 みんなが、驚いた顔をしてる。

 …そりゃそうだな。

 俺だって…驚きだ。



「チョコを…千世子さんを、俺にください。」


「……」


「……」


「……」


「……」


「……」


「チョコ、婚約して、向こうに行って頑張って…」


 チョコの肩に手を掛けて、体を俺に向ける。


「……」


「……」


「……」


「……」


「……」


「帰ったら、結婚しよう。」


 誰も、言葉を発さない。

 見ると…

 みんな、口が開いたまま。



「…ガッくん…本気?」


「本気。」


「……」


「チョコの夢が、俺の夢だ。」


「……」


 その言葉に、チョコの…


「うっ…ううっ…」


 お母さんが、号泣。


「えっ…」


「ありがとう…ありがとう、ガッくん…」


 お母さんは土下座なんてして…俺に礼を言う。


「いやっ…そんな、土下座なんて…」


「…俺は…正直…複雑だけど…」


 お父さんは肩を落としてうなだれながら…


「だけど…………君を、信じる。」


「あ…」


「娘を、宜しくお願いします。」



 姿勢を正されて…頭を深く下げられてしまった。


「こ…こちらこそ、よろしくお願いします。」


 俺も、正座し直して…ご両親に頭を下げた。

 それにつられたように、チョコも…


「…よろしく…お願いします…」



「…学が…義弟になるなんてな…」


 詩生くんと園ちゃんが、小さくそう言って笑った。



 ああ…

 俺に、夢が出来た。


 とんだ、思いつきで…だったのに。



 チョコ。

 おまえの夢が、俺の夢。

 なんてさ。


 ははっ。



 …俺の夢、サイコー。


 * * *


「…で、結婚を決めて帰った…と。」


「ああ。」


「なんであんたはまた…そんな大事な事を相談もなく…」


 帰って婚約の事を話すと。

 まあ…間違いなく両親は怒るだろうと思ったが…


 母さんは呆れたけど、親父は…


「センと親戚になれる…」


 ニヤけた…。


 でも。


「もう、あなた。」


 母さんに睨まれて。


「あ、あー…うん…で、チョコちゃんをサポートしたいから、婚約して一緒に留学…と。」


 咳払いするフリなんかして、言葉を出した。


「うん。」


「それって、学の夢なの?」


「そうだぜ?」


「チョコちゃんの夢に、ついて行くだけみたいじゃないの。」


「……」


 母さんに言われて、顎に手を当てて考える。

 まあ…確かにそうだけど…


「それのどこが悪い?」


 俺は聞き返す。


「学…」


 母さんは本当に呆れた様子で、溜息まじりに額を押さえると。


「…まだ高校を卒業したばかりなのに…婚約だなんて…」


 低い声でつぶやいた。


「……なんかさ。うちって、なんでこうなんだろ。」


 今まで、気付いてても言うつもりはなかった。

 だけど、ちょっと…言う気になった。


「こう…とは?」


 親父が少し真顔になった。


「…昔からさ、放任なのはありがたかったよ。でも、家族って…もっと話し合ったりぶつかったりするもんじゃなかったのかな。まあ…プロレス技は掛け合ったりするけどさ…それだけ、って感じだし。」


 俺の言葉に、二人は無言。


「なんか…肝心な事は全然話さない…確かに今回の俺みたいなのは、その例だと思うけどさ。今までも、親父たちだってそうだっただろ?紅美の事だって…」


「…学…」


 母さんが悲しそうな顔になった。


「…別に、不満があったわけじゃないんだ。だけど…なんて言うか…俺、興味持たれてんのかなって疑問に思える事ってよくあったからさ…」


「……」


 親父は小さく溜息をついて。


「麗、ちょっと男同士で話していいか?」


 母さんにそう言った。


「…ええ…」


 母さんがリビングを出て、寝室に向かうと。

 親父はテレビの横に立って…


「…何か見ながら話すか。」


 なんて言いながら、DVDを手にした。

 …こんな時に映画か?


「あ、これにしよ。」


 そう言って、親父が選んだ映像は…ビートランドの、いつぞやの周年パーティーの様子だった。

 親父たちのバンド、SHE'S-HE'Sがステージに立ってる。



「…俺は、おまえにギターを弾いて欲しかった。」


 俺の隣に座って、リモコン片手に頬杖をついた親父は。

 小さな声でそう言った。


「…え?」


「でも、夢を押し付けるなんてできないって思ったんだよな。」


「……」


「…二階堂が特殊な家業なのは知ってるな?」


「うん…」


「俺は、15まで親と離れて暮らしてた。織と二人きりで。だから…何を決めるのも自分か…織と二人で決めてたし、親に甘えた事もなければ…誰かに甘えられる事もなかった。」


 …意外と…初めてだったりするな…

 親父の昔の話しを聞くの。


「死んだと思ってた親に、いきなり15の時に会されて。家業を継げって言われた時は…面食らった。」


「…そりゃ、そうだよな…」


「でも、織が継ぐって言い張った。俺はもう…その時には、音楽関係の仕事につきたいって思ってたから。」


 織姉…

 親父のために、二階堂を継いだ…って事か?


