第37話 第一回 きゃあ!? ポロリもあるかもしれない『水上運動会』

 翌日。


 待ちに待った『プール授業』での出来事。


 屋内プール。


 おしゃれな内装で、見るからに豪華絢爛。 


 プールサイドで準備体操を終えた姫川理沙は、スタート位置につく。


 全部で八レーンあり、コースの長さは25メートル。


 第4レーンの飛び込み台からの完璧なスタート。


 キレイな水しぶきを上げ、水中での加速が凄まじく。


 人魚姫と見間違えるほど可憐で、白魚みたいな細く長い腕が水中から跳ね上がり、筋肉質でスラリとした長い脚が水を蹴る。


 女らしい丸みを持ちながら引き締まったお尻、くびれたウエスト。


 贅肉のない滑らかな背中を水が流れ、理沙のカラダはしなやかに前進する。


 呼吸する時すら変顔にならない。


 クロールで泳ぐ彼女の姿は美しく、優雅ですらあった。


 人魚のように見事なフォームで、プールの端にタッチして、理沙が水中から上がる。


 その麗しいカラダを水滴が流れ落ちてゆく様は、艶めかしくすらあり、きゃあと女子生徒から黄色い声援が上がり。


 もちろん、男子もメロメロになっていた。


 誰にも気づかれないように、そっと両手をお尻に回し。


 チラリと辺り回してから、こっそり指先を水着とお尻の隙間に入れ、食い込みを直す瞬間も、この目でしっかり目撃した。


 しっかりとした肉付きながらも垂れておらず、ぐいっと全体に持ち上がっている完璧なお尻を……。


「お疲れ様です」


 女子Aが理沙にタオルを渡す。


「ありがとうねぇ」


 タオルで髪を拭く姿も絵になるな。




++++++++++++++++++++++++



 

 自由時間。


「冷たくてキモチいいわぁ。やっぱり夏はプールよね」


 プールの方から茶髪ギャルの話し声が聞こえてきた。


「教室で授業を受けているだけでも、汗だくになっちゃうほど、暑いものねぇ」


 それに答える炎のようにきとおった紅い髪の幼児体型少女。


「ホントホント!? 暑い日が続いているもんね。プールの授業最高だわあ」


 二人の会話に相槌を打つ緑髪のスポーティな少女。 


「ウチのクラスの女子って、レベル高いよな」


「スタイルのいい子多いもんな」


 女子をイヤらしい目で見るアキバ系男子たち。


「もう毎日プール授業でもいいくらいだわ。ただ男子のイヤらしい視線さえなければね」


 茶髪ギャルが愚痴をこぼす。


 肌はどこかのサロンで焼いているのか、黒く。


 身につけるものも派手な、俗に言う『Kawaii』系のアクセサリーを好んで、いろいろと付けているな。


 そして俺はセパレードタイプのスクール水着を纏った、可憐な少女たちをプールサイドから眺めていた。


 みんな可愛らしいおヘソしているな。

 

 スクール水着にしては、可愛らしいデザインだよな。


 白とピンクのツートンカラーでさ。


 野暮ったい感じがまるでしないもんな。


 でも『泳ぐ』に適したデザインかと言われれば、首を横に振るかもしれないな。


 正直言って、遊ぶための水着だな。


「そんなに見られるのが嫌なら、水着の上にTシャツでも着ればいいだろう」


「男子ってほんとうにデリカシーがないわよね」


 女性の甲高い声がプールサイドに響き渡り。


「うっせぇ。男心もわかんねえくせに、偉そうなこと言ってんじゃねえよ」


「きゃあっ!? 暴力反対」


「お願いだからケンカしないでよ。仲良くしてぇ」


 あの仲裁に入った女の子。


 腰回りもキュっと引き締まってエロいな。 


 わずか数センチ先で、ぽよんぽよんと弾んで揺れる、豊かな膨らみの動きに合わせて、黒目が左右に踊ってしまう。


 やっぱり水泳の授業は最高だな。


 ほんとうにこの学校に入学できて良かった、と思える瞬間だった。


 眼福、眼福……。


 「龍一のエッチ、スケベ、変態!? こんなカワイイ彼女がいるだから、私だけを見てよぉ♥」 


 と頬を真っ赤にしながら尋ねてくる、彼女の姿をつい目で追ってしまう。


 胸の谷間や腰を飾るヒラヒラした可愛らしい水着は、理沙にとても似合っていたし。


 乳房のなめらかな丸い曲線が、そのまま直に浮き出ていて、まるで目いっぱい膨らませた風船みたいなオッパイ。

 

 水着に包まれているにも関わらず、理沙が歩くたびにタプンたぷんと、弾むように大きく揺れる胸を、至近距離から眺める。


 理沙のお胸は、とにかくすさまじいボリューム感だった。


 とは言え、理沙の魅力はおっぱいだけじゃない。


 やや幼さの残る顔立ち。


 すっきりとした首筋からなよやかな肩。


 柔らかくそうな二の腕。


 贅肉を感じさせない脇腹の引き絞られたラインから、お尻に向かってのボリューム感。


 水着が食い込んだセクシーなヒップ。 


 そしてほっそりとした手足は、驚くほど白く伸びやかで、バランスよく鍛えたカラダには、一切のゆるみがなく。


 しなやかな筋肉を秘めた体幹も女性らしくて。


 緊張感のあるシェイプを形作り、まさに『アスリート』のカラダだ。


 官能的というよりは、蠱惑的な魅了といういうべきか?

