異世界の叔父のところに就職します
まはぷる
プロローグ
来訪者?
「おい、そこの小僧。誰? おまえ?」
ぶっきらぼうな声と共に眼前に突き付けられたのは、無機質な金属の塊だった。はっきり言えば、やたらと物騒な刃物だった。
ナイフや包丁などという生易しい物ではなく、鉈や刀剣やらと思しき振り幅1メートルはあろうかという、まさに凶器。
日本刀のような装飾美の欠片もない、実戦用さながらの生々しい傷が散りばめられた刀身の切っ先が、腰を抜けしてへたり込む、こちらの鼻先数センチのところに迫っていた。
尻の下は、埃っぽい畳敷き。
開け放たれた障子の向こう、縁側のガラス戸からは、初夏らしい眩しい日差しが照り込んでいる。
換気のために網戸にしておいた居間から抜ける風が、涼しく耳元を通り抜けていく。
ちょっとした庭先と、そこに生い茂った木々。オーソドックスな古びた日本家屋、そして田舎ならではの蝉の合唱が、ああこれぞ日本の夏!と言わんばかりの風情を醸し出している。
なのに。
意識を戻すと、室内で襖の前に陣取るのは、中世かファンタジーか、と突っ込みどころ満載の全身金属鎧姿の偉丈夫。
浅黒い肌、顔つきは精悍にして凶暴、野獣のような双眸が、この違和感しかない現状で、ツッコミを許される状況でないことを物語っていた。
(強盗!? テロ!?)
でもこんな場所で!?
それが、夏休暇を利用して、田舎の親戚宅を訪問した初日の出来事だった。
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