「親のせいにするわけじゃないけど、そういう生い立ちのせいか…紅美と学に対しても、自己解決を望んでしまってた所もある。」


「…まあ…おかげで多少はたくましいかもしれないけどな…」


「ははっ。」


 画面では、チョコの親父さんと…親父が、並んでギターを弾いてて。

 俺はそれを…本当に、めちゃくちゃカッコいいと思った。


「…麗はな…」


「うん。」


「あまり、親から期待されずに育ってるんだよ。」


「…え?」


「変な言い方だけど、生きていればいい。ぐらいの感じかな。」


「…死んだお母さんがそうやって?」


 母さんの本当のお母さんは、確か…母さんが10歳ぐらいの頃に死んだって聞いた。


「んー…死んだお母さんからは激愛されてたみたいだけど、それで、より屈折したと言うか…」


「…じゃあ…じいちゃんに…って事?」


「…悪気はないと思う。俺が親に育てられてないから、子供への接し方がよく分からなかったのと同じで…じいさんもそうだった。そして、麗もそうなった。そんな感じなのかな。」


「……」


 映像では、母さんの姉ちゃん…俺の伯母にあたる知花姉が、恋の歌を歌ってる。


「…知花は、愛されずに育ったと思い込んで、だけど誰よりも愛されてたと気付いた。もしかしたら、大事なのは気付く事なんだよな…」


「…気付く事…」


「どんな小さなことでも…。俺は15年離れてたけど、親には愛されてた。麗も…形は複雑だけど…今…さくらばあさんは、俺達の事をすごく大事にしてくれるだろ?」


「うん…」


「麗が素直になったのは…あの人が桐生院に来てからだ…って、みんなが言ってた。」


 気付く事…

 まあ…俺も…

 紅美の件があったり、早乙女家に出入りした事で…我が家の在り方について考えるようになった。

 …よそはよそ、って言ってしまえばそれまでだけど。

 俺は、詩生くんと園ちゃんを、ちょっとうらやましいと思った。

 自分の事を真剣に応援してくれる両親…何でも言い合える関係…

 …でも、何でも親に言う前に諦めたり、決めたりしてたのは俺自身だ。



「…親父。」


「ん?」


「…DEEBEE、俺がいなくても、十分カッコいいよな。」


「…まあ、そりゃそうだ。」


「もう少し前なら、戻らせてくれって言ったかもだけど…今はもう、そこまでの熱がない。」


「…そうか。」


「でも、こういう周年パーティーのセッションとかで、呼んでくれたら弾いてやってもいいぜ?」


「何を偉そうに。」


 親父は俺の頭を抱えると。


「あいたたっ!!」


 ヘッドロックをかけた。


「痛いって!!」


「…学。」


「あ…?」


 親父はそのまま、俺の頭を抱きしめて。


「俺も麗も…おまえの事も、紅美の事も…心から、愛してるから。」


 優しい声で言ってくれた。


「……」


「…おまえがしたいと思う事は、全力で応援する。」


「…サンキュ…」


「…で…」


「ん?」


「まさかとは思うが…妊娠させたから結婚…なんて言うんじゃないだろうな。」


「違うし!!」


 跳び起きて否定すると。


「…赤くなったな。」


「なってねーし!!」


「今度は青くなった。」


「ちっ違うし!!」


「瞳孔が開いてる。」


「その手に乗るかよー!!二階堂!!」


 俺と親父がじゃれ合ってると。


「ただいまー…って…何イチャイチャしてんの?」


 ギターを抱えた紅美が、俺達を見て眉間にしわを寄せた。


「ああ、紅美。話がある。来い。」


「え…?何?」


 紅美はギターを置いて、恐る恐る親父の隣に座ると…

 親父は、紅美の耳元で…何やらコソコソと話した。


「えっ!?」


 その紅美の大声に…


「…紅美、帰ったの?」


 母さんがリビングに来て。


「学!!勝手に婚約って、あんた!!」


 紅美は大きな声で、俺に言った。


「う…」


「しかもチョコって!!」


「う……」


「いつからよーーー!!」


「い…いや、いつからって…」


 紅美が親父をまたいで俺に乗っかって。


「さあ、喋れ!!全部吐け!!」


 そう言って、ヘッドロックを…


「あいたたた!!さっき親父にやられたばっかなのに!!」


 俺が大声を出すと。


「…紅美。」


 それを見てた母さんが、低い声で紅美に言った。


「右手が甘いわ。」


「あ、そう?」


「うっ…!!嘘だろ~!?」



 その夜。

 何年振りかに…四人で外食をした。

 普段は家でビールを飲む俺と紅美も、さすがに外では遠慮した。

 親父は顔出ししてないけど、どこで何がバレるか分からない。



「で?早乙女家にはいつ挨拶に行くの?」


 紅美が肉を頬張りながら言うと。


「早い方がいいよな。明日の晩にでも美味い酒を持って…」


「もう、あなたったら…飲む事ばっかり。」


「そういう母さんも、それ四杯目じゃないかな。」


 少しだけ…吐いたり、気付いたりするだけで…

 その先に開ける物は、意外と大きかったり広かったりする。


 詩生くんや園ちゃんが羨ましかった俺も…

 今日は…

 二階堂サイコー!!


 なんて、思えたりするんだ。

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