 

 水泳選手の持つどこか? 妖精のような美しさを醸し出していた。


 理沙は、幼女のような無邪気な笑みを浮かべて


「じゃあないと龍一を殺しちゃうかもしれないよ。キャハっ☆」


 恐ろしいことを言ってきた。


「だって理沙。大勢の男子に囲まれてたてじゃないか?」


 彼女は頬を赤く染め上目遣いで


「だからこそ、龍一に守って欲しかったのに……バカっ!?」


 腕に抱きついてきた。


 メロンのように膨らんで、マシュマロのように白いオッパイを押し付けてきた。


「無茶、言うなよ」


 甘い香りが鼻をくすぐり。


 全身にこそばゆいもが走り、叫びを上げてしまう。


「なら龍一以外の男子を、皆殺しにするしかないわね。うふふ♪」 


「理沙がヤンデレ化した」


「ヤンデレ言うなっ」


 キレキレの拳がみぞおちに炸裂した。


「ぐはっ……はぁ……相変わらずいい拳だぜ。

 だが甘い」


「きゃん……」


 足払いが決まり。


 プールサイドに尻餅をつく理沙。


「龍一も腕を上げたみたいね」


「彼氏としてやっぱり、彼女よりも弱いのは、恥ずかしいからな。秘密裏にカラダを鍛えていたんだよ」


「龍一のクセに生意気だわ」


 顔を真っ赤に染め、激しく地団駄を踏み。


「ああ、そうだ。

 私の泳ぎ? どうだった。

 龍一の感想が欲しいな。

 まだ聞いてなかったわよねぇ」


「うん。とっても綺麗なクーロルだったよ。

 足の動かし方とか、手の運びとか。

 ちゃんと基礎ができていて、とにかくフォームが綺麗だったよ」


「ありがとう。でもちゃんと決着をつけたいわね」


「なら発泡スチロールの上を渡るという競技で、決着をつけるか」


「やらないわよ。龍一の魂胆なってお見通しなんだから」


「でもこれは男の夢なんだよ。おねがい」


 両手を合わせて頼み込む。


「わかったわよ。付き合ってあげるわ。ただし一回だけだからね」


「ありがとう、理沙」




++++++++++++++++++++++++




「第一回 きゃあ!? ポロリもあるかもしれない。水上運動会の開始です」


 司会者の声とほぼ同時に、俺は発泡スチロールの上を走る。


 バランス感覚には、自信があるんだ。


 この勝負……本気で勝ちにいくぜ


「おお!? 姫川選手!? 速い!? 速すぎる!? まるで仙女のような速さだ」 

 

 えっ、うそ……。ちょっと待って。


 何それ!? 聞いてないだけど。


 おい、マジかよ。


 どこまで完璧ななんだよ……俺の彼女は……クソ!?


「頑張ってください、お姉様。そんな男に負けないでください」


「彼女の言う通りよ。

 今は『女の時代』なんだから、そんな冴えない男なんかに負けたら絶対の許さないわよ」


「女の強さをバカな男どもに見せてあげなさい」


「おい、神村!? あんなこと言われて悔しくないのか? オレは悔しいぜ」


「そうだ、そうだ!? 男をあまりバカにするな」


 もちろん、俺だって。


 このまま指を咥えて、負けるつもりなんて。


 サラサラないぜ。 

 

 奥の手を使うしか? ないみたいだな。


 水着のポケットから『水風船』を取り出し。


 理沙に向かって、投げつける。   


「きゃあ!? 水着が溶けていくわ。イヤァアア!? こっちを見ないでぇ」


 知人の木村が、この日ために開発した『水着を溶かすくん』だ。


 肌を一切傷つけることなく、水着だけを溶かすという優れものだ。


 できれば使いたくなかったが。


 この勝負は、絶対に負けるわけにはいかないんだ。


 悪く思うなよ。


「まったく甘いねえ、龍一わ。

 この程度の小細工で、私に勝ったつもり」


 なんと!? 理沙は水着の下に『絆創膏』を貼っていたのだ。


 俺の作戦を読んでいたとでも言うのか? 


 どこまでも完璧で、隙のない女なんだ。


 クソ!? ここまでやっても勝てないのか? 


 この女は『化け物』なのか?


「これに懲りたら、もう姑息なマネはやめることね」


「理沙こそ、俺のことを見くびり過ぎだ」


「奥の手が一つとは限らないだろう」


「ま、まさか」


「そのまさかだ!? 見よ、俺の飛翔力を『ハイジャンプ』」


 ドン!? 天井に頭を強くぶつけた!?


 ここは屋内だったことをうっかりと忘れていたぜ。


 ブクブク……。


「やっぱりただのバカね。

 正々堂々と勝負していたら、結果はわからなかったに」


 結局のところ俺は……ただの噛ませ犬で、終わってしまった。


 ああ……ヤバイ!?


 目の前に光の粒子が乱舞し、意識がキモチよく遠のき始める。


 紛れもなく、酸欠の初期症状だ……コレ……。


 そして……視界がブラックアウトした。


 

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