夏祭りの夜あなたと

虫の音に笛の音が応え

かえるの声と張り合う和太鼓の響き

魔法の浴衣を身にまとって

わたしはいつもの二割増し


屋台をはしごして綿菓子でしめ

ラムネを飲み干して手持ちぶさた

仕方がない振りで差し出した手を

壊れ物のように取ってくれたあなた


闇夜に灯る光の花は

一瞬で散ってしまって

あんな風だったらいいのになんて

女の子らしくないって思われたかな


人波を泳ぎながらあなたに手を取られ

わたしの胸はいっぱいだった

あなたに手を引いてもらえる自分であることが

わたしには何よりも誇らしかった


この今がわたしの中に永遠にあるよって

そんなことわざわざ言いたくなかった

言葉にしなければいけないものなんて

わたしたちの間にはいらなかったから

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