第60話 夢 VS 悪夢
「よく来た。救世主様。だが、ここから先には行かせないぞ。」
「そうらしいな。なら、おまえを倒して先に進むまでだ。」
救世主様と悪夢の剣騎士クロムの戦いが始まる。
「くらえ! ドリーム・ソード・スラッシュ!」
「救世主様の必殺技など、私の悪夢で呑み込んでくれるわ! バッド・ドリーム・スワロウ!」
「なに!? 俺の必殺技が!?」
救世主様の必殺の剣の一撃は、クロムの作り出す悪夢に呑み込まれてしまう。
「バカな!? この剣物語の世界では、剣が最強のはず!? それなのに俺の必殺技は、クロムの剣技に負けたというのか!?」
「悪いが私も邪悪なるお方にお仕えする邪悪剣騎士。一度見た救世主様の必殺技など、もう見切った。私には救世主様の剣は効きません。」
「なんだと!?」
悪夢の剣騎士クロムは、以前の戦いで、救世主様の必殺技を見ているので、そこから救世主様との戦い方を研究していたのだった。
「私は以前の救世主様との戦いから、より悪い夢を見れるように、ボロボロの枕、穴の開いたマットレスなど、より悪い夢が見れるように修行したのだ。私は強くなった。あの時とは比べ物にはならないぐらいにな。」
「なんて恐ろしい男なんだ!? 悪夢の剣騎士クロム!?」
「今度は、こちらからいくぞ! この世界から消えて無くなれ! 救世主様! バッド・ドリーム・オブ・ザ・リミット!」
「うわあああー!?」
救世主様は、クロムの必殺技によって、自分の一番嫌な悪夢を見せられることになってしまった。
「ここはどこだ? ここは・・・俺の部屋だ!? どうして俺は自分の部屋にいるんだ!? 確かにイビル・キャッスルでクロムと戦っていたはず!? どういうことだ!? 俺は途中で目が覚めたのか!?」
救世主様は、悪夢の世界で目を覚ました。救世主様の一番嫌な悪い夢は、日常生活を送る家族と暮らす環境であった。
「叶さん! 早く起きなさい! 休みの日だからといって、寝坊することは許しませんよ!」
「うわあああー!? お母様!?」
部屋に救世主様の口うるさい母親が怒鳴りながら入って来た。そう、救世主様の一番苦手な相手が、歯向かうこともできない相手の母親であった。
「なにが、うわあああー!? お母様ですか!? 寝てる暇があったら、勉強しなさい! 少しは心さんを見習いなさい! 妹の月にまでバカにされて悔しくないんですか!」
「すいません。すいません。ごめんなさい。すいません。」
こうして学校に出る前に、無神経な母親に叩きつけられ精神的に追い込まれた救世主様は、学校で集団生活を送る頃には委縮してしまい、ガーガー他人を攻撃してくるいじめっ子に抵抗できない、いじめられっ子が完成しているのだった。
「救世主様は、いったい、どんな怖い夢を見ているんだ!?」
「うわあああー!? 嫌だ!? 助けて!? 死んでしまいたい!? そうだ! 自殺しよう! こんなに苦しいなら死んだ方がマシだ! 俺には天国が待っている!」
悪夢の剣騎士クロムですら、苦しんでいる救世主様が、家庭内いじめに苦しめられているとは想像もつかなかった。
つづく。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。