別所高木

第1話 ルール

「誰ー!?フェンス開けっ放しにしたの!フェンスを締めるのは絶対のルールでしょ。」

けたたましく怒る声がする。

僕は藍ねーちゃんの怒る声が苦手だ。


僕はキング

ミニチュアシュナウザーの男の子だ!

相川家に住まわせてもらっている。


住まわせて貰って、可愛がって貰っていて、多少の自由の制限はあるが、とっても感謝している。


その代表がフェンスから自由に外に出ることの制限だ。

僕は生まれてから一度も一人で、フェンスの外に出たことがない。

出るときはいつもリードロープを付けて藍ねーちゃんと一緒だ。


一緒に散歩するのと楽しい気持ちになって好きなんだけど、たまには自由気ままな散歩がしたい時もある。

でも、藍ねーちゃんは、絶対一人でフェンスから外にでるなと言う。

それが相川家のる絶対的ルールで掟だと言う。


あーあ、何が掟だよ〜フェンス邪魔〜


そう思いながら過ごしていたら、ある風の強い日、僕がお庭で遊んでるところに、藍ねーちゃんが帰ってきたんだ。

藍ねーちゃんが帰ってきたから僕は嬉しくてフェンスが開くのを待ち構えて、飛びついたんだ。

すると、藍ねーちゃんの腕に僕の歯がぶつかってしまったんだ。

すると、そこから血が流れ始めたんだ。

藍ねーちゃんは怖い顔をして、僕を怒鳴りつけた。

「キング!痛いじゃない!なんでこんなことするの!?キングなんか大嫌い!」

いきなりおっきな声で怒鳴って家の中に入って行った。

僕はびっくりした。

一緒に遊ぼうと思って飛びついただけなのに、そんなに大きな声で怒るなんて、、、、、

僕も藍ねーちゃんなんか大嫌いだ!


なんか、とっても悲しい気持ちになって、振り向くと。。。。


フェンスが開いてたんだ!


僕は見渡した。

周りに藍ねーちゃんも家族も誰もいない。


今だ!

僕は一気に駆け出した。


フェンスを抜けたら、大通りにつながるジグザグのシケインになった通路だ。

僕は巧みなフットワークでシケインをクリアして、大通りに飛び出した。

大通りは歩道があって、歩道と車道の境目に飛び出し禁止の大きな看板がある。

おっと、ぶつかる!

僕は急減速して、左に舵を切った。


大通りは車がたくさん走ってるけど、歩道は大丈夫!

いつも散歩に連れて行ってもらう公園に、今日は一人でお散歩だ♪


いつも僕に吠えたてる隣の大きなブルドックが、今日も猛烈に吠えている。

いつもなら藍ねーちゃんが盾になってくれて、僕は隠れてソロソロ通過するけど、今日は、僕一人だ。

負けるわけにはいかない。

ブルドックから見えるところで、しっかりマーキングをしてやった。


ブルドックは猛烈に怒っているけど、僕は無視して歩き去った。


やがて公園に到着した。

いつも、藍ねーちゃんとやってる遊びを一通りやって、砂場でゴロゴロしていると、

突然、雷が鳴りだした。


ピカっ!ドドーーーん・・・・


ひゃっ!

僕は雷が怖い!大嫌いだ!!!


耐えられない恐怖に僕は駆け出した。

公園を抜け出すために一直線に走った。


キキーーーーーー!

大きなタイヤのスリップ音と共に大きなトラックが突っ込んできた。


僕は公園を飛び出し、大通りに入り込んでいた。


迫り来るトラック、僕は恐怖で目を閉じてしゃがみこんでしまった。

もうだめだ!


ブシュー!

トラックは大きな排気ブレーキの音とともに止まった。


助かった。


僕は混乱してウロウロしていると、猛烈なクラクションを鳴らして近づいてくる乗用車もいた。

僕はウロウロするしかできなかった。


ピカッ!どどーん


また

大きな雷だ。

その途端大雨が降り始めた。


ザーーーーーー

猛烈な雨が叩きつける。

雷は鳴る。

自動車に追い立てられる。


もうだめだ。。。。


。。。。

。。。。

。。。。

「キングー!」

聞き覚えのある声が聞こえた。


土砂降りの中を凄い勢いで走ってくる女がいる。


藍ねーちゃん!!!!


「キングー!」

藍ねーちゃん!!


藍はキングをヒシっと抱き上げた。

「よかった!無事でよかった!」

藍はずぶぬれになりながらキングを抱き上げて歩道に戻った。


「ごめんね。ごめんね。キング。みんなでフェンス閉めるってルールにしてたのに・・・私が閉め忘れたばっかりに。。。大嫌いなんて言ってごめんね、ほんとごめんね。。。」


僕も大嫌いって言ってごめんなさい!

藍ねーちゃん大好き!

助けに来てくれてよかった。ありがと。


キングは全力で藍の鼻をなめた。


「帰ろうか。。。」


藍ねーちゃんにだっこされて僕は家に向かった。

隣のブルドックが猛烈に吠えるが、へっちゃらだ!


家の前についた。

車道と歩道の間に立ててある、飛び出し禁止の看板。

これがあったから、家から飛び出しても僕は車道に飛び出すことがなかったんだ。

僕はやっとこの看板の意味がわかった。


家に向かう通路のシケイン。

これで、走るスピードを落としてくれてるんだ。

シケインにも僕の安全を考えてくれてたのか。


そして、シケインを抜けたとき

バチン!

チェーンの切れる音がした。


わんわんわんわん!

隣のブルドックが走ってくる。

今日のマーキングで相当怒っているようだ。


藍は雰囲気を察して、ダッシュした。

ワンワンワンワン!

ブルドックがシケインを抜けてきた。

藍は、さっとフェンスに入ってフェンスを閉めた。


フェンスの前でブルドックがうろうろしている。

このフェンスは、僕が飛び出さないためだけじゃなく、外からの敵も防いでくれている。


みんな僕を守るだめのルールだったんだ。。。。


藍ねーちゃん、嫌いって言ってゴメンね。


・・・・・・


家に入って、いつもは苦手だけど、今日のシャワーは、身体が温まって心地よかった。

そして、お待ちかねのご飯タイムだ!


藍ねーちゃんは僕の目を見つめて「待て!」と言う。



もしかして、これも僕を護るためのルールですか?????????



おしまい









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