内緒の関係

紫斬武

内緒の関係

先生と初めて会ったのは、入学式。くたびれた白衣にぼさぼさ頭、分厚い眼鏡をかけて壇上での挨拶。声はとても心地好い。


二回目以降に会ったのは、理科の授業で。相変わらずぼさぼさ頭に分厚い眼鏡。ただ、やっぱり声が心地好くて、聞いてると私は勉強が捗った。他の生徒は寝てるみたいだったけれど。


とても先生が気になってる私は、理科の授業がない時も先生をよーく観察するようになっていた。理科の授業中に先生を食い入る様に見詰める、端から見たら真面目に授業を聞いている良い子な生徒だろう。それはそれで都合が良いから私はこれでもか、と言うくらい先生を見詰める。


授業がない時は、こっそり先生を見詰める、それは然り気無い仕草で、然り気無い行為で。


気持ち悪いくらい、私は先生を気にしている。これは、先生を好きって事だろうか。


自分で言うのはあれだけれど、私は見た目が美少女。物心がついた時から近くにいた男の子は私の取り合い、中学、高校も取り合い。こういう美少女な私は女の子に嫌われたりするけれど、女の子も私の取り合い。やれ何ちゃんの親友は私よ、等々。


そんな私のスペックはまだある、私はこの学園理事長の孫。お祖父ちゃんは私を超溺愛。 私の言う我が儘を何でも叶えてくれる。


だから、これって多分、絶対にルール違反だけれど……。


「先生、私、理事長の孫で美少女な見た目で先生にとったら自惚れじゃないくらい高嶺の花だと思うんです。先生が好きです、だから卒業したら結婚しましょう」


「……………へ?」


「聞き取れませんでしたか?ならもう一度言いますが…」


「いやいや、き、聞いてた!聞いてたよ!?だから、驚いて…」


「問題ありますか?」


「も、も、も、問題ありまくりだよ!」


慌てた様子の先生を私は見詰める、ぼさぼさ頭で分厚い眼鏡で、でも声は心地好い。白衣の裾を握り締め、私の方へ顔を向ける。


「ま、先ずは君は生徒で、私は先生であるからこの時点で駄目だよね?」


「駄目じゃないですね、卒業すれば問題ないかと」


「……君には同い年の子とか合うだろうし、そもそも……私は女だからね!?」


先生の言葉に私は頷く、先生が女の人なんてずっと見てれば解る事だし。


「問題ありますか?」


「あ、あるよ!好きと言う感情を、ひ、否定する訳じゃないけれど、性別的な問題があるし、君はとてもモテているから私じゃなくても君に合った男の子がいると、私は歳も取ってるし…」


白衣を握り締め、懸命に話す先生の姿は可愛らしい。知らない先生の姿を知れて私は嬉しくなった。


「先生が気にしてるのは、性別と年齢だけですか?」


問いただすように、私は先生に近付いて行く。先生はちょっと後退るが、徐々に差は詰め寄る。


「そりゃ、まあ…一番の問題じゃ…けど、君は大事な生徒でもあるし、憧れみたいなものかも知れないから、ちょっと考えてみようよ、落ち着こう」


先生が私を落ち着かせようと言葉を発するが、そんなの最初に考えたけれど、やっぱりこの気持ちは嘘じゃない。だからルール違反でも何でも犯す覚悟で私は欲しいものを奪いたい。


先生に近づき、近い距離のまま周りを魅力するであろう笑顔を向けてる。


「問題ないです、だって私は……俺は男で将来は優良物件、先生にとったら逃したらいけない存在ですよ。俺も逃しませんけど、じいちゃんに言って先生は俺のもんって事で。大丈夫、卒業するまで我慢しますよ、先生」


俺の言葉に、驚いたような雰囲気を出す先生が目の前にいる。そんな先生の頬に触れ、笑顔を見せる。


「だ、だ、だって、君の姿…っ」


「まあ、似合う姿をしてるだけですし、この姿の方が俺と先生には都合が良さそうですよね?」


「わ、私は教師だし、せ、生徒とは…」


「そんなルール、卒業したら終わりですって。逃がしませんから」


先生の言葉は全て否定して、俺は先生の頬に口付けた。


恋愛にルールもへったくれもない。

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内緒の関係 紫斬武 @kanazashi

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