第14話 友情

「ミキ姫様。ようこそ。悪夢の世界へ。」

悪夢の剣騎士ナイトメアのコクムは、姫に悪夢を見せ続けて操っている。

「さあ、姫、今宵は私と楽しいことをして、朝まで遊びましょう。飽きたらあのお方に花嫁として献上いたします。」

 しかし、操られているはずの姫はコクムの誘惑に防いで動かない。

「悪夢に操られているのに、私の言うことを拒むとは!? まあ、いいでしょう。もうすぐ、あなたの頼りにしている救世主様の死体を、炎の剣騎士が持ってくることでしょう。その時は、もっと深い悪夢にご招待いたしましょう。」

「救世主様・・・。」

 姫は必死に悪夢に抵抗するのでした。姫は剣騎士ではない。しかし姫は、姫だけのプリンスの剣を持って戦っているのかもしれない。


「くらえ! フレイム・ソード・スラッシュ!」

「おまえの炎がどれほど熱くても、俺の夢を燃やすことはできない! 俺は夢を絶対に叶えるんだ! ドリーム・ソード・スラッシュ!」

 お互いに炎と夢の剣の必殺技を繰り出す。

「なに!? 私の灼熱の炎が、救世主様の夢を叶えたいという思いに、斬られたというのか!?」

 叶の必殺技が、カエンの炎を真っ二つに切り裂いた。

「うわあ!?」

 そして叶の必殺の一撃が、カエンを吹き飛ばす。

「見たか! これが俺が夢を叶えたいという気持ちの強さだ!」

「ま、負けた。私の負けだ。さあ、殺すがいい。」

 カエンは潔く自分の負けを認める。

「やめとくよ。おまえは俺の友達に似ているから。」

 叶には、現実世界の鈴木の顔が浮かんだ。もしカエンにとどめを刺して、現実世界で友達の鈴木が死んでしまったら、何とも言えないからだ。

「さすが救世主様だ。なんという心の広いお方なんだ。」

 カエンは心から叶に感服した。


「その代わりと言ってはなんだが、聞きたいことがあるんだ。」

「なんだ?」

「カエン、おまえも剣騎士なら姫に会ったことがあるだろう? なんだか最近、姫の様子が何か変わったとか思うことは無いか?」

「姫? そういえば最近ミキ姫は変わられてしまった。あの優しかった姫から笑顔が消え、冷たい表情をすることが増えた。今回の救世主様の追跡でも、捕えろなら分かるが、殺せと命令されるとは思わなかった。まるで姫は人が変わったのか、誰かに操られているんじゃないか、と思ったほどだ。」

「誰かに操られる・・・そうか! 悪夢だ! ナイトメアの仕業だ!」

「ナイトメア?」

 ナイトメアとは、悪夢を象徴する黒い馬のことを指す。夢を見てうなされることを悪夢という。

「悪夢の剣騎士に姫は操られているんだ! きっと、そうに違いない!」

「そういえば最近、クロムという剣騎士が姫の側近になったような。」

「クロム!? そいつだ! そいつが悪夢の剣騎士だ!」

「なんだって!?」

「クロムが姫に悪い夢を見せているんだ!」

「信じられん!? もし姫に危害を加えているというのなら、悪夢の剣騎士を許す訳にはいかない!」

「カエン、俺に協力してくれ。俺は姫を助けたい。」

「分かった。真実を確かめよう。」

 現実世界の友達は、夢の世界でも友達になれた。

 つづく。

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