mw

kasode

紫の炎

001 - 001 - ムー大陸

自分の能力に気づいたのは、6才になったばかりのある朝だった。

昨日まではまるで見えなかったオーラのようなものが、街ゆく人々からユラユラ溢れ出ているのがはっきりと見えた。

僕はコートの内側から仮面を取り出すと、それを顔に装着し、幕があがるのをゆっくり待つことにした。


この世界では、60年ほど前から、超常的な能力を持つ人類が確認されていた。

「異人」と呼称される彼らは、人口の約0.001%以下という確率ではあるが、人口100億人に届くかというこの星で見れば、その数は1000万人近くに及ぶ。


のちにナンバーゼロと呼ばれる、最初の異人が発見されたのは、歴史的惨劇でもある「ラフア大森林飛行機墜落事故」がきっかけであった。

世界最大の宗教であるイスト教の聖地ラフアの南西に位置する大森林に、一機の大型旅客機が墜落した。

墜落によって引き起こされた山火事はあたり半径30kmを焼き尽くし、鎮火後にボロボロとなった機体に残った人骨を集める作業が始まった。

中でもひときわ大きな残骸をクレーンで除去すると、その下からは数名分の人骨と、一人の生存者が見つかった。

生存者は全裸で、救助隊が駆け寄ると自身の力で立ち上がり、困った顔で笑った。


ナンバーゼロの存在は最初は都市伝説のように広がったが、各地で同様に特殊な能力者が発見されるに従い、誰もが新たな常識を受け入れなければならないことに気がついた。

「特異能力は存在する」

その事実を否定することが馬鹿らしいほどのペースで、異人は増え続けた。

そして、いくつかの国々は彼らに対し、秘密裏に人体実験を繰り返し、多くの人々は異人を迫害した。

それが災いの元になることは、少し考えれば分かったはずだが、人の好奇心というものは止められないものだ。


ナンバーゼロの事件から10年近くが経った頃、異人はいくつかのグループを形成していた。

異人に対する迫害や、人体実験に対する抗議活動、もしくはテロ活動を行うグループである。

そして、次第にそれらグループは二つが一つになり、十が一つになり、最終的に一つの巨大な組織が誕生した。

彼らは自らを「蛇の血盟」と名乗り、世界中の人類に対し宣戦布告を行った。

蛇の血盟のメンバーは総勢20万人、対して世界人口は100億人。

しかし、能力は圧倒的な数の不利さえ超越した。

戦争開始から3年が経つ頃には、世界に220ある国のうち70の国家が蛇の血盟に降伏し、他の国々は「国連軍」として一つの組織にまとまりつつあった。


人類の敗北は間違いないものとされていたが、それを救ったのは異人であった。

人類を救うべく、有志が集い「鳥の民」という異人組織が形成された。

鳥の民の考えに賛同する異人の数は50万人を超え、すんなりと戦争は終結へと向かった。


「鳥の会議」と呼ばれる歴史的なサミットが設けられたのは、終戦宣言から1週間後であり、この急ぎようからもそれだけ人類は窮地に立たされていたということが窺える。

鳥の会議には、鳥の民から代表者15名、蛇の血盟から代表者3名、そして18の有力国家の首脳、イスト教の最長老と長老会2名、国連幹部5名の総勢44名が参加し、異人と人類のこれからについて2ヶ月に渡って議論が交わされた。

そして出された答えは、細かいものを除けばたった2つ。

「異人と人類の共存は不可能である」「異人だけの暮らす土地が必要である」

ということであった。


そして作られたのが、異人による人口大陸「ムー」である。

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