第38話 海竜

「ここは? 水の中? そうだ! 私はサキエルに水球に閉じ込められたのか!?」

 目を覚ましたウスイは水球の中にいた。

「違う! 違う! あなたは間違っている!」

 水球の中に水の妖精がいた。

「おまえは?」

「私は水の妖精ウンディーネ。サリエル様は、あなたを悪魔から守ってくれたのよ!」

「なんだって!?」

 ウスイは水球の外の世界を見渡す。

「マーメイド師匠!? 天使様!?」

 海辺の砂浜に死であるマーメイドや水を司る天使サキエル、海の天使クリオネが意識なく倒れていた。

「あれが悪魔か!? あいつがやったのか!?」

 ウスイは、浜辺に立つ悪魔の剣騎士の鎧を着た男を見つける。

「違う! 違う! あいつは半魚人の悪魔の剣騎士ダゴンよ! あんな奴は、マーメイドと同じくらいの実力しかないわよ!」

「じゃあ、いったい師匠たちは何と戦ったんだ!?」

「リヴァイアサンよ!」

「師匠たちは海竜と戦ったというのか!?」

 水の精霊ウンディーネは、マーメイドたちは海竜リヴァイアサンと戦って敗れたという。


「若い戦士の命だけは守るぞ。」

「おまえも人がいいな。」

「これでも天使だからな。世界の平和を頼んだぞ。水の剣騎士よ。」

 水を司る天使サキエルは、水球の中で気を失っているウスイを見つめ、世界の平和を願う。

「何かが海から上がってきます!? あれは!? 半魚人!?」

「人魚のおまえも半魚人だろうが? ケッケッケ。」

「失礼ね! 人魚と半魚人では、美しさが違うのよ!」

「何者だ!? おまえは?」

「俺は、半魚人の悪魔の剣騎士ダゴン様だ。おお!? 天使が二人もいるな。俺は何てラッキーなんだ。おまえたちを皆殺しにしてやる! ケッケッケ。」

 半魚人の悪魔剣騎士ダゴンが現れた。

「何を笑っている?」

「あん?」

「おまえごとき半魚人にやられるほど、私たちは軟ではない。」

「それはどうかな! くらえ! ハーフ・フィッシュ・ソード・スラッシュ!」

 人食い魚混じりの水が天使サリエルを襲う。

「なんだと!?」

 悪魔の澱んだ水が純粋なきれいな飲み水に変わっていく。獰猛な魚たちも、まるで清流で過ごしているような穏やかな魚になっていく。

「悪魔の攻撃など、天使には効かない。」

「そうだ。半魚人、ここがおまえの墓場だ。」

「それはどうかな?」

 その時、海面の波が引いていく。

「な、波が!?」

「なんて大きな津波なんだ!? うわあああー!」

 そして、次の瞬間、大きな波が海岸に打ち寄せ、天使たちに襲い掛かかり、津波の中に呑み込んだ。大波は海岸だけでなく、陸地まで覆いつくす程の大きな波であった。

「俺はおとりだよ。レヴィアタン様が大津波を起こすまでの時間稼ぎさ。ケッケッケ。」

 こうして海竜の悪魔レヴィアタンの大津波を食らった人魚のマーメイドや天使のサキエルとクリオネは砂浜に打ち上げられたのだった。

 つづく。

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