第125話 カミン達の任務《カミン視点》
朱王様が超級
ついにゼス王国へと旅立たれる日が来てしまいました。
またしばらくお会い出来なくなると思うととても寂しいですね。
しかし皆様には良い旅となるよう笑顔で送り出すべきでしょう。
「皆様、いってらっしゃいませ。旅のご無事を心から祈っております」
「いってらっしゃいませ。またお会い出来る日を楽しみにしております」
「皆様お気を付けていってらっしゃいませ」
「いってらっしゃいませ。また新しい料理を考えておきますので楽しみにしていてください」
「皆さま、いろいろとありがとうございました。リゼ様に教えてもらった氷魔法で私も頑張ります!」
そういえば魔族であるフィディックはリゼ様に懐いてましたね。
涙脆い彼ですから今も泣いてますね。
笑顔で送り出すと決めたはずなんですが…… まぁいいでしょう。
フィディックらしく見送らせてあげましょう。
「皆んなありがとう! 行ってくるよ! それと今回君達に与えた任務は危険を伴う。絶対に全員で生きて帰って来てくれ。約束だよ!」
「「「はい、朱王様!!」」」
「この命に代えても約束します!」
「だから死ぬなってば! じゃあまたねー!」
フィディックにツッコんで車を発進させる朱王様。
最後の一言がフィディックにだなんて…… 私もボケるべきでしたかね。
さて、これから私達は朱王様から与えられた任務を完璧に遂行しなければなりません。
とは言え任務の内容は至ってシンプル。
魔人族北の国の大王、ディミトリアス大王に謁見してリルフォンを渡す事です。
リルフォンを渡して私を介して朱王様と魔力を繋ぎ、朱王様がディミトリアス大王とお話頂く事が出来ればこの任務は達成となるでしょう。
しかし私達が無事に帰還するまでは朱王様は任務を完遂したとは認めてはくれないでしょうね。
絶対に生きて帰って来いとの命を受けてますし、朱王様を悲しませるわけにはいきませんので絶対に死ぬつもりもありませんが。
それでも魔人族の大王に謁見となれば周りは魔貴族ばかりでしょうし、危険なんて簡単な言葉で済む内容ではないんですがね。
まぁ北の国の場所もわかりませんしフィディックとレイヒムのレベルを上げながら向かいましょうか。
あ、そうでした。
レイヒムはこの任務に連れて行く予定はなかったのですが、本人が朱王様にお願いして同行する事になったのです。
彼がいれば美味しい食事を作ってもらえますからとても嬉しいのですが、この危険な任務に大丈夫なんでしょうか……
レイヒムが言うには、フィディックから聞いた話で魔人族の料理は魔貴族などの上位の者であってもそれ程美味しい食事ではないのだとか。
それならば自分が作った料理で、少しでも良好な関係を築ければと考えたそうです。
確かに美味しい料理と楽しい会話などがあれば人は満たされるものですからね。
その腕を振るって頂きましょう。
彼の武器…… 商売道具ですがナイフを使って戦えるようにドロップや腕輪を千尋様から強化して頂いてますので、魔法を使用すれば調理場が無くても平気ですしね。
それに彼は魔法のセンスも素晴らしいんですよ。
精霊契約したばかりのシルフで野菜の千切りを一瞬でやってましたからね。
私も驚きました。
では北の国に向かう準備をして邸の者達にも留守の間の指示を出しましょうかね。
まずは北の国の位置から確認しますか。
「フィディック、北の国にはどちらに向かえばいいですか?」
「北の国はここクイースト王国からずっと東の方にあるはずです。西の国の領土を通過しないといけないので人間を敵視する魔人にも会うかもしれないです」
「西の国より北方向にあるのではないのですか?」
フィディックの説明を要約しましょう。
西の国は北の国よりも遥かに大きな領土となり、北の国の北側と西の国の北側とで北緯は変わらないそうです。
大王の支配する領地が国の方角を示した名前となっているという事ですから、北の国や西の国というのもわからなくはありません。
西の大王の領地はザウス王国よりも少し南に位置するはずとの事なので相当な広さがあるのでしょう。
西の国の領土を通過せずに北の国に入る事は不可能らしく、西の国の北側には断崖絶壁となる山々が聳えているそうです。
ここクイーストから見れば東側なんですが、100キロ程行った先に山がありましたね。
そこから魔眼鏡で偵察した際に魔族が数人確認できましたから、あの辺りから西の国の領土となるのでしょうね。
そこまでは無法地帯という事か、それとも理由があってこちらに来ないのか。
行ってみればわかる事ですね。
北の国の領土と西の国の領土で明確な境目はないそうで、もし魔族と遭遇してもどちらかわかりませんので出来る限りは隠れながら向かいましょう。
もし見つかってしまえば戦闘は避けられませんし、話が通じるとも限りません。
慎重に行く必要がありますか……
または朱王様から頂いた飛行装備を使って夜に移動するのも手ではありますね。
あとは大王の支配する領地がどこにあるかも問題ですが、フィディックは西の国の魔族ですので知らないそうです。
そこはまぁ仕方がないでしょう。
北の国に入ったら大王領を探して、そこからどう謁見するか考えるでいいでしょうかね。
朱王様の話では飛行装備の性能も魔族の物よりも優れているとの事ですし、何かあれば逃げればいいでしょう。
そろそろ荷物を持って出発しましょうか。
荷物を入れる鞄は飛行装備を展開する必要もあるので肩下げ鞄です。
少し飛ぶ時にバランスが崩れますけどそれ程問題にはなりません。
お土産として小さなモニターを持つのは私。
北の国の大王や魔貴族達に映画を観て貰いたいとの朱王様の図らいです。
マーリンには食料を調達出来なかった時用の非常食を鞄いっぱいに詰め込み、メイサには非常食を少しと全員分の弁当を持ってもらいます。
もちろんレイヒムに作ってもらいました。
レイヒムの鞄の中身は調味料と調理器具です。
毎食作ってくれるそうですので食料調達も頑張らないといけませんね。
フィディックには野営の荷物を持ってもらいます。
彼は体が大きいですからね、大きな野営道具も普通の荷物に見える程です。
水筒は全員紐を付けてこちらも肩下げにしました。
水魔法で集める事も出来ますが、水筒にはスープを詰めたりもできますしね。
邸の管理も残る使用人達に指示を出しましたし綺麗に維持してくれる事を期待しましょう。
しばらくクイースト王国にも戻って来れませんし、少し街並みを見てから旅立ちましょうか。
「メイサ、マーリン、フィディック、レイヒム。それでは参りましょうか」
「「「はい!」」」
「それはこの前観た水◯◯門の真似ですか?」
「フィディックも普通に返事をしてくださいね」
まったく困った方です。
私よりもはるかに歳上のはずなんですがね……
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