君と僕の2つのルール

甘川 十

君と僕の2つのルール

「たっだいまー!」

 玄関からこれでもかってくらい元気な声が聞こえてくる。

 小走りになって待ちきれない様子がはっきりとわかる。

「お帰り小春」

「ただいま!陽介!!」

「おっと」

 小春はいつも通り元気いっぱいに扉を開けて僕に抱きついた。

 僕はそっと受け止める。小春の身体はこんなにも軽いので心配になることが多い。

 小春と僕は幼馴染。この春から同居している。まだ付き合っていない。

「あ、ごめん!つい」

「いいよ。で、今日はどんなことがあったの?」

 僕たちは同居するにあたって3つのルールを作った。

 その1がこれだ。

「今日はねー朝登校中に猫を見つけてね」

「うんうん」

「で、のんびりしてたら遅刻しそうになった!」

「はは、相変わらずだね」

「えへへー陽介は?」

「僕は・・・」

 僕たちは小春が帰ってきたら必ず今日の出来事を話す。

 もちろん隠したいことがあれば隠してもいい。

 ただし、

「あ、今日は2-Aの鈴木に告白されました!」

「僕は今日外に出ていないから0だよ」

 と告白されたら報告をすることになっている。

 小春はモテる。だから、結構な頻度で告白されるのだ。

 同居し始めた頃は大丈夫だと思っていたのだが、一度報告してなかったことがあり、痛い目に遭った。

 だから、小春には報告するように言ったのだ。

 すると、小春は僕も言うという条件付きで快諾してくれた。

 正直僕はそんなに頻繁に告白されることはないのだが、小春曰く、「陽介は自分の価値が分かっていない。そもそも、月2回告白されるのは少ないに入らない」とのことだ。

「鈴木君はどんな人だい?」

「えーと、確か岸ちゃんから聞いた話だと、野球部だって。なんか真面目ないい人らしいから安心するようにって」

「なら大丈夫かな」

 ちなみに岸ちゃんは小春の同級生。小春とは中学からの付き合い。

 僕も話したことがある。結構な情報通で、色々なことを知っている。

 最初はめちゃくちゃ警戒されていたけど、今じゃ仲良しだ。

 なにかあったらすぐに連絡をくれる。だから、ルールを破ることもしようにもできないのだけれども。

 この前僕が告白されてたのも知っていてびっくりしたなあ。

「陽介?」

「ああ、ごめん。岸ちゃんは本当に何でも知ってるって思ってね」

「だね!あ、でも、岸ちゃん曰くなんでも「その続きは言っちゃだめだよ」・・・はあい」

 そんな感じで時間は過ぎていく。

 こんな時間が毎日楽しみだ。

 そして、2つ目のルール。それは、

「陽介」

「小春」

「「好きだよ」」

 必ず一日一回好きということだ。

 え、付き合っているのかって?

 さっきも言ったが、まだ付き合っていない。

 僕は大学3年生、小春は高校2年生。

 お義父さんから付き合うのはまだ駄目だと言われている。

 同居するという話もお義父さんはなかなかOKをもらえなかった。

 そして、同居の条件として出されたのは、付き合わないことだった。

 だから、僕らは家以外は一度も一緒にいたことはない。

 二人で出かけていることが見つければ、同居だけではなく、今後一切会わせないと言われた。

 そんなのは耐えられない。

 だから、二人で決めたのだ。

 揺るがないためのルールを。

「2年後が楽しみだね」

「うん、頑張ろう」

 そして、二人は今日も笑顔で過ごすのだ。

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君と僕の2つのルール 甘川 十 @liebezucker5